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『ナイトメア・アリー』読書感想。


見世物小屋でマジシャンとして働く、聡明かつ野心のある青年スタンが読心術を手に入れたことをきっかけに奈落の底に落ちていく。
人の心を操る方法を身につけ、次第に傲慢になっていくスタン。
まやかしの万能感に翻弄される青年の姿が痛ましい。

読心術という諸刃の剣で人の心を読むことで、意識的に閉じていた自分の心も開かれてしまい、トラウマが噴出。
受け入れる器の仕上がっていないスタンの精神は徐々に崩壊の一途を辿る。

それに気づき、導火線に火をつけた心理コンサルタント・リリスの悪女っぷりが素晴らしいけれど、彼女もまたどこか痛々しい。
自分が騙した年寄りの富豪と事もあろうに結婚。
そこまでして手に入れたいものとは何なのか。
金に対する異常な執着心に狂気を感じた。
彼女もまた何らかのまやかしに囚われていたのではないか。

後半のアル中になり、転落していくスタンの描写が生々しくて怖い。
お酒が嫌いになりそう…

題のナイトメア・アリー(悪夢横丁)通り、悲鳴を上げたくなるような悪夢を延々と彷徨っているような、鬱小説だった。

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