ルワンダの景色

進路についてもよりよく迷え 、カレーのレシピとワンピースに助けられながら『さよなら未来』に導かれる

『地図ではなく、コンパスを持て』
これはWired元編集長の若林さんの著書『さよなら未来』の一説に引用されたMITメディアラボ所長の伊藤積一さんのお言葉です。この言葉に端を発し、またしても言葉に悩まされる日々が続いていました。

こんにちは、みなみです。だんだんルワンダでの生活にも慣れてきて、はからずして坊主になった我が髪の毛も少しずつ伸びてきて違和感がなくなってきました。

そうやって徐々に生活自体に慣れてくると、ごくたまに、いやそこまでたまにでもないんだけど、ふと我に返るような瞬間があります。「あれ、なんで今俺、休学しているんだろう。ルワンダにいるんだろう」と。それは決して悲観的な感情の波などではなく、まるで呼吸をするような自然さで訪れます。どこかにこの感覚がわかる人はいませんか笑?

自分の場合は、明確にこの一年間何かを成し遂げたいという志も、何かを身に着けて活かしてやりたいという野心があるわけでもありません。ただ自由な時間を得たときに自分という人間がどのような選択をとり、どのような挙動をするのかというある種の実験的な試みとして今はお休みの時間をいただいているといった感じで、ときたまそれに焦りを感じ、追われるような気持になることがありました。

そんな僕に、冒頭の『地図ではなく、コンパスを持て』という言葉が立ちはだかりました。この言葉が引用されたのが『さよなら未来』の未来地図なんていらないという章というか、原稿の中なのですが、将来のことについて絶賛迷走中の僕にとってはすごくひっかかりました。

「今、自分の持っているコンパスはどっちを向いているんだろうか。あれ、そもそもコンパスを持てているんだろうか、地図を探していないか。あれ、そもそもコンパスってなんだ、どういうことなんだ。」

たった1つの言葉からはじまった思考の旅は、ぐるぐるぐるぐる回り、とどまるところを知らず、さらに僕を迷走の深みにはまらせていきます。

困ったときには、1回立ち止まって考えてみる。特別賢くも、才能があるわけでもない僕に残された武器はいつだってこうやって、こつこつと考えを積み重ねることである気がしています。

 もんもんと立ち止まってたどり着いた答えは、『カレーのレシピ』でした。何を言っているんだと思われるかもしれませんが、その時はこれが一番しっくり来たのだから仕方ありません。

例えば、僕がカレー屋さんだったとして、”いちばんうまいカレー”を作ろうとしているとします。たぶんはじめは、自分の知っているレシピとか、クックパットとかを使ってうまいカレーを作ろうと基本を研究するでしょう。

でもいちばんうまいカレーをつくるには、今知っているやり方だけでなくて、たぶん何度も何度も試行錯誤をしないといけないと思うんです。はちみつ入れたり、隠し味にリンゴを入れたり、時には迷走して水ようかんを入れたりしてしまうかもしれません。

それでも、自分の信じる”うまいカレー”を作るため、たくさん迷いながらも、必死にこうしたらうまくなるんじゃないかと、ああしたらいいんじゃないかと繰り返して、レシピを作ると思うんですよ。ああ、これこそが『地図ではなく、コンパスを持て』という言葉の本質なんじゃないかなと思いました。

うまいなんてのは味覚の感性で十人十色です。だから最後に僕が信じられるのは自分がうまいと思えるかどうかだけと思うんです。今、自分が持っているコンパスがどっちを向いているかなんて正直わかりません。でも自分が信じる方向を、自分が誇りをもって生きていけると信じる方向へと、今は進んでいくしかないんだと。

そうこう考えるうちに、おんなじくらいしっくりくる話を僕は知っているじゃあないかと気づきました。それがかの有名な大ヒット漫画『ワンピース』です。

ワンピースにはログポーズという道具があります。ご存知の方も多いと思いますが、ログポーズは島に滞在している間に、次に行く島への磁気を記録するという航海における必須アイテムです。すなわち、このログがたまるまで、次の島に移動することはできません。しかも示してくれるのはあくまで方向だけ。これって最終目的地と思われるラフテルにたどり着くことを考えるとめちゃくちゃ、いろいろ行ったり来たりだし、遠回りだと思いませんか。

よくよく考えると、ワンピースではたしかにルフィは海賊王になるっていう大きな最終目的を持っているのですが、そこに対して焦りを見せたりする様子はない気がします。また特に初期の印象が強いかもしれないですが、1つ1つの島ごとに冒険を楽しみ、ログポーズの指し示す方向へと進んでいった気がします。

たしかに、ワンピースでは最終目的地という正解っぽいものがあるという点では違う部分があるかもしれないですが、これもまた『地図ではなく、コンパスを持て』という言葉に準ずる部分があるのではないかと思いました。

そんな風に、『地図ではなく、コンパスを持て』という言葉に思いをはせて、考えを張り巡らせていました。そこから自分の話に戻ると、なぜ休学をしているのだろう、なぜルワンダにいるのだろうという自然に訪れるこの感覚に対するヒントがみえてきました。

きっと、僕が今信じられる自分の感覚や感性こそが、今僕が唯一持ち得るコンパスであり、僕にとってのうまいであり、僕が持っているログポーズなのだと思います。もしかしたら、将来に明確には役にも立たない経験になるかもしれないです、特に意味のなかった時間だねと周りに言われることがあるかもしれないです。

それでも、ルワンダで今過ごした時間や、休学しているときに出会えたものが、僕の持っているコンパスの指し示す方向へと導いてくれるんじゃないかなと思います。だって、今の僕が一番心躍らせたのだがこの地に訪れることだったから。そうやって試行錯誤を繰り返しながら、自分の人生の1個1個のできごとを冒険のように楽しみ、乗り越えることが、結局は自分の将来を形作る近道なんじゃないかと。

同学年が、就職や進学を決める中でちょっぴり焦っていた自分がいたけれど、未来のための正解を導いてくれる地図なんてないんだから、自分の”今”信じられる感覚に従い、将来について、進路についても勇気をもって、よりよく迷おう。『地図ではなく、コンパスを持て』という言葉に導かれ、そんな風にかんがえられるようになり、ふとした瞬間に感じるもやもやも今は少し晴れた気がします。またルワンダでの生活を一所懸命頑張ります。

最後に『さよなら未来』本当におすすめです。気になる方は読んで、一緒に語りたいです。

つたない文章ですが、読んでいただき、ありがとうございました。


大阪大学の理系学生(休学中) アフリカが足りないという言葉に魅せられ、ルワンダに4か月間のインターンシップに来ています。主にこっちでの生活で感じることを徒然なるままに綴っていきます。