Green Book 〜差別と勉強〜

今週末の新規映画は、3本。

・AVIATOR
・Green Book
・ホテル・ムンバイ

まずはGreen Bookから。
まず、とても良くできた話だったなという印象。
伏線が多く、一つ一つ、割と分かりやすく回収されていくので、いい意味で映画を細部まで味わえるなと思った。

全体的には、イタリア系のトニーとアフリカ系のドンが、徐々に互いへのリスペクトを高めていき、影響しあい、友情を育むという内容。

60年代前半ということで、黒人差別が露骨で日常となっている。
トニーも例にもれず、あからさまに黒人を嫌悪しているのだが、プロのミュージシャンであるドンのツアードライバーとして彼の演奏を目の当たりにすることから態度が一変する。

道中、粗暴なトニーの態度を再三注意するドンと、差別の中、生き抜いていくため、認められるために、紳士的だが硬直的な一面のあるドンをからかいながらオープンに接するトニーが互いに影響し合う様は、観ていて爽快だった。

「寂しいときは自分から行動しろ」というトニーの言葉が印象に残っている。
他者に対し、「心を開く」という状態は、同時には発生しないと思う。
結局は、どちらかがふっと心を緩め、歩み寄る、言葉をかけるといったアクションが、引き金が必要だ。

ただ難しいのは、心を開いても、すぐに相手もそれに応じる確約はどこにもないということ。
期待をせずに待つ、という状態が、心を開き、オープンでいることなのかなとも思った。(これはこの映画からというより、今読んでいる鷲田清一氏の「待つということ」という本の影響が大きい。)

あらためて、差別ってホント、意味ないよなあと思う。
けれどそんな自分も、黒人に対してどこか見下すような印象を持っていたことはあるし(昔流行った黒人芸人への笑いの中にはそんな態度が混じっていたと思う)、いまでも欧米人のスタイルに憧れ、同じアジア系の人はぱっとしないよなあなんていうイメージは強く残っている。

自分と異なる特定の人種や個人に憧れる感情を抱くことは別に悪いことではないし、オープンであるためにはむしろ必要なことだろう。
注意しなければならないのは、それらを比較してしまうことだろう。
他者の容姿や能力によって人間の価値が決まる、という思い込みが自分には、ある。
これを薄め、振り払い、自分自身を解放するためにはどうすればいいのだろう。

森博嗣さんの言葉を借りれば、それには、「勉強する」しかないという。
ただしここで肝心なのは、この勉強を、競争に勝つこと、つまり、他者との比較において優位に立つことを目的にした瞬間に、「比較地獄」にとらわれる。
勉強するのは、世界の叡智や人間の営みの歴史に触れることで、自信を得るよりもまず、自分の小ささを知ることが優先されなければならない。
世界に対して謙虚になり、勉強を通して自分と向き合うこと。そうして少しづつ自分が幸せに生きるために何が本当に必要かを知っていくこと。
他者との比較ではなく、あくまで自分のために学び、自分自信の価値を高めていくことが、格差や差別を再生産しないための教育の姿なのだと思う。


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