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負ける技術、間違う力、頭の中身が漏れ出る日々

片付けトントンで働く前は、ある大企業に勤めていました。

17年間も働いていたのですが、ある日のこと、突然仕事がつまらなくなってしまったのです。めちゃくちゃな働き方をしていたので、ひょっとしたら軽いうつだったのかもしれません。

妻に「やる気がなくなったから、会社を辞める」と言うと・・・

「あなたの好きにすれば」

給料もそれなりだったので、普通だったら「いったい、これからどうするつもり!あんた!」と言われそうな場面ですが、妻が反対しないのは最初からわかっていました。

週末の掃除当番を勝手にやめるのは絶対に許されませんが、そういう重大な選択をする時は、悩んだ末のことだから尊重しあう、という暗黙の了解があったからです。

辞表を提出してしばらくすると、上司が家まで来ました。

「こんなに良い会社を辞めるのは、もったいない。世間はそんなに甘くないぞ。それに、辞めると、子どもにいい服を着せられなくなる。」

めちゃくちゃ働いてきたので、これ以上に世の中が厳しかったら死んじゃうなと思っていたら、同席していた妻が突然、こう言い放ちました。

「子どもにいい服を着せられないかどうかは、あなたにはまったく関係のないことです。つまらないことを言っていないで、早く帰ってください。」

上司が帰った後、「あの人、何にもわかってないね、ぎゃははは」と笑っていました。

最高の妻です。

このようにして、私は晴れて自由の身になったわけですが、いつまでも自由を謳歌しているわけにもいきません。

夫婦で話し合った結果、将来のために、妻は医療系の専門学校に通うことになり、私は今の会社で働き始めました。

その当時の仕事は、ビンや缶などの回収。

めちゃくちゃハードな肉体労働で、ムキムキになってくるし、ビールはうまいし、子どもと遊ぶ時間もたっぷりあるし、悩みごとも少なくなって、家の中がとっても明るくなりました。

唯一、悩みがあるとすれば、お金のこと。

当時、貧乏のことなどを書いて、新聞や懸賞エッセイに何度か掲載されたことがあります。それを読んで、テレビ局からもオファーがありました。面倒だったのでお断りしましたが、あの時テレビに出ておけばネタになったのにと、ちょっと残念な気持ちです。

それにしても、妻が専門学校を卒業するまで貯金がもつかどうかは、なかなか大きな問題でした。

子どもの服は、兄の娘のおさがりか、保育園のバザーで買った服だし、上司の言ったとおり、いい服を着せられなくなっている? ひょっとしたら、私たち家族って、どこか間違ってる?とも思ったのでした。

そんな時でも妻は、「お金ないね、やばいね、ぎゃははは」と笑っていました。

妻の明るさに、何度救われたかわかりません。

・・・

私は、本でも元気をもらっています。

今日は、そんな本たちをご紹介させてください。


負ける技術 カレー沢 薫(著)

まず、タイトルが素晴らしいです。

「考える技術」とか「伝える技術」とかいうストレートなタイトルの本よりも、自分には「負ける技術」のような本が似合っている気がする・・・

そう思って読み始めましたが、どうも様子が違います。

本書の『負ける技術』というタイトルは完全に後付けで、別にクールでスタイリッシュな負け方を伝授するものではない。それに結論から言うと負けるのに技術はいらない。私ぐらいの達人になると、呼吸をするがごとく負けているし、歩いた後には300個ぐらいの敗北が転がっているのだ。
あまりにナチュラルな負けっぷりに、勝ったほうも勝ったと気付いていないだろう。今すれちがったそこのあなた、今私に勝ちましたよ!

よく見ると、著者名が「カレー沢 薫」となっています。

どんなペンネームだよ。 この時点で、自己啓発本ではないことに気が付くべきでした。

人間誰しも「普通はいやだ」と思ってしまう時がある。そしてその願いはたいてい「 普通以下になる」という形で叶えられる。私もまさにそれで、個性的なデザイナーズブランドの服を買い、さらにそれを自己流コーディネイトした姿は当時80近かった祖母に、「 そんな格好で外に出るのか」「 チンドン屋か」と大絶賛された。

読み手を選ぶ文章です。

ぶっとんだ展開についていくことができれば、あなたも、この本に勇気をもらえるでしょう。


間違う力 高野 秀行(著)

高野 秀行さんは、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットーとしているノンフィクション作家です。

この本を書く時、高野さんが知り合いの編集者に相談したら、こんな返事がかえってきたそうです。

「高野さんの本は、文章がどうのとか構成がどうのという以前に、『 初手から間違っている』というのが特徴です。 ただ、あまりに高野さんが真剣に間違った方向に進んでいくので、だんだん読者は何が正しいのか間違っているのかわからなくなり、読み終わったあとではちょっと世界が変わって見えるというのが醍醐味なんです」

この本には、高野さんの体験が詰まっています。

のちに、佐藤さんは八年で大学を卒業し、船舶関係の一般企業に就職したが、会社員になってからもちょくちょく早稲田の私のアパートに現れた。
あるときは朝九時ごろ、「今日は会社に行く気力がない」とスーツ姿でやってきた。「会社の上司が厳しい人でな」と言う。佐藤さんほど根性のある人でも出社拒否になるくらい、会社は大変なところなのかと私は驚いた。
もっとも私の驚きをよそに、佐藤さんは真剣に本をひろげて読んでいる。
「なんですか、それ?」と訊くと、彼は「電気の本だ」と答えた。ぱらぱらとめくると、電気は古代エジプトで静電気が発見されたのが最初だとか書いてある。
どうして佐藤さんは電気の勉強なんかしているんだろう。船関係の会社にそんな知識がいるんですかと訊いたら、佐藤さんはこう言った。
「いや、上司に『おまえ、パソコンを習え』って言われてな。コンピュータのことを知るにはまず電気のことを知らなきゃいけないと思ったんだ」
古代エジプトからいったい何年かけたらパソコンの使い方に行きつくのだろう。
佐藤さんの上司に深く同情すると同時に、就職後もまったく変わらぬ原理主義ぶりに深い感銘を受けたものだ。

この本を読んで、私は常識にとらわれすぎているし、行動範囲や考え方が狭すぎる。もっと自由であるべきだ、と思いました。

そうしなきゃ、もったいないです。


頭の中身が漏れ出る日々 北大路 公子 (著)

やばいです。笑えます。

「人生でもっともいたたまれない三十秒」とはどんな時間か。「完全防水」という携帯を手にした時、人はどんな行動をとるべきか。料理で失敗するたびに現れる「脳内姑」との壮絶な戦いとは。40代独身、趣味昼酒。札幌の実家で愉快な両親と同居するキミコが、ぐうたらな日々に頭の中で思うことを、漏れ出るように綴っていくエッセイ集。奥の深いくだらなさに心の底から笑いがこぼれ、何となく元気になれるかも。解説の椰月美智子さんも「なにこれ!? 笑わない自信があったのに……」と、身悶えするほど大爆笑。

「人生でもっともいたたまれない三十秒」下のリンクから「試し読み」ができます。

よろしかったら、お楽しみください。

こちらもおススメ!

お試しで読める「乳の立場がない」が最高です。

くだらなさって、奥が深いんだな、元気になるんだなって、新発見ができます。


まとめ

まとめるのが、なんだか難しくなってきたので、偉人の言葉でごまかします。

アインシュタイン
唯一の救いは、ユーモアのセンスだけだ。これは、呼吸を続ける限りはなくさないようにしよう。

ガンジー
もし、私にユーモアがなければ、これほど長く苦しい戦いには耐えられなかったでしょう。

ぎゃははは

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