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「本阿弥光悦の大宇宙」展を見て

ついに昨日から「本阿弥光悦の大宇宙」展が東京国立博物館にて開催されました。
昨年より楽しみにしていたのでようやく、といった気持ちです。
なぜそこまで楽しみにしていたかと言えば、以前手に入れた「刀掛け」が本阿弥光悦作と伝えられている為です。
果たしてどこまで本当なのか、真実は分からないものの作風の共通点など個人的に見出せればと思い楽しみにしていた次第です。

本阿弥光悦作と伝わる刀掛け

・本阿弥光悦について

本阿弥光悦(1558~1637)は織田信長などが全国統一を図った激動の時代に生きた人物で、刀剣鑑定や研ぎを家業とする本阿弥家に生まれ、書、陶芸、茶、漆芸など様々な芸術分野で名を馳せた数寄者でもあります。
今回の「本阿弥光悦の大宇宙」展ではそんな本阿弥光悦の様々な作品に加えて、光悦が信仰したという日蓮法華宗の有様を合わせて捉える事で、本阿弥光悦という人物を総合的に見通そうというのがテーマのようです。

・いざ、東京国立博物館へ。

特別展は本館の横で行われています。
「始めようか、天才観測」
BUMP OF CHICKENの「始めようか、天体観測」をもじったものですね。
何となくこのポスターを製作した人が同世代な気がします。

展示会2日目という事もあり混雑していると覚悟したのですが、以前の国宝展の時とは異なりガラガラ。
展示品がゆっくり見れたので有難いです。

さて肝心の展示であったが、非常に難しい、というのが率直な感想であった。私の想像なので合っているかは分からないが、この展示は恐らく法華信仰を如何に理解出来るかというのがポイントなのではないかと感じた。
これが本阿弥光悦のいわばベースになっており、そこから積みあげるように、漆芸、刀剣、書、茶碗、と見て周る事で光悦という人物像が初めてうっすら見えて来るのではないか?(個人的な想像であるが)

まずこの法華信仰の理解の部分で躓いた&漆芸や書、茶など全て知識の浅い状態の私にとってまさに全てが「点」として独立しており、それらはさながら宇宙の中に点在する星のよう。
そこにポンと放り出されたような感覚に陥った為難しいと感じたのだと思う。反対にこれが1つに繋がった時、というのは実に気持ちが良いものなのかもしれない。

残念ながら今回は第1章の法華信仰で躓いたので光悦について全く理解が出来ぬまま光悦の展示品を個として観察したに過ぎない。
故に大した感想も持てなかったわけであるが、作品を個として見ても心にくる作品というのは有ったのでいくつか拙いながら紹介したい。

・蒔絵と文字

今回のポスターにも出ている舟橋蒔絵硯(すずり)箱。
面白いのが鉛を文字の形に成形して硯箱に貼り合わせているという点だろうか。

(画像出典:e国宝 舟橋蒔絵硯箱

今回の展示を通して思ったが、光悦は俵屋宗達が描いた絵に文字を当てる、など「絵と文字」という組み合わせが度々見られ好んでいるように感じた。
花唐草文螺鈿経箱も同様に文字が中心にありその周りを囲うように螺鈿がちりばめられている。

(画像出典:本法寺x



桜山吹図屏風に至っては古今和歌集の和歌を一句ずつ色紙に書きそれを屏風に貼り合わせているという斬新さ。

(画像出典:桜山吹図屏風 文化遺産オンライン

こうした書が多用されている点は光悦が書の分野でも高い評価を得ていた現れなのかもしれない。

文字については太い字と細い字を使いわけ、空間を贅沢に使いバランスよくまとめている様子など素人ながら見て取れた。なぜそのように使い分けているかまでは見えてこないが、何か理由があったのだろう。

刀剣は刀身が7振(観世正宗、城和泉守正宗、北野江、短刀長重、後藤藤四郎、鳥飼来国次、花形見兼氏)、拵1(花形見兼氏)、鐔1(埋忠明寿)の展示。
数は多くないものの名品揃い。
特に花形見兼氏の地刃の明るさは素晴らしいものだった。
拵については、光悦の作と断定できるものが少ないからか、展示はこの1点であったが、拵は本来当時の技術の粋を尽くして製作されたはずで、この制作に光悦が関わっていたはず、と考えるのは自然な事ではないだろうか。
蒔絵コーナーで光悦と五十嵐家との関係性について触れられていたが、拵製作と光悦の関係性についても今一歩踏み込んでほしかった。

埋忠明寿の鐔が展示されたのは意外で嬉しかったが、確かに埋忠明寿と同時代の人物で更に埋忠家と本阿弥家は協働を通して繫栄している。
更に埋忠明寿の腐らかし法により出た鐔の皺と黒ずみは俵屋宗達の「たらしこみ」を想起させるとのこと。
確かに雰囲気が似ている気がする。

先に塗った墨が乾かないうちに異なる濃度の墨を加え、先の墨と混じり合うときにできる自然な形や、濃淡によって陰影や立体感を与える描き方を「たらし込み」というらしい。
(画像出典:俵屋宗達の水墨画の秘密2 “たらし込み”って?)
これは別の展示で出ていた埋忠明寿の鐔。耳あたりを見ると黒ずみが確認できる。

…!!

今回唯一、点と点が繋がった気がしたタイミングな気がした。
なるほど、同時代に生きた人物と作品を並べて見る事で繋がりを見出す事が出来るのか。


・茶

まさに理想とする形と色を見る事が出来た。
刀の時もそうであったが自分でも自分の好みが分からない時がある。
刀の時はとにかく数を見ることで段々と自分の好みが分かってきたが、今回はずばり欲しい形と色が目の前に。

それが以下の飴楽茶碗。
光悦が懇願されて作ったものらしい。

うむむ…

この色、形があれば是非欲しい。
茶器を探す旅に目標が出来たのは嬉しいの一言。

(画像出典:光悦飴楽茶碗 鶴田 純久の章お話



・終わりに

という事で光悦の大宇宙に放り出され光悦を理解する前に力尽きたが、それぞれの作品を鑑賞するだけでも非常に楽しめた。
もう1度期間中再度観に行こうと思う。

終わりにはグッズショップも。
よく見る金属の薄板プレートの刀と、それ用の刀掛けがありました。
刀掛けは初めて見たような…(気のせいかもしれませんが)。

今回も図録だけ買って帰りました。
暫く余韻に浸りたいと思います。
展示は2024/3/10まで行われていますので興味ある方は是非行かれてみては如何でしょうか!

ちなみに刀掛けが本阿弥光悦作かどうかについて。
今のところ共通点は見い出せていないです。
またゆっくり展示を見て考えようと思います。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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