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長男2回目 4

長男を変えたI先生

太ってしまったこと、よくない生活リズムになっていること、ゲームに逃げ込んでいること。
誰よりも長男自身が一番わかっているはずだ。それなのに、食べ物も隠しても見つけて食べるし、運動しようと言っても反発する。
あの頃の長男は、自分の「負」の状態を認めるのが怖いから、目を伏せ続けているように見えた。中2と言えば、世間一般で言う反抗期でもあり、親の言う事なんて、素直に心に響くはずもなく・・・。
その日も相変わらず無愛想、ふてくされた態度の長男を前に、I先生は静かに話し始めた。

先生は何十人も同じ病態※の子を診てきた。
特に調節障害は中2~3あたりでピークの子が多いし、君はその中でも相当強めに症状が出ていて、かなりしんどいのはわかってる。
だから、症状が強い時に無理をしろとは先生は全く思わないし、辛いなら学校に行けないのも仕方ない。中学や高校は、そりゃ行けるに越した事はないけど、正直言えばいくらでも、なんとでもなる。
でもな、調節障害はマシになる時間帯もあるはず。そこで自分のために何をするかは、病態とは全く別の問題だ。
君が話を聞きたくない気持ちもわかる。人間は、指摘されると耳を塞ぎたくなるし、目を逸らしたくなるのもわかる。
でも、調節障害でしんどいからと言って、好きなことだけやって、症状がマシな時も動かず、延々食べ続けて、それで体を悪くするのは絶対あかん。
君はまだ中2だ。先生みたいなオジサンとは違う。
今からいくらでも、どうにでもできる可能性があるのに、それを自分で断ち切ってはいけない。
先生は君の状態を改善したい。

先生はじっくり、真剣に、強く、長男に話してくださった。

お母さんは、君に対して何をしてあげられるのかとさんざん悩まれてきたんだと思う。今回、お母さんがここに連れてきてくれたのは相当思い切ってくれたんだろう。話を聞こうとしない君に、悩んで困って、病院の先生からも君を説得して欲しいと思ったんだと先生は思うよ。

お母さん?
お母さんはもしかしたら、自分が仕事を辞めて一日中彼の側にいて寄り添った方がいいのか、自分のやり方が間違っていたのかなど、自分のことを責められているかもしれないけど、それは絶対違います。
お母さんはお母さんの人生を生きなければいけない。
彼は彼の人生を、自分で切り開かなければならない。
お母さんが仕事を辞める必要は全くありません。
今お話を聞いてるだけでも、十分過ぎるほど彼に向き合ってると、ぼくは思います。

あとは君だ。君が変わらないといけない。

自分を責める親

子供に何か問題が起きた時、自分に否があるのではないか?と、だいたいの親はまずそう思ってしまうのではないだろうか。
ずっとフルタイムで働いている私は、小4で長男が不登校になった時も一部のご近所さんから「あんなに仕事しなくても…」「私なら仕事辞めるわ」などと陰で言われていたこともあった。
まさか長男がふたたび学校に行けなくなるとは思っていなかった私の心は、揺れ動かなかったはずもなく、実はちょうどその時上司に勤務体系を変えてもらいたいと相談していたのだ。

・・・診察室で私は涙が止まらなかった。ずっと一人で悩み続けてきたことをI先生に見抜かれていた。
またI先生は、今私が辞めてしまうと長男は「自分のせい」と思ってしまい、かえってよくない状況になる可能性もあるから急に環境を変えない方がいいとおっしゃった。

先生から目を逸らして座っていた長男は、先生の話の最後の方には先生の目をじっと見ていた。
信頼できる大人が目の前にいる。
先生の染み通るような、静かで強い説得は、長男の心と行動を変えた。

ここから、起立性調節障害と肥満、二本柱の治療が始まった。


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