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メモの取り方について、少し気になったこと。

 先日、美術館に行ってきたところ、スマートフォンでメモを取っている人がいた。

 その会場で禁止されている写真撮影をしているわけではないし、スマートフォンを使うこと自体は大きな問題はない。ただ、ある時間の展覧会に4人、同様にスマートフォンでメモを取っている方がいて、時代の変化を感じたという次第だった。そういえば美術手帖の有料記事でもスマートフォンのメモが当たり前であるかのような記述をしていたし、他ならぬ私自身、コマーシャルギャラリーのような小規模会場ではスマートフォンでメモをとっていることもある。

 ただ、気になったのはその4人全員が、メモに時間がかかっていることだった。いずれにしても長時間、作品前に居座ってのメモは美術館における筆写・模写と性質が同じで、「ほかの鑑賞者の妨げにならない」ということを考慮することが求められそうなケースだなと感じた。
 もちろん私自身、メモそのもの、あるいはスマートフォン自体の禁止を提案したいわけではない。スマートフォン・手書きを問わず長めのメモを取るときは動線から一歩下がっておいたほうがいい、という程度の話である。

 もう一つ気になったのはメモの取り方である。スマートフォンの画面は発光体なのでどうしても中身が目に飛び込んできてしまうのだが、どうやらキーワードではなく文章形式でメモを取られている方が多く、それも長時間滞留の原因だろうと感じた。
 自分のメモを見返すと、最初の段階では文章になっていないことも珍しくなく、たとえば「51広い、静か」というような、それだけでは意味のわからないメモを取っていることも珍しくない。それを参考に、展示室・美術館を出た直後、あるいは家に帰ってから「(51番、広重の作品について)ぽっかりと広い空間が空いており、静かな雰囲気を醸し出している。」というように一文を起こしていく。文章を書く場合、手書きとフリック入力にそこまで大差はないらしいけど(最終的に個人差の問題)、「何をメモるか」は重要だと思う。
 どうしてもメモを文章で書きたい場合は音声入力を使ったほうが圧倒的に早い。すぐにSNSにアップロードするとかでなければ多少の誤入力・誤変換はご愛嬌で、数分で1000字単位の文章を起こすことも全く不可能ではない。ただし展示室内では多分禁止されるため(携帯電話による通話に相当)、これもやはり展示室・美術館の外で入力するということになる。私の場合、電車の待ち時間なんかを活用して、通話をするフリをして音声入力でメモを取っていたりもする。

 もう一つ、メモの取り方で気になったのが「キャプションを逐一筆写している」パターン。こちらもスマートフォンだけでなく、手書きでメモをされている方でも時々見かける傾向である。
 以前も書いたけど、一つの展覧会における文字情報は多い時で5000字、単純計算でも原稿用紙12〜13枚に相当する分量になる。そのすべて書き写すととんでもない時間がかかってしまうし、なにより実際の作品・資料を見る時間も、それを受けて自分が何を感じ、何を考えたか、観察・思索の時間もそれをメモする時間も削られてしまうのも良くない。その一箇所だけをメモするにしても、基本的には箇条書き、単語オンリーで十分だし、正確な文章が必要ならば図録等を後で買うか、あるいは美術館ベンチに備え付けられている図録を、あるいは美術館の図書室を活用する方法も可能性としては考えられる。

 そもそも展覧会場でメモを取られている方は、プライベートの日記やSNS、ブログ、学術論文に至るまで、なにかしらのアウトプットをされている方も少なくないかと思う。
 そうした、何かしらの形で学ぶ気持ちをあえて妨害したいとも思わないが、一方で公共施設という場である以上、バランスを取る必要性も少なからず感じた。そうした状況において、より効率的に、そして効果的にメモを取る方法はないか、一意見でしかないものの、思うことをつらつらと書いてみた。もし参考になるようなところがあるのなら、筆者としては嬉しい。

・メモの時間がかかりそうなときは他の方の「鑑賞の妨げ」にならないようにする(動線の列から一歩下がる、展示室の外やベンチなどでメモをとるetc.)。

・メモは文章ではなく単語単位で書き、あとで詳細を追加入力。音声入力によるメモも検討する(もちろん「鑑賞の妨げ」についても配慮を)。

・キャプションの一字一句をメモしようとしない(大事なのは自分が何を考え、感じたか)。必要に応じて図録を入手。

 

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