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アイドルの「反省ポエム」から書くことの効用を考える。

 日比野芽奈さん(22)は小学生のころから芸能活動をしており、複数の事務所、グループを経験した後、現在は「ラフ×ラフ」という女性アイドルグループで活動をしている。「ラフ×ラフ」の総合プロデューサーとして佐久間宣行さん(テレビプロデューサー)にオファーをかけたのが日比野さんであり、人気も高く、活動に対する取り組みの深さからメンバーからも慕われている。

 そんな彼女は、10年を超える長い芸能生活で培ってしまったと思われる、通称「ネガティブ」と呼ばれる極端なマイナス思考があった。ネガティブ思考自体は私自身にもあるし、程々にだったら「慎重」という言い方もできたりするので別に良いんだけど、時々「ネガティブ」を通り越した言動が出てきたりもして、「大丈夫なんだろうか」と思うこともない正直ではなかった。

 そんなある時、佐久間さんが毎日「反省のポエム」を書き、3ヶ月後に提出するという宿題を日比野さんに課していた。そして3ヶ月後、彼女は約束通り宿題のポエムを提出してきた。

 単純計算で90にも及ぶポエムが果たしてどんな内容だったか。とりあえずサムネイルを見ていただければ、なんとなく想像はつくと思う(内容の興味がある方は各自ご覧になって欲しい)。ちなみに向かって右端が日比野さんである。

 好物のラーメンになるとInstagramで1000字単位の投稿をするなど、元々文章力の高い人で、「ポエム」と言われたらきちんとポエムとして仕上げてくるところにも驚く。1〜2音の韻を踏みながら、思ったこと、感じたことを打ち明けるスタイルはラッパーのリリックを聴いているかのようでもあって、特に装飾性の乏しさ、時として深く心に突き刺さる言葉の重さはTHA BLUE HERBを彷彿すらさせる。

 その中でも、動画の最後で日比野さん自身が仰っていた言葉が印象に残った。佐久間さんとの会話も含めて引用。

佐久間 でもさ、これ(※反省ポエム)書くようになってから自分を見つめられて弱いところもわかるようになったんじゃないの?
日比野 本当に、見つめ直すことができるようになって、最初の方とか収録で毎回泣いてたんですけど、本当強くなったって(思います)。
佐久間 じゃあ、継続だね。

(動画より引用者書き起こし)

 おそらくだけど、宿題を出した佐久間さんも、全くの計算なしに「反省ポエムを書け」と言ったわけではないのかなと思う。元々は大家さんとのYouTubeで、作詞家の秋元康さんが指原莉乃さんにしたアドバイスのエピソードを聞いた影響もあるとは思うのだけど、元々メンタルケアに対して強い関心を寄せているのが佐久間さんだ。著書にもその言及があり、仕事でメンタルがやられてしまったというラジオリスナーには前向きで丁寧な応援メッセージを送り、会社員時代には精神的に参ってしまった後輩社員を立ち直らせてきた「逸話」もある。

 メンタルケアの手法として日記をつけることはよく知られた手法である。業界屈指のエンタメマニアとして有名な佐久間さんだったら、「17歳のカルテ(Girl, Interrupted)」(1999)も観ているかもしれない。この映画も、精神疾患を患い、入院した主人公が社会復帰を目指す中で、「書く」という行為が重要なプロセスとして位置づけられている。

 メンタルケアのみならず、芸能界、特にお笑い界でも「書くこと」の意義は大きい。南海キャンディーズの山里亮太さんの(現在もつけていると言われる)ノートの存在は間違いなく山里さんをタレントとして飛躍させるきっかけとなったし、パンサーの向井慧さんがつけていた黒いノートは佐久間さんがプロデューサーを務める「あちこちオードリー」で話題となり、一時期向井さんのトレードマークですらあった。

 例を挙げればきりが無いけど、書くことが日比野さんのメンタリティを救っていることは間違いないらしい。もちろん中には「しくじり先生」に出ていた兒玉遥さん(元HKT48)のように、ノートを書きすぎることでかえって自分を追い詰めてしまったケースもあるみたいだけど、少なくとも日比野さんの現状には当てはまっていないようである。

 もちろん、一連のポエムに関して言えば書くだけで終わりにしても良いとは思うのだけど、個人的にはこの文章・文章力をどう持っていくのか、そのへんにも興味を持っている。続ければ続けるほど、磨かれていくことだけは間違いないと思う。
 一つの方向性として、「日比野さんがグループの歌詞を書く」というのも全然ありなんじゃないかと思っていた。もちろんすぐにとは言わないし、最初からすぐにモノにできるようなものでもない。ただ、最後の歌詞じみた「反省」を聞いていて、この人の言葉はいつか、自分の経験・気持ちを歌い上げることで、同じような境遇にいる人を救えるようになるんじゃないか。

 もちろん、どうするかを決めるのは最終的に日比野さん自身ではあるけど、もし彼女が本格的に作詞に取り組むようになったら、かつてオーディションきっかけで本格的なお笑いネタに取り組み始めた齋藤有紗さん(サムネイルの左から2番め)みたく、なんだかワクワクすることが起きるんじゃないか…そんな気がしていた。

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