訓練

朝の界隈は、ウグイスの声を浴びる。4月のウグイスはまだまだひよっ子で、デビュー前の半人前の唄歌い。でも、この1ヶ月の間にみるみる成長して、今ではいっぱしの唄使いだよ。今朝、あちこちから聞こえるウグイスの声なんて、美声そのものだった。日々訓練あるのみ。

そして、ウグイスの声を聞くだけで、背中が妙にピンとするのは何故だろう。

訓練といえば、ここに書く文もある意味訓練なのだが、私は創作の同人誌に所属している。同人誌周辺は作家さんばかりだ。

書く、読む、考える、書く、直す、評価してもらう、直す、直す、書く、直す

ほぼ文章は書くと言うより、直すが一番の仕事じゃないかなと思う。合評会に行くと、作品への自信は見る間に失墜し、穴を探して隠れていたくなる。言われた事をメモして、更に検討の余地を携えて帰宅し、その日はズンと沈んでいることが多い。

しかし、これが実はとても必要な作業で、第三者の目は容赦無いだけあって、実は宝のアドバイスなのである。

しばらくして、やはり作品と向き合わなくてはならなくなり、まぁ、とりかかる訳だ。乗ってくれば、またエンジン全開にワクワクしながら書いたり直したりの楽しい時間が続くが、これが一向に乗ってこないと、途端に顔色も変わる。

私はプロでもないし、そのまましばらく作品をほったらかしにしていても問題ないが、プロの作家さんはきっと、それをほったらかさないからこそ、プロになれているのだと思う。これは日々の積み重ねで、訓練に等しい。

私はここ何年か、家庭の事情で書くことができなくなり、多忙を極めていた。精神的にもかなりヤバかった。プロではないから、書くことから離れられたのは実はとても救いでもあった。プロではないから、許された事だ。自分で選んだ職業に、本来家庭の事情など関係ないはずで、そこは私の弱さゆえに覚悟ができていない。だからこそ、プロにはなっていないんだろうと、納得はしている。

しかし、少しずつ家庭の事情も解消方向に向かっており、また書きたい気持ちが頭をもたげてきた。追いついていないのは、アイデアとプロット設定と諦めずに書ける力。

今月初めに、同人誌の重鎮先輩に会って「まだまだ待ってるから、早く復帰しなって。ホントに待ってるよ。頑張って」と言っていただいた。同人誌の重鎮と言っても、当然物書きとして生活している作家さんだ。

並んで話をして、内緒話のように二人で頷いたりしていると、なぜか心地よい。うん、やっぱり嬉しい。忘れられていないのが、私にはよっぽど嬉しかったよ。

少しずつ訓練して、また書こうかなと言う気持ちになった。少しずつ、また始めるかなって。

身辺のとっちらかっている事を少しずつ片付けて、また言葉の海を泳ぎたい。ずっと遠くまで。


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