いしだ@漢方薬剤師

静岡県掛川の漢方専門薬局くら石|2020年伝統漢方研究会において代表学術発表に選ばれま…

いしだ@漢方薬剤師

静岡県掛川の漢方専門薬局くら石|2020年伝統漢方研究会において代表学術発表に選ばれました!|薬剤師・国際中医専門員|漢方薬ってどんなもの?薬膳ってどんな?薬局でお客様にお伝えしていることをここでお話しします。

最近の記事

結局、内面が滲み出る

蔵象学説は黄帝内経で扱われている漢方で核となる大切な理論です。 蔵象とは体の中にある臓腑がどんな状態であるかを表面に現れている症状から捉える、ということです。 例えば咳が出ていることから肺気の乱れを知る、食欲がないことから脾気の弱まりを知るなどです。この内蔵の状態を映すなんらかの症状を象といいます。この象は顔色や脈、検査値などの客観的なものから「イライラする、ズキズキする」などの主観的なものも含みます。 内臓の状態とは内臓に影響を与える季節などの環境的な影響、さらに心理

    • 自分の内の波と寄り添う。生理周期の話

      生理の不調といえば生理痛。最近では副作用も少なく、効果の高い痛み止めが出回るようになりました。 ただ、残念ながら月経の根本的な苦痛が減ったかというとそんなに単純ではなさそうです。日常的なストレスや、冷たい飲食物、運動不足や低栄養など、様々な原因で女性の体調不良は一昔前より回復が悪いケースが多く、また痛みだけではなく病態も複雑化しているのだとか。 月経は子供を授かるための体の準備です。命をつなぐ妊娠出産はまさに母体の命を削る作業。命のゆとりのなさは月経の不調という形で現れま

      • 漢方の世界における生と死

        言うまでもなく人は生まれて死にます。そのプロセスについて漢方ではどのうように考えているでしょうか。 人は生まれて、そして死んでいきます。まず小さな弱々しい命として産まれた私達は徐々に命のみなぎり、成長を経てピークに達し、その後徐々に衰えていきます。 漢方の世界で考える”腎”は先祖代々受け継いだ生命力を格納しています。 腎精は全ての生命力の根本です。全ての陰と陽の根源が濃縮されています。腎精は全ての生命活動の上源です。 この腎精は2つの要素から出来ています。まず1つ目は

        • おいしいことが一番・五味調和?

          五行学説は中医学の基本です。五行学説とは木火土金水という5つの要素に当てはめ、それぞれが協調し合い、場合によっては牽制し合って自然の仕組みが成り立っていると捉える考え方です。 そして中医学ではこの五行学説を人の体にも当てはめ、5つの要素、木火土金水を肝心脾肺腎と捉えて同様にそれぞれが影響しあいながら成り立つとして様々な病気の治療を展開します。 中医学では味も同様に5つに分類し、それぞれの味が肝心脾肺腎の臓腑に与える影響をとても大切にしています。これが薬膳のベースの考え方と

        結局、内面が滲み出る

          漢方の謎理論・形象薬理

          本当か?と思う漢方の謎のひとつに、”形象薬理”があります。 形象薬理はそのものの見た目が効果を表す、というものです。臓器などに似た形の食べ物はその臓器に良いと考えます。 例えば豆が腎臓によい、クルミが脳によい、海藻が髪にいいだとか。これがなかなか馬鹿に出来ず、豆は余分な水を体から排出してくれますし、クルミは脳に良いオメガ3の油を含みますし、海藻のミネラルは髪の成長に欠かせません。 生薬も同じように見た目からわかる効果もあります。例えば杏仁はハート型なので心臓の薬として使

          漢方の謎理論・形象薬理

          ずっと同じ状態、ということはありえない

          少し難しい言葉ですが、”随機制宜(ずいきせいぎ)”という用語があります。臨機応変に対応する、という意味です。中医学では私たちの体は自然の一部と捉えられます。そのため、季節や地理環境、社会環境など様々な要因に影響を受けずにはいられません。時を見て、場所を見て、人を見て、治療の方法を細かく変化させていく必要がある、ということです。 まず”因時制宜”。これは時、つまり季節や気候をの変化に注意して治療を行う、ということです。まさに冒頭で話した冬病夏治はこの考え方を元にしています。

          ずっと同じ状態、ということはありえない

          バランスバランス♪五味調和

          五行学説は中医学の基本です。五行学説とは木火土金水という5つの要素に当てはめ、それぞれが協調し合い、場合によっては牽制し合って自然の仕組みが成り立っていると捉える考え方です。 そして中医学ではこの五行学説を人の体にも当てはめ、5つの要素、木火土金水を肝心脾肺腎と捉えて同様にそれぞれが影響しあいながら成り立つとして様々な病気の治療を展開します。 中医学では味も同様に5つに分類し、それぞれの味が肝心脾肺腎の臓腑に与える影響をとても大切にしています。これが薬膳のベースの考え方と

          バランスバランス♪五味調和

          めざせ食糧自給率up!

