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中国企業の支払期限の長さと巨大市場から淘汰されていく人達

光栄にも中華のスーパースター華村さんから書いてくれとご依頼を頂いたので、今回は中国企業の支払期限の長さについてちょっと書いてみたいと思う。

元記事は下記をご参照頂きたい。

売掛金回収の難しさと、いかにして少しでも焦げ付きを減らしてお金を回収するかについては、少し前のNOTEに書いているので、そちらも是非目を通して頂きたい。

サイト(支払期限)の長さがネックになることがしばしばある中国ビジネス


実際に中国に住んで、中国企業と取引を始めるとすぐにその洗礼を浴びることになる。とにかく、支払期限が長い。これは中国に限らず、日本の電子メーカーであったり、斜陽産業でもある繊維業界のサイトはとにかく長い。

サプライヤーは前金100%要求してくるし、断るとあっそ、となり相手にされなくなり、仕方なく前金払ったのはいいけど、客からの支払い時期が月末締め翌月末起算、180日後現金、手形とかざらにある。(うちの会社で言うとサイトが225日)NOTEにも書いたが、締め日から300日後手形という取引も実際にあった。1年後に本当に入金がされるのか正直誰も分からない。下手したら担当の駐在員は1年後にはいないかもしれない。その人の引継ぎをさせられる新しい駐在員にとってはたまったもんじゃない。

仕入は前金、売上はつけ、みたいなイメージだ。となると多くの企業で問題となってくるのが社内金利だと思う。会社によってその設定数字は違うと思うが、概ね2〜3%辺りではないだろうか。金額がでかくなると金利がかさみ、PL(損益計算書)に効いてくる。それはまるでボディーブローのようにちょこちょこ利益をとられていってしまう。部内の利益のみで収まる話であればよいのだが、会社の規模によっては会社全体の資金繰りに影響を与えることもある(本社からの送金が必要であったり)為、いかに早く入金してもらえるかという問題については、多くの日系企業が悩みの種としていることである。

中国企業によっては、財務に従事している人間に対しての人事考課の項目に「如何に支払いを引き伸ばし、会社の資金繰りに貢献をしたか」というものがあり、良い人事考課を得る為、果ては更なる給料アップを狙う為、サプライヤーへの支払いをひたすら伸ばす輩もいる。これは、民営であろうと国営であろうと、どこの業界にもこういう人達は一定数いる。物を売る立場である我々からするとこれはたまったもんじゃない。

期限が来た際、しっかり支払いをしてくれればよいが、客先の担当も入れ替わりが激しく、前任の人間が決めたことだから私は知らない、だから払わないというケースも頻発する。売る側も買う側も人が流動しているので、サイト(支払期限)が長いと、相手もこちらもそのこと自体を風化してしまって記憶の彼方に消え去ってしまうことが多い。で、売る側の財務が帳簿をつけあわせていくと未回収の金額がこれだけあると、営業お前ら何やってんだとすごまれ、仕方なく客先を訪問しお代官様お支払いはいつになりますかおねげーしますだと懇願するも、分かった払うから安心してくれと言われその気になって帰ってくる。しかし、お金は依然として支払われることはない。

どういうことかと相手先を問い詰めるも、俺はラオバン(社長)だからそんな支払いのことは財務にまかしてるからあいつらに聞いてくれと。財務の人間をとっつかまえて早く払ってと話をするも購買からはそんな話微塵も聞いていないと言う。購買に聞くと、前の担当者から何も聞いていないから知らない払えないと言われる。要はたらいまわしにされているのである。彼らは往々にして「意図して」そういうことを行う。

正直この手の人達は彼らなりに自社に対して良かれと思ってやっていることなので、ある程度理解は出来るが、あまりにも長いサイトに、支払いを何度も引き延ばすようなことをしていては普通は誰もついてこなくなるのだが、如何せんそこは中国という巨大な土地には巨大な企業が無数あり、彼らは購買側から見れば圧倒的に優位な立場にある為、売る側が頭を下げて低利益で、購買から製造部門の責任者等多数の人に「贈り物」をしなければ商売をとるのが非常に厳しい側面がある。製品代を支払ってもらうために購買や財務に「おねがい」して支払い時期を早めたという話も聞いたことがある。もうこの負のスパイラルから抜け出すのは厳しい感じがする。


日系企業における中国市場でのプレゼンスの低下が心配


アップルがiPhoneをこの世に出したとき、日本企業も含め多くの人達がアップル如きが携帯?などと思ったかもしれないが、その後iPhoneはあっという間に業界地図を塗り替えてしまった。iPadが発売されると個人向けPCは売れなくなった。車で言うと中国では急激にEV化が進んでおり、一気に他国や日系のメーカーはおいて行かれそうになっている。他業界から参入したニューカマーが、市場を一気に獲っていってしまうということが世の中ではもう常態化しつつある。

今後ますますあらゆる分野で中国の「内製化」が進むことは容易に想像できる為、かなりの多くの外国企業が中国市場からレッドカードを出され退場していく可能性が高まってきている。日本がウリにする「技術」だっていつまでもあぐらをかいていられない状況になってきた。いつ抜かれてもおかしくないと思っている。


今後中国市場にどう向き合っていくのか、非常に悩ましい問題である。日本企業の優位性がなくなった時、そのことを考えるだけでも恐ろしい。


今日はここまで。では、また。


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