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夏休みの宿題は必要?

結論からいうと
私の教員生活24年の経験から、夏休みの宿題は

生徒に学力を身につけてほしいと祈る教員側の願望にすぎず、
ほぼ効果がない

と考えています。

【学力が十分身についていて目的意識が高い生徒】の場合、

宿題があろうとなかろうと主体的に学習するので、
教員サイドが干渉しなくても勝手に学力が向上していきます。

むしろ、
夏休み期間中に有名私立校の受験対策をしたかったり、
個人的により専門的な学習したかったりなどの予定があれば、
一律に行われる宿題では難易度が低すぎるため、あまり意味がありません。

夏休みの時間を有効に活用したい生徒にとっては、
宿題にとられる時間が無駄に感じられ、
学力向上の障害になっている可能性があります。

【学力を身につけてほしい生徒】の場合、

普段の家庭学習において、

自力による勉強がうまくいっていない

ことが学力が伸びない原因の1つになっています。

自力でうまく勉強ができない生徒の学力を向上させるために、
自力で勉強するための宿題を与えるという
矛盾が生じているので効果がないのは当然です。

私も若い頃は何も考えず、
夏休みは宿題を与えるものであると考えていましたが、
徐々にその効果に対して疑問を抱くようになりました。

あるとき、私は職員会議で、

「思い切って夏休みの宿題をやめませんか?」

と提案してみました。
結果はご想像の通り、
反対意見が多数で例年通り、夏休みの宿題が行われることになりました。

夏休みの宿題を肯定する先生方の意見は

・夏休みの間に、復習して学習内容を定着させる
・学習習慣を身につけさせる
・宿題がなければ、何も勉強しない生徒が増え、学力が低下する

などが主でしたが、そもそも夏休みは、

学習に適さない暑気を避けるためのものであって
家庭学習を充実させるためのものではない

という考えが全く抜け落ちています。

宿題がなければ何も勉強しない生徒がいるというのは、
我々大人であっても当たり前のことであって、

宿題があっても、わからないため勉強にならない生徒に焦点をあてて
サポートするほうが重要ですが、
実際そんな手厚いサポートが行われることはほとんどなく、
宿題は生徒に渡しきるだけです。

学習内容を定着させたいとはいうものの、
市販の夏休みのワークを購入している時点でその本気度がうかがえます。

そこで私は1度、生徒の実態に合わせたオリジナルの宿題を
1~2か月かけてコツコツと作成し、
自力でも学習できるように解答・解説付きで配布しました。

かなり丁寧に作成したので生徒の学力向上を期待していましたが、
全く手ごたえを感じず、撃沈したことを覚えています。
しかも、その当時の生徒のためだけに作成したので
その宿題は全く汎用できませんでした。

手作りであろうが、市販のものであろうが、宿題を渡しきるだけでは、
学力が伸びる生徒は勝手に伸びるし、
伸びない生徒は伸びないというのが現実かと思います。


また

・9月最初のテストで夏休みの成果を確かめるために、宿題は必要である

との意見もありましたので、

「9月最初にテストを実施しなければ万事解決ですね」

と意見すると、結局、

「今までやってきたから必要」

という意見に収束し、

なぜ宿題が必要か

という議論にならなかったため、
妥協点を見つけるような話し合いにはなりませんでした。

脳科学的にいえば、夏休みの1か月ちょっとの

努力の成果が現れるのは早くても約3か月後

であって、夏休み明けにすぐ発揮されることは稀だから、
夏休みの成果がでなかった生徒の自尊心をむやみに損ねる可能性があると
説明しても説得できず、前例主義には勝てませんでした。


このように私の1度目の夏休み宿題撲滅作戦は失敗に終わりました。


しかし、令和2年度に、もう1度、提案するチャンスがきました。

1学期、新型コロナによる臨時休校となり、
学力を保障するために大量の課題を与えて家庭学習に取り組ませました。

授業の代替として課題を与えるため、
少しでも学習の補助となるよう先生方もかなり気合を入れて
課題を作成していました。

そんな臨時休校の期間を経て、
ようやく登校できるようになった生徒たちの様子を見ると、
それまで新型コロナのため外出もままならず、
家で大量の課題をこなすという生活を続けていたためなのか、
精神的にかなりのダメージを受けているように感じました。

そこで私は職員会議で、

「(課題は十分こなしているので)夏休みの宿題をやめませんか?」

と提案しました。※1回目に提案した学校とは別の学校です。

すると私と同様に生徒たちの疲労度を案じていた先生方の共感を得られ、

5教科の宿題は行わない

という初めての試みを実施することになりました。

そんな夏休みを過ごして
2学期をむかえた生徒たちの様子は

宿題があってもなくても例年と変わらず

学力にも大きく影響がなかったため、
私の中では、より夏休みの宿題の必要性は感じなくなりました。


結論

今まで通りの夏休みの宿題をただ実施するだけでは、
学力の向上は期待できないと思われるため、
時間とお金の浪費になってしまうから必要性は感じません。

夏休みの宿題に必要性をもたせるためには、
そこに教員側の工夫が不可欠です。

ちなみに宿題があってもなくても勉強しない生徒のうちの一人は、
数十年前の私のことです。

8月31日に号泣しながら宿題をまとめてする悲劇(自業自得)を
なくすためにも、改革が必要なのではないでしょうか。

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