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「逆走禁止」

 京都・平安神宮近くにある細見美術館で「逆走禁止」の但し書きを見つけた。
 細見美術館の展示室は地上1階から地下1階、地下2階へと下りていくタイプで、その間はすべて屋外にある階段で移動することとなる。そもそもそこまで大きくない美術館である一方、観光地の性質上、混雑する時期・時間帯もあるものと思われる。その中での「逆走」はお客さん同士のトラブルに発展したり、最悪階段からの転倒事故に発展する可能性も、言われれば全く無いことも無さそうである。いずれにしてもこういう但し書きは他で見たことは無く、「こういうルールもあるのか」とちょっと興味を持った次第だった。

 こういったルールは決められただけの経緯があるはずなので、基本的には「郷に入りては郷に従え」だが、かく言う私はよく展示室間の「逆走」をしてしまっている。展覧会に頻繁に行くようになった初期から、まず展覧会を一通り見渡し、展示室を出る前に作品リストに○をつけた作品にもう一度向かう「ラウンド2」は恒例行事になっている。それでもなかなか展示室を出る踏ん切りがつかなくて、ラウンド3、ラウンド4に発展したケースもある。
 東京都美術館のエレベーターには結構な頻度で乗っているし、東京ステーションギャラリーでは独自の逆走ルートを編み出してすらいる。

 映画評論家の淀川長治さんが以前、「推理ものの映画でも、何度も見られる作品が良い作品」(大意)とおっしゃっていたことを思い出す。少年時代に慣れ親しんだはずの物語が大人になって急に陳腐に見えることがあるように、作品リストの片隅に○や☆マークをつけた作品が、ラウンド2以降で‪✕‬マークが書き加えられていることはザラにある。反対にノーマークの作品に○がついたり、○が☆になったりすることもある。
 こういう風に、自分の中の興味関心が見つかり、変化していく様を知ることは中々に面白い。もちろん美術館のルールには従うものてして、ご参考までに。

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