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銘に十字架を持つ刀

1549年(天文18年)フランシスコ・ザビエルが日本に上陸。
キリスト教を日本で布教して以降、多くの人が入信しました。
1612年と1613年(慶長17,18年)に江戸幕府が禁教令を出しキリスト教が禁止されるまでの間、キリスト教と共に入ってきた西欧の芸術や文化は日本の工芸品などにも影響を与えたといいます。

そしてキリスト教が禁止された後も信者は隠れてキリスト教を信仰していました。その人達を隠れキリシタンと呼びますが、そのような人々はキリスト教の十字の文様や意匠などを、一見分からないように隠して鐔などに表すなどしていたようです。
そんな鐔については以前以下のブログにまとめた通りです。


そして先日刀展示ケースを見に三刀流さんが作業場までいらっしゃったのですが、その際に何と銘に十字架の切られた刀(隠れキリシタン銘)を持ってきて下さり拝見させて頂きました。

豪壮な体配

聞くところによると寸法は「長さ2尺2寸4分、反り2.2cm、元重8㎜、先重7㎜、元幅3.5cm、先幅3cm」の様です。
健全で手に持つと非常にずっしりします。

研ぎ減りも見られません。

日本刀銘鑑を見ると元禄頃(1688~1704年)の刀工のようです。

「日本刀銘鑑」より

そして面白いのが銘。

「雲州住藤原冬廣」と切られています

なんと「冬」の字に十字架が隠されているのです…!
これは面白い。

確かに普段は柄に納まっているのでこれであれば他者からキリシタンである事がバレる事なく、それでいて信仰心を表す事が出来ます。
今まで鐔に隠れた十字架を刻んだような意匠などは見た事がありましたが、このように銘に十字架を切るのは初見で非常に興味深いものでした。

因みに茎裏を見ると南蛮鉄で鍛えた事が分かります。
この少し前に活躍した越前康継もよく南蛮鉄をで用いているように、このあたりの時代は南蛮鉄が流行っていたのかもしれません。


そして拵も南蛮の一作拵です。
刀身とも相まって元から付帯していた拵なのでしょう。

鐔は鳳凰と龍がデザインされているように見えます。
鉄はカサカサしたような風合いですが、側面にも鋤出し彫がなされていて凝っています。
南蛮系の鐔は凝った物が多い印象がありますが、こうした外国の物なども当時は沢山日本に輸入されその風変わりな鐔を好む武士も多かったのかもしれません。
栗形は何と龍が立体的に…!個人的に一番魅力に感じた点。
大型の目貫は龍になる前のみずちでしょうか。


という事で早速ケース(卓上刀箱 箔漆仕様)にも飾って頂きました^^

刃文は小丁子に見えました。
その上に金筋や砂流しなどの働きも見てとれました。
有名な刀工では無いですが個性が出ていてこうした刀も見ていると面白いです。



今は新規製作をお断りしていますが、折角なので「刀展示ケースmoku」にも展示頂きました。
これを見ながらお酒飲んだりしたら最高ですねぇ!なんて話で盛り上がりました。酔っぱらってもケースなので安心です。笑


・終わりに

あ、そういえばハバキも大名行列の意匠が施されているようで面白い物でした。人々の表情も優しい顔をしているように見えます。

今回、この十字架を持つ刀を拝見させて頂き、改めて細部までこだわって自分に合った一点物の刀身と拵を携えるという武士の気概のようなものを実感できましたし、何より当時の武士の思想が伝わってきやすい刀でした。
一体どんな人がこの刀を携えていたのでしょうね。
想像するのも愛刀家冥利に尽きるというか、面白いです。
改めて作業場までわざわざ足を運んで下さりありがとうございました!

刀展示ケースをご覧になりたい方は、事前に連絡頂いた上で今回のように作業場(最寄駅:横浜線大口駅)にお越し下さっても良いですし、以下のお店に行って頂いて見て頂く事も可能ですのでよろしければどうぞ!


今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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