見出し画像

「NPOにこそ、データサイエンティストが必要だ」若手研究者が、カタリバを選んだわけ

スタートアップをはじめとするIT企業で活躍するイメージの強いデータサイエンティスト。しかし、カタリバではあるひとりのデータサイエンティストが活躍しています。

彼の名は、池田利基(いけだ・としき)。大学時代より心理統計を学び、大学院ではNPOの効果検証を手がける任意団体を設立。NPOでのデータ分析に向き合い続けてきた若きデータサイエンティストです。そんな彼がカタリバを選んだ理由を探ると、NPO全体が抱える大きな課題も見えてきました。

なぜNPOを選んだのでしょうか?

僕の中でNPO以外の選択肢はなかったです。僕自身がNPOなどの支援が必要な家庭で育ったため、いずれは自分もサポートする側に立ちたいと思っていました。

2020年末、筑波大学大学院の博士課程在学中に、NPOによる教育・福祉支援事業の効果検証を手がける任意団体「Datacast」を設立。2021年は日本中のNPOにお声がけをした結果、いくつかの団体と契約を結びデータ面から活動をサポートしていました。

博士課程の研究に対する賞の贈呈式にて(右が池田)
博士課程の研究に対する賞の贈呈式にて(右が池田)

「データサイエンティストとしてNPOへ関わる」という方法に行き着いた理由を教えてください

大きく分けて2つの理由があります。ひとつは僕が大学、大学院で心理統計やデータ分析を学んできた素養があったからです。

もうひとつは、自分が見てきたNPOの現場が全くと言っていいほどデータドリブンではなかったから。

大学在学中、自治体の居場所支援事業で働いていたときに、ふと「この国の支援事業はどれだけ成功しているのだろうか」と感じました。

しかし、調べても問いに答えられるだけのデータは見つかりません。職員の方たちに聞いても「え、……効果検証って何?」という状況。居場所支援事業であれば、子どもの自尊感情の上がり幅を知ることが効果検証の第一歩なのですが、使われている質問票も非科学的で、言葉を選ばずにいうと思いつきでつくったような項目が多く見られて。

課題感がどんどん大きくなると同時に、「NPOや行政にデータサイエンティストがいないことが原因ではないか」と考え、自ら団体を立ち上げることにしました。

立ち上げた団体の活動は順調だったのでしょうか?

先ほど「いくつかの団体と契約して」とお話ししたように一定の支持は得られましたが、収益性は高くありませんでした。市場規模が小さく、外部に委託するだけの予算がない団体が多かったので、安定した収益を確保することはかなり難しかったです。

ちょうどその頃、カタリバを知りました。規模は国内有数だし、僕がもともと関心深かった生活困窮世帯の支援や居場所の支援、探究学習、校則見直しといった幅広い事業を展開していた点に惹かれ、選考を受けることにしました。

現在の仕事内容について教えてください。

経済的に困難を抱える家庭に対してオンラインでの伴走と学びの機会を届ける「キッカケプログラム」に在籍し、子どもを伴走支援するチーム、保護者を伴走支援するチーム、ヤングケアラーの子どもを支援するチームの効果検証をそれぞれ担当しています。

何か成果は出てきているのでしょうか

ざっくりとですが、キッカケプログラムへの参加によって子どもの自尊感情が上昇したことはわかってきています。

ただ、明確な成果が出るまでは1年以上はかかるんですよね。だから、僕が講じた施策がどこまで実ったかはまだわかりません。もうしばらく注視していきたいと思います。

結果が出ないことに対して、周囲からのプレッシャーはありませんか?

それがないんですよね。現場のメンバーからも「失敗もチームとしての財産になるから」と声をかけてもらえるので、やりがいがある。日々の仕事で「カタリバを選んでよかった」と感じています。

一緒に働き始めてからわかったのですが、実はカタリバはデータドリブンな組織です。データによる意思決定が進んでいるし、現場のメンバーもデータを扱うことに抵抗がない。週に1回開催しているキッカケプログラムのミーティングで子どもたちの出席率をチェックする際も、全体のパーセンテージだけではなく、中学生や高校生のように属性別で追いかけています。

しかも、それぞれで原因を考えて「次はこうやって誘ってみよう」や「先週の施策の結果は……」とPDCAを回していますからね。「意外」と言ったら失礼かもしれませんが、驚いたポイントです(笑)。

「キッカケプログラム」運営スタッフたちとの集合写真(2段目右から2人目が池田)

データサイエンティストとして、今後挑戦したいことはありますか?

いくつかあるのですが、そのうちのひとつは「NPOで働くデータサイエンティストを増やすこと」です。

NPOには僕のようなデータサイエンティストがまだまだ不足しています。内閣府が「社会的インパクト評価」を推進していることもあり、NPOが事業を効果検証することが求められるようになってきているのですが、残念ながら必要な水準に至っていないのが実情です。

ですから、まずはNPOで働くデータサイエンティストを増やすべきだと思うんです。NPOのデータドリブン化を進めることで、それぞれの支援がもたらす効果を社会に残していきたい。そして、将来、僕らより下の世代が「何か支援したい」というタイミングに立ったときに、より質の高い支援を行うことができるように支援メニューから選べるようにしたいし、同じ失敗を踏まなくてもいいようにしていきたいと思います。

そのためには何が必要なのでしょうか

NPOにデータサイエンティストが活躍できる場があることを知らない人も多いですし、なんなら「NPOって何?」という人もまだまだ少なくありません。データサイエンティストとしてのキャリアの選択肢にNPOが加わるように発信し、同時に「NPOの仕事はおもしろそう」と感じてもらえるように成果も残していきたいですね。

原文:田中 嘉人
写真:本人提供

※noteマガジン「はたらく人」は、カタリバwebサイトに掲載している「カタリバマガジン」の記事の一部を転載しています。

▼記事全文を読む
データサイエンティストがNPOで得られる面白さ、データサイエンティストとして他にも今後挑戦したいことなど、noteで紹介しきれなかった詳細はぜひこちらから全文をご覧ください。

▼採用情報を見る
カタリバで働くことに関心のある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。

▶︎カタリバでは、ご寄付にて子どもたちを応援いただける方を募集しています。詳細はこちら


この記事が参加している募集

社員紹介

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!

最後まで読んでいただきありがとうございます!Webマガジンはこちら▼