ダメになる会話「心配性」

男性客「すみません!いいですか?」
占い師「どうぞ。初めての方ですね。」
男性客「す、すごい!」
占い師「どうしました?」
男性客「私と会うのが初めてだと見抜いておられる!」
占い師「それは占いではなくて、あなたの顔に見覚えがないという、ただの記憶です。」
男性客「なるほど!すみません、こういうとこ慣れてないもので。」
占い師「今日はどんな事を占いにこられたんですか?」
男性客「すごい!私が占ってもらいたがっているのを見抜いてらっしゃるっ!」
占い師「占い師のところに客としてくる人は、ほとんどの場合、何かを占ってもらいたがっているものです。」
男性客「なるほど!おっしゃる通り!」
占い師「なかなかユニークな方のようですな。それで、何を占いましょう?」
男性客「実は私、こう見えて大変な心配性でして!」
占い師「そうですか。一見ハツラツとした方に見えますが、内面はまた別というのはよくある事です。」
男性客「いやもう、いろんな事が心配でして!」
占い師「私の占いで心配をやわらげる事が出来れば良いのですが。それで、今日は何を?」
男性客「その前にお聞きしたいのですが、占いというのは、どんな事でも占えるものでしょうか?」
占い師「そうですね、占い師は自分自身のことは占えませんが、それ以外の事でしたら大抵のことは占えますよ。」
男性客「よかった!ではまず、『地球の寿命』を占ってください。」
占い師「『地球の寿命』…で、よろしいので?」
男性客「はいっ!お願いします!」
占い師「見料として千円いただきますよ?」
男性客「もちろんです!お願いします!」
占い師「…では、見てみましょう。ふむ…ふむ、わかりました。」
男性客「どうでした?!」
占い師「近いところでは1700年後あたりに健康面に不安と出てますな。おそらく氷河期でしょう。」
男性客「氷河期かぁ〜!でも1700年後なら大丈夫かな。寿命はどうですか?長生きしますか?」
占い師「そうですね。58億年後に爆発して死ぬと出てます。」
男性客「爆発しちゃうのか~、でも、そんなに先なら安心ですね。」
占い師「では、見料千円になります。」
男性客「待ってください、他にも占って欲しい事があるんです。」
占い師「これは失礼。次は何を占いましょう?」
男性客「次は『日本の寿命』をお願いします。」
占い師「…日本の、寿命、で、ございますか。」
男性客「ええ、天変地異で海に沈んだり、どこかの国と戦争をはじめたり、そういったことが近々起こらないか、占っていただけますか?」
占い師「では、今のような平和な日本がどれくらい続くかを占いましょうか?」
男性客「はい、それでお願いします。」
占い師「では…ふむ、いろいろありますが、寿命、というレベルで言えば、あと300年はもつと思われます。」
男性客「300年ですか。思ったより短いなぁ、うーん」
占い師「あの…よろしいですか。」
男性客「なんでしょう?」
占い師「差し障りなければ、なぜそのような事を占ってほしいのか、教えていただけませんか?」
男性客「え?ええ、かまいませんよ。実は私、近々結婚する予定がありまして。」
占い師「はい。」
男性客「それで、です。」
占い師「…」
男性客「…」
占い師「すみません、あなたが結婚する事と地球の寿命が全然結びつかないんですが。」
男性客「ああ、言葉が足りませんでしたね。私、結婚したら子供を何人か育てたいと思っているんです。」
占い師「はい。」
男性客「でも私たちが死んだあと、すぐに地球が滅んだり、日本が大変なことになったりしたら子供たちや子孫がかわいそうだと思いまして、それなら子供も作らず、結婚も取りやめにしようかと。」
占い師「スケールの大きな心配性ですね。」
男性客「でも、これまでの占い結果だと未来も大丈夫そうだし、あとはいよいよ結婚相手との相性を占ってもらうだけです!」
占い師「わかりました。ではお相手の名前と生年月日をこちらにお書きください。」
男性客「えーと、これこれの、これと。はい、書きました!」
占い師「では占います。ふむ…うむ…おや?これは…」
男性客「どうですか?僕と彼女の相性は?」
占い師「それが…申し上げにくいのですが、この結婚、前途多難、相性最悪、即刻取りやめるべし、と出ました…こんなに悪い相は滅多にないんですが。」
男性客「ええ!そうなんですか?」
占い師「婚約までしてるのに変ですね…この方とのお付き合いはうまくいっているのですか?」
男性客「それはまだわからないです。」
占い師「まだ、といいますと?」
男性客「まだ付き合ってはいないんです。告白もしていません。」
占い師「え?しかし、先ほど結婚の予定があると…」
男性客「ええ、僕の中では週末には告白してオーケーをもらい、そのままスピード結婚する予定なんです。」
占い師「それじゃあ、結婚する予定というのは、あなたの中だけの予定なんですか?」
男性客「そうなんですけど、そんなに相性が悪いなら、他の人にします。」
占い師「そ、そんな簡単に相手をかえてしまっていいんですか?」
男性客「大した問題じゃありません。それより、また他の事を占ってもらっていいですか?」
占い師「え?はい、何でしょう?」
男性客「週末からちょっと大きなプロジェクトを始める予定なんですが、それがうまくいくか占ってみてください。」
占い師「ああ、はい、では手相を見せてください。…はい、それはうまくいきそうですね。」
男性客「よかった!それなら結婚の方も問題ありません!」
占い師「よ、よくわからないんですが、週末のプロジェクトがあなたの結婚に関係してるんですか?」
男性客「なに、ちょっと知り合いの女性を強引に車に乗せて、誰も知らない別荘に連れて行って僕との結婚を了承するまで地下室で暮らしてもらうだけです。」
占い師「…え、それは…」
男性客「では見料はここに。それじゃ、ありがとうございました!」
占い師「………………あ、もしもし警察ですか?ちょっとお伝えしたい事が…」

-END-

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?