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『TOKYO!』映画感想。

ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン電話ジュノ、それぞれの監督の東京のイメージが的を得ていて面白かった。
日本的イメージのキーワードが随所に散りばめられているので、それもメモしておきます。


『インテリア・デザイン』ミシェル・ゴードリー
“管理社会“”上昇志向への崇拝“
映画監督の彼氏アキラと共に上京したヒロコ。
彼氏を献身的にサポートするが、周りからは頑張りが認められず「志が低い」など侮蔑され、心が病んでいく。
ある日自分の胸がぽっかりと格子状に空いていることに気づき、パニックになる。
胸の穴から始まり、足は木の棒に、最終的に椅子へと変化したヒロコは、文字通り”人を支えること“という役割を担うことで、ようやく自分の居場所を見つけることができた。

専業主婦にぐさっと刺さる短編だった。

ミシェル・ゴンドリーから見た東京が正に1984的ディストピアで、日本人目線の郷愁フィルターがない状態での姿を見せてくれるのがまず面白い。
それに対して、細々とした諸問題を解決してくれる縁の下の力持ちに対する思いやりのなさ。
それは今エッセンシャルワーカーに対する態度にも繋がっている。
更に、気になったのが芸術に対する視野の狭さだ。
映画監督など肩書きのある人が芸術を披露するという段取りがらないと芸術を汲み取れない民族性と言えばいいのか。
ヒロコのしていたコラージュだって素晴らしかったし、生活の中の芸術を汲み取れない頭の硬さが日本人の短所として外国の方は捉えているだろうと感じた。





『メルド』レオス・カラックス
“河童““外国人への強烈な排他意識“マスク“死刑““オウム真理教““原爆“
潰れた片目、左に反り上がった赤髭の怪人メルドがある日突然マンホールからやってきた。
地下の塹壕後から偶然に大戦時代の遺物の手榴弾を手に入れたメルドは大量の手榴弾を無差別に投げつけ渋谷の街に大惨事をもたらす。
裸で花に埋もれ、キリストのように眠っているところを捕らえられたメルド。

彼に事情聴取するため、彼と同じ言葉を話す、同じく片目が潰れ、赤髭が左に反り上がった兄らしき弁護士が日本に来日する。
2人にしか伝わらない、ボディーランゲージ過剰な会話を見ている日本人たちのおっかなびっくりな表情は多文化を受け入れる土台のみすぼらしさへの揶揄なのか。

メルドと同じ赤髭という特徴に狙いをつけ鬱憤を晴らす民衆の安易な差別意識、オウム真理教との関わりなど、
ブラックユーモアたっぷりのニュース報道も面白く目が離せない。

とりあえず、マスク、麻原彰晃、差別意識、死刑、後、ゴジラ(原爆)がレオカラックスの思う日本の特性だということがよくわかった笑

民衆の過剰さや生々しさが随所に出ていて滑稽で面白かった。





『シェイキング東京』ポンジュノ
“引きこもり““アンドロイド““地震““セカイ系“
10年間引きこもっている男・香川照之は生活用品など調達のため、毎日宅配を受け取っていたが配達員とは絶対目を合わせないよう気を配っていた。
しかし、ある日ひょんなことから配達員の顔をまともに見てしまい恋に落ちてしまう。

心の揺れが地震にダイレクトに繋がっていくセカイ系的世界観。

配達員は体にボタンがついた美少女型アンドロイド・蒼井優。

翌日、彼女が引きこもってしまったことを彼女の夫から聞き、いても立ってもいられず、10年ぶりに外に出る。

外から見た自分のうちは雑草にまみれ、人の住む形相ではなくなっていた。
それをバツが悪そうにチラリと見る様子に、引きこもった理由が見えてくる。

彼が引きこもって10年。
彼の知らない間に他の人間もまた引きこもってしまったのだ。
人と触れ合うときの因果でどうしても反射鏡のように自分のことが見えてしまう。
自分を見たくない、誰からも評価を下されたくない、だからみんな引きこもってしまったのだ。

ラスト、2人の心の触れ合いから生じる地震が何か起こりそうな予感いっぱいでこちらの胸もドキドキする。
蒼井優の表情も良い。




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