          薬膳の世界の基本ルール・その2。身土不二。 身土不二とはその土地で育った、旬のものを食べることです。 私たちの体は自然の一部です。住んでいる土地の気候や風土の影響から切り離すことは出来ません。その土地で、その季節にできるものが、その土地を生きる私たちにとって一番よいもの、本来の力を引き出せる、と考えます。 冬の間巡りが悪くなった身体を目覚めさせる春。巡りをよくする香りの良い野菜、三つ葉や芹、紫蘇や、滞ったものの排出を促す春菊、菜の花、わらびなど苦味のある食べ物が適してい

          めざせ食糧自給率up!

          ビタミンDの地味なはなし

          過剰投与が心配されるのであまりサプリメントでおすすめすることが少ないビタミンD。他のビタミン類、CやB群と比較すると効能が今ひとつ地味?なのか影が薄いですが、最近かなり見直されてきています。 ビタミンDの効果として一番有名なものはカルシウムとリンの吸収を促進すること。実際保険適応で処方されるビタミンDは骨粗鬆症の予防目的がほとんどです。 骨代謝への影響が中心と考えられていたビタミンDですが、最近見直されてきています。まず免疫力の強化作用。日常的に日光浴をする人がそうでない

          ビタミンDの地味なはなし

          この10年に感謝。これからの10年に祝福を

          この10年で人生が変わった人、変わらなかった人。 どちらの方も頑張ってきたこの10年に感謝を。 そして次の10年にこんにちは。輝く未来に祝福を。 Pray for everyone.

          この10年に感謝。これからの10年に祝福を

          果物の糖は太らない?

          仲の良いマダムが「果物の砂糖は太らないって聞いたよ!」と先日お話されていまして・・・ちょっと気になったのでここで糖質についてまとめておきます。 糖質とは私たちの体に必要な三大栄養素と言われる「脂質・炭水化物・タンパク質」の中の炭水化物から食物繊維をとりのぞいたものです。 糖質は炭素が6つからなる糖が鎖のように繋がったものです(下図参照)。同じような構造を食物繊維ももちますが、私たちがその鎖を断ち切って分解→吸収できるものが糖質、分解できないものが食物繊維です。 糖質と言

          果物の糖は太らない?

          霜降り牛のヒミツ

          今ではだいぶ主流になりましたが、私は結構昔からカロリー神話を疑っていました。 なぜならば、体が大きいことで代表的な動物、牛や象、パンダなどもみんな草食だからです。牛を例として、体重600~700kg。大体人間の10倍です。一日中食べているのかもしれないけれど・・・草だけで10倍の体重を維持できるほど(単純計算で人間の10倍のカロリー?)を食べているとは思えないですよね。 さて、牛が草ばかりであんなに大きな体をキープできる理由は何でしょうか? 実はその秘密は腸内環境にあり

          霜降り牛のヒミツ

          陰と陽の間をうまくゆらぐ

          自律神経というのは、内臓の働きなどを無意識のうちに調節してくれる神経でのことです。私たちは息をすること、心臓が動くこと、胃腸が食べ物を消化することをあえて意識して行っていません。体が必要な量の酸素を取り入れ、血流の量を調整し、食べ物が入ったときに消化管を動かす・・・これらを調整しているものが自律神経です。 この自律神経には交感神経と副交感神経があり、シーソーのように拮抗しています。 交感神経は主に活動時に活発になります。血管を収縮させて血圧や心拍を上昇させ、活動に必要なエ

          陰と陽の間をうまくゆらぐ

          プラスチックを食べたことがありますか?

          一週間でクレジットカード約1枚分。 何のことでしょうか?じつは私たちは一週間でカード一枚分(5g)のプラスチックを食べているそうです。これがひと月だとハンガー一本分(21g)ほど。これがずっと続くと思うと…ちょっとぞっとします。 私たちがプラスチックを食べる理由の多くは海洋汚染です。年間少なくとも800万トン多ければ1200万トンのプラスチックが正しく処理されず海に流れていきます。海の生物はこのプラスチックごみを食べて体に蓄積され、それを食物連鎖の頂点である私たちが食べる

          プラスチックを食べたことがありますか?

          漢方の世界で考える人生の節目

          今回は中医学(漢方)における生命と死について。 言うまでもなく人は生まれて死にます。そのプロセスについて中医学はどのうように考えているでしょうか。 人は生まれて、そして死んでいきます。まず小さな弱々しい命として産まれた私達は徐々に命のみなぎり、成長を経てピークに達し、その後徐々に衰えていきます。 “腎の役割”でお話ししたように、腎は先祖代々受け継いだ生命力を格納しています。 腎精は全ての生命力の根本です。全ての陰と陽の根源が濃縮されています。腎精は全ての生命活動の上源

          漢方の世界で考える人生の節目

          検査値が正常なら健康なのか?

          私が今より世をすねてとがっていた頃、カナダで犯罪学の授業をうけていまして。そのときの授業で印象的だったお話をここでひとつ。 "相関(correlation)"という言葉。相関とは何か2つの事柄の、一方が変われば他方もそれに連れて変わるとか、あるものの影響を受けてかかわり合っている、例えば学校で習った比例や反比例の関係です。犯罪学では収入が低い地域では犯罪件数が多いとか、若年層の方が老年層より犯罪率が高いとか、そんな議論のときに使います。 Aが増えたとき、Bも増えている・・

          検査値が正常なら健康なのか?