スープ・レッスンは何のレッスン?

スープ作家の有賀薫です。2018年9月27日、プレジデント社より『スープ・レッスン』という本が出ます。今日は、この本が何の役に立つレッスンなのかをお話しようと思います。いえ、もちろん、スープのレッスンではあるのですが。

(表紙クリックするとAmazonです)

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『スープ・レッスン』は、2016年6月から今も続くcakesの連載だ。一応人気連載、と呼んでも怒られないと思う。これを一冊にまとめたレシピブックができた。アレンジメニューまで加えて約50のレシピが収録されている。
内容については、帯がすべてを語っている。もし、もう少し膨らませるとするなら、Amazonレビューに書かれたこの部分。

メインの野菜はひとつ。味付けは最小限。それは効率的、経済的、健康的、つまり快適。野菜がもっと好きになるスープレシピで、忙しい毎日をもっと楽に、もっと楽しく生きる。

これは『スープ・レッスン』連載の担当編集者で、書籍編集も引き受けてくれた中島洋一さんが考えてくれた。

「メインの野菜はひとつ。味つけは最小限」との言葉どおり、連載時には、私の出したレシピに厳しい指摘が入った。料理する人間が “つい” 加えたくなる、うまみや香り、いろどりなどのちょっとしたひと手間は、本当にそれが必要かどうかを問われ、より簡素なレシピをめざして精査することになる。何往復にもわたるやりとり。この連載は読者のレッスンであると同時に、レシピを作る私自身のレッスンでもあった。

そうやって手間をかけたからこそ、少ない材料と手順で、それぞれの野菜のおいしさに最短距離で届くレシピができた。何となく使われている食材も手順も、この本にはひとつもない。すべてが、それなしでは成り立たないから、入っている。

そういえば、新宿のスープストック・トーキョーで行った初めての打ち合わせで、連載のイメージをすり合わせていたとき、中島さんが「ノームコア」という言葉をちらっと使った。スティーブ・ジョブスのタートルネックとデニム、スニーカーのファッションスタイルから生まれた「ノーマル」と「ハードコア」を合わせた「究極の普通」という造語だ。

その言葉は2018年の今、やや懐かしく聞こえる。中島さんもその後はノームコアなんて一言も言わなかったけれど『スープ・レッスン』のレシピは、近いものがあるなと思う。
驚くほど普通で地味で飾りけがない。でも、どの野菜にもある一番おいしい時期を逃さずに、一番おいしく食べられるコアな方法を考え続けてきた。この野菜を食べなかった夫や息子が食べた、という声も多くもらった。

旬の時期はそればかり食べても飽きない。シンプルなだけにアレンジも無限に効いて、レシピの数が少なくてもむしろ作れる料理の数は増える。
レシピの中には食材の扱い方やおいしさを引き出すための下ごしらえの方法が少しずつ織り込まれているから、いろいろな野菜が使えるようになり、スープ以外の料理の幅が知らずに広がる。

前著『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』を今年の2月に上梓したとき、私はこんなことを書いていた。

だれもが忙しくなって料理にあまり時間がかけられなかったり、料理の腕があまりなくて作れなかったり、あるいはそもそも食べることに興味が持てなくなっていたり、そんな今と、これから先、スープはもっと生活の中心になってくるのではないかと、この6年間鍋をかき混ぜながら思っていた。

この本は今年、予想を超えてヒットしたのだが、ある意味で日々の食事に困っている人が、実は増えているという証明にもなった。これだけ食の情報があふれる中、意外なようだが、ごく普通に生きる私たちの食は思いのほか貧しく、思いのほか選択肢がない。

多忙で、ストレスフルな現代人の生活において、スープは時間や労力の効率、経済、健康を担保し、なおかつ家庭料理としてのあたたかさや満足感を与えてくれる。スープを暮らしに取り込むことで、生活は楽しく、楽になっていく。前著とはややテイストは違うけれど、私が届けたいメッセージは変わらない。

おいしさは、そして幸せは、私たちが思っているよりずっとかんたんで、ずっと楽に手に入るもの。『スープ・レッスン』は、まさにそのことを教える側と教わる側が、一緒に学ぶための授業だという気がしている。

ぜひ、読んでみてください。



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有賀 薫

スープ・コレクション5

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