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短歌

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#春

短歌 #29 春告鳥

短歌 #29 春告鳥

さよならを言わずにさよならするのはどうかと思う…ってどうかしていた

誰も聞いてないからこそ話したい独り言ってこうして漏れる

雪が降って川になって君の中を通り過ぎていきますよ今

霞む山春告鳥がやわらかく別れを言いに来てくれたよう

頬撫でる冷たくはない桃色の風の匂いに漏れ出づる春
#短歌 #春 #春告鳥

短歌 #11 春の匂い

短歌 #11 春の匂い

ひっそりと白木蓮の散りぬるを母の帚(ははき)の掃き捨てにけり(*1993年初出時のもの)

騒音の中にてわざとぼそぼそとキミガスキダと言ってみる僕

ひとしきりあなたの胸に顔をつけ泣き続けたら春の匂いす

母親の前で初めて言ってみる僕ではなくて俺でもなくて

雨上がり浅い緑の萌ゆる香が立ちのぼりくる晩春の朝