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会社はどうすれば倒産するのか?~ある経営者の決断から考えたこと~

こんにちは、お金が入るでかねいりです。

今日は、ある経営者のお話から、経営における現金の重要性について考えたことをお伝えします。


■ある経営者(A社)のお話

A社の経営者と打ち合わせをしていた際、次のような話がありました。

A社の協力関係にある会社(Z社)が今、倒産の危機に扮していて、その会社が倒産すると、A社の売上の1~2割がなくなってしまうということでした。

A社にとっては、かなりピンチの状態です。

そんな難しい状況の中、A社の経営者は、その協力会社を買収して、自身が社長になり立て直すという決断をしました。

「なぜ、決断ができたか?」ということを聞いたところ、

「立て直すための勝算があった」ことと「自社の財務状態が万全だった」からということでした。

後者について、今の経営者に代わってから、会社の安全性を高めるために、利益を純資産に積み上げ続ける施策を打っていました。その結果、会社に十分な現金(資金)が積みあがっていました。

A社の経営者が付け加えて話してくれたことがとても印象に残っています。それは、協力会社Z社の経営者は、風邪や病気などに一切かからなかったほどとても体の丈夫な方でしたが、経営危機になり資金繰りに奮闘せざるを得なくなり、その結果、身体を壊し、寝込んでしまうほどになったと。

資金繰りがどれだけ苦しいものなのかを実感しました。

■会社はどうなれば倒産するのか?

資金が足りなくなり倒産危機となったZ社。
資金が積み上がり、買収という新たな一手を打つ決断ができたA社。
この2社を分けたのは、資金=現金(キャッシュ)でした。

会社は、赤字になっても倒産することはありません。会社は、借りたお金を返せないとき、もしくは、買った代金を支払うことができなかったときに倒産します。そう、現金がなくなったときに倒産します。いくら利益が出ていてもです。

私は、経営コンサルタントとして、お付き合いする企業へ「手元流動性」という指標を大事にするように伝えています。手元流動性というのは、月商(売上÷12カ月)の何か月分の現金を持っているかという指標になります。目安は2カ月以上。言い換えると、売上が2カ月上がらなくても、その間は存続できるということです。手元流動性が2カ月より低い会社は、短期的な倒産リスクが高いと言えます。

■財務規律を決めているか?

そして、私はもうひとつ取引先企業にお話することがあります。
それは「財務規律」というお話です。

例えば、先ほどの手元流動性。目安は2カ月なのですが、コロナなどの危機が起こった際は、2カ月でも不安はあります。目安はあくまで目安で、自社として何か月分の手元流動性を確保していくかを決めておくこと。そして、決めた手元流動性を下回るようなことがあるのであれば、経営会議を開き、そこでの合意がない限り、資金を出さないと決めるのです。

これを財務規律と呼んでいます。

なぜこのようなことをしておく必要があるか?

こんな会社(Q社)がありました。
会社の安全性の指標の1つとして自己資本比率というものがあります。これは、総資産のうち、どれだけ自己資金でまかなっているかを表す指標になります。当然ながら、自己資本の割合が多ければ多いほど、安全性が高いと判断されます。※以下の図を参照

また、この自己資本比率は、経営者の中では『自己資本比率が高い会社は良い会社』というステータス的な意味合いもあり、重視している経営者も多くいます。

そうした中、Q社は自己資本比率を高めるために、銀行からの借入の返済を行いました。返済をすると総資産の中の負債(他人資本)が減ることで、自己資本比率が高まります。一方で返済をするので現金は減ります

しかし、その直後にリーマンショックが起こり、手元の現金が足りなくなり、Q社は倒産してしまいました。

この会社には手元流動性の財務規律がなかったため、自己資本比率を高めるために、手元資金を減らし、手元流動性が1カ月以下にしてしまったのです。もし、この会社に仮に財務規律を手元流動性3か月と決めていたならば、銀行にお金を返すという判断にはならなかったはずです。

経営は、経営者の考え方が本当によく表れます
絶対に会社をつぶしたくない、そう考えるのであれば、この財務規律という考え方を持つことをお勧めします。

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