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小説 【 あるハワイの芸術家 】 -4-

翌週の土曜日、ジェシーはホノルル空港あらためダニエル・K・イノウエ国際空港からハワイ島行きの便に乗った。所要時間は約50分。そのあいだにクリスとのことを思い出した。

   ***

ジェシーがクリスにはじめて会ったのは4歳の時。クリスはケイトの再婚相手トーマスの双子の弟だった。トーマスとケイトに連れられて行った地元のレストランでクリスは待っていた。ボックス席から立ち上がって近づき「はじめまして」と笑い、

「弟のクリス」と振り向いて紹介したトーマスとそっくりでジェシーは混乱した。

「ケイトとジェシーだ」「はじめまして」「よろしく」

紹介と挨拶をする3人を見上げ、

「よろしくジェシー」としゃがんで笑いかけたクリスに、

「なんでー」と指さした。

「驚いてる」とトーマスは笑い、

「双子なんだ。双子ってわかる?」とクリスは聞き返し「一緒に生まれたからそっくり」と教えられても、

「知らない」

ジェシーはそれまで双子を見たことがなかった。

大人3人は笑ってボックス席に向かい、その夜のディナーは楽しかったのを憶えている。全員がずっと笑顔だった。


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