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【読書感想】 冬のスフィンクス


冬のスフィンクス 飛鳥部勝則



私、この作品が飛鳥部作品の中で1番好きだ( °-° )💕

『夢』か現実か、探偵は絵画の中で彷徨い続ける…。

楯経介(たてけいすけ)には不思議な能力があった。眠りに就く前に絵を見ると、夢でその世界に入り込めるのだ。
彫刻家、洲ノ木正吾(すのきしょうご)の作品世界に彷徨(さまよ)いこんだ楯を待っていたのは、奇怪な連続殺人事件だった!
 猟銃で頭を撃たれた高名な画家、「開かずの間」に転がる首無し死体……。
すべては夢なのか、それとも夢のような現実?
 読者を迷宮世界に誘(いざな)う幻想ミステリーの傑作!

Amazon 内容紹介より



飛鳥部勝則さんの作品を読むのは、11作目です。

その中で【冬のスフィンクス】が、1番私好みの作品となりました(*´˘`*)💕

もちろん他の作品も素晴らしいのですが。


『夢』を題材にしたミステリーで、夢の中で殺人事件が起きます。

主人公の楯経介たてけいすけは、絵画の中に入り込む夢を見る事ができる。

彫刻家の洲ノ木正吾すのきしょうごの作品『冬のスフィンクス』というタイトルのコラージュがある。

描かれていたのは、彫刻家の一族が住む洋館。

楯はコラージュの中に入ろうと想い描き、眠りにつく。

すると夢の中で、その洋館の主である団城謙三だんじょうけんぞうが密室の中で死んでいた——。


飛鳥部さんの作品のすごい所は、幾重にも仕掛けられた罠。

冒頭の絵画の写真しかり、美術・建築の歴史や解説しかり、ギリシャ神話の引用しかり、人間消失・密室・トリック等、切り取らず一纏めで襲いかかってくる。

よくこんなにたくさんの引き出しがあるなぁとうっとりしてしまう。

描写に躊躇ないのも大きな魅力で、エロ・グロ・禁忌も独特の描写でさらっと描かれる。

しつこくなく、さも当たり前の様に。

「肉欲的なものを主題とする作家ほど禁欲的です。純粋、純潔を守っているんですな。守るために欲望を抑える。封じ込めたものが、制作の中で爆発するんですな。」(中略)
「現実世界の禁欲が夢の中で爆発する。それが作品です。」

本文より


…分かるような気はします。笑


他作にも登場した亜久直人あくなおとも、最初から名前が出てくる。

主人公の友人である彼は、変わり者で有名。

多作でも同じような性格が設定されています。
(黒と愛、堕天使拷問刑等)


夢と現実の境界が分からなくなり混乱していく様子が描かれるのはあるあるですが、この作品は読者を陥れようと誤魔化し描いている感じがしない。

きちんと「これは夢」と説明されながら話が進むので、どこでハマってしまったのかが分からない。

そんな事はどうでもよくなる程の圧巻の蘊蓄劇に取り込まれてしまう。

だが、そこは軽く読み過ごせず、後に重要な意味が隠されている事が多い。

おもしろいので読み飛ばす事はないのだが。


芸術に特化したミステリーはものすごく好みで、おもしろい。


【砂漠の薔薇】と、ある意味一対の作品とのことなので、続けて読みたいと思う。

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