2.ご褒美はやる気をなくさせる?
有名な心理実験がある。
これはご褒美を与えたのに、ヤル気のなくなった子供の話だ。
子どもたちを集め、三つのグループに分けて、お絵かきをしてもらった。
Aグループは「お絵かきをしたらご褒美をあげる」とつたえ、約束通りご褒美を与えた。
Bグループにはご褒美の話はしなかったが、お絵かき後、ご褒美を上げた。
Cグループには、ご褒美の話もせず、実際にご褒美も上げなかった。
数週間後、同じ実験をこの3つのグループに対して行った。
もっともお絵かきが長続きしないグループはどのグループかを考えてみてほしい。
答えは、Aグループだ。
褒美を上げると約束され、褒美をもらったにもかかわらず、お絵かきの時間が目に見えて減った。
多くの企業は、Aグループの様にして社員を扱おうとしている。
特に販売部門で顕著と言えるだろう。
販売成績でキャンペーンを行ったり、給与体系に販売の歩合を組み込んだりする。
それはいわば「約束された褒美」なわけです。
はじめはうれしい。
しかしだんだんとそれを繰り返すうちに、ウンザリしてくるわけ。
営業チームに覇気がないとしたら、この辺りを疑ってみる必要がありそうだ。
また、公平な給与制度が社員のモチベーションを上げる、という話もこの結果を見ると嘘くさい話だと感じられる。
よく言われることだが、給与体系は衛生要因。
つまり、不満を出にくくする効果はあっても、ヤル気を出させる効果は限定的。
この被験者となった子供たちには何が起こっていたのか。
それはこう説明されている。
Aグループの子どもたちは、はじめは楽しくて絵を描いている。
しかし、それがご褒美という報酬とつながった時、お絵かきは報酬をもらうための義務となる。
楽しいからやっていたことが、ご褒美をもらうためのお仕事になるらしい。
つまり、はじめは「楽しい」という内発的動機(内から湧き出るヤル気)を、「褒美」という外発的動機(外からの刺激に反応しておこうなうヤル気)に変わった様子。やりたいことが、やらされ仕事になったということだ。
社員がやる気がないとか、自主性が足りないとかいうとき、社員からヤル気や自主性を奪っているのは会社側なのかもしれない。
しかし、会社をやっているとすぐにでも成果が欲しい。
すぐに成果を上げるためには「強制」するのが最も手っ取り早い。
そんな文脈で、社員を「強制」する。
自主性は押し込められて、自分から進んで・・・というのは難しくなる。
急がば回れとはよくいったもので、恒久的な効果をだしたいなら、多少の回り道が必要なようだ。
じゃあどうすればいいのか。
そんなことを次回考えていきたい。
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