katoshi

ソフトウェアエンジニア/システムアーキテクト/博士(工学)。システム開発の現場で培った…

katoshi

ソフトウェアエンジニア/システムアーキテクト/博士(工学)。システム開発の現場で培った経験を活かし、生命の起源のメカニズムや生命現象の本質、さらには知能や社会の構造を探求します。 【記事まとめ用サイト】 https://katoshi-mfacet.github.io/ja/

最近の記事

  • 固定された記事

生命の起源の原理:進化のバブルが弾ける前に

私はシステムエンジニアとしての観点から、生命の起源についての個人研究を行ってきました。無生物から自然の作用のみでどのように生物が誕生するのかを、システムの観点から考え続けてきました。また知性の本質についても、同様に、あるいは並行的に考えてきました。 この記事の前半では、化学物質や地球環境や神経細胞についての具体的な話から離れて、システム理論的な観点から私が整理してきた、生命の進化や知性の学習の本質的な原理について説明をします。そして記事の中盤では、その原理が、生物の細胞と知

    • 並列と逐次の変換:フィードバックループの多元性

      会話型の人工知能の仕組みについて考える中で、私はその中にあるニューラルネットワークの部分ではなく、フィードバックループ構造と逐次的な処理に着目するようになりました。 そのフィードバックループ構造と逐次的な処理が何を意味し、どんな効果を生んでいるのか、そして、なぜその構造でなければならないのか、ということを考えていました。また、それが人間の思考の方法と類似していると言えるのかどうか、という観点からも考えています。 その考察の中で、私は、こうした人工知能や人間の思考は、並列的

      • 知能と生命:最小トランスフォーマーモデル

        会話型AIや生成AIが話題になってからしばらく経ちます。各社の生成AI開発競争は激しくなっていますが、現在もOpenAI社のChatGPT4が先進的な位置を保っているようです。 このChatGPTの最後のTは、Transformer(トランスフォーマー)の頭文字であり、現在の会話型AIのキーとなっている技術です。 このトランスフォーマーは、昔から人工知能技術の要素技術として知られているニューラルネットワークを利用しており、そこに含まれているニューロンの数が飛躍的に大きくな

        • 役割分担の原理:知性と生命の海の中で

          人工知能について考えていると、知性というものがどういったものかということを考えることが多くなります。 知性の性質を紐解こうとすると、無機質な物理法則の中で起きる通常の出来事と、知性によって行われることにどういった差があり、どういったメカニズムよってその差が生まれるのかという事を考えることが近道に思えます。 ■連続的な役割分担 このアプローチで知能について考えていくと一般的な物理的な現象と比べて、知性は連続する時間の中で、処理すべきこととその実行順序を自ら考えて、実際に実

        • 固定された記事

        生命の起源の原理:進化のバブルが弾ける前に

        マガジン

        • システムアーキテクチャから探る生命の起源
          63本
        • 未来の寓話シリーズ
          14本

        記事

          未現実の無力:透明な知性の増幅法

          人工知能技術の高度化は、やがて人間の知性を越える知能を生み出すと考えられています。人間の能力では解決できなかった問題を解決する鍵になるという期待が込められている一方で、未知の脅威も懸念されています。 ここにはメリットとリスクをどう捉えるかという問題が横たわっていますが、人工知能によるリスクの性質上、通常の技術や出来事のリスクとメリットの捉え方では不十分です。しかしながら、そのリスクを訴える声はある程度大きいものの、人工知能の専門家の間でも、メディアにおいても政治リーダーにお

          未現実の無力:透明な知性の増幅法

          AIエージェントの組織化

          OpenAI社のChatGPTに代表される会話型AIが注目を集めています。私はシステムエンジニアの観点から、会話型AIを使ったシステムが、社会に大きなインパクトを持つと考えています。 ChatGPTのような会話型AIは、人間の作業をサポートするエージェントとして活用されるようになると考えられています。私もプログラマとして、会話型AIを使ったエージェント型のプログラムを作って、その可能性を探っています。 この記事では、会話型AIを使ったエージェントプログラムについての概説か

          AIエージェントの組織化

          処理プロセスとしての生物、知能、情報システム

          生命の起源についてシステム工学の観点から考える事を、私は個人研究のテーマにしています。 生物の細胞は、化学物質の集合であり、高度な化学反応の連鎖によって生命活動が維持されています。この記事では、化学物質の連鎖を、コンピュータや脳の情報処理と同じように、処理プロセスであるという視点から眺めることで、生物と知能、そして情報処理システムとの類似点を探ります。 ■化学物質のネットワーク 容器に入った溶液の中に様々な化学物質が溶け込んでおり、そこに外から熱や光などのエネルギーが供

          処理プロセスとしての生物、知能、情報システム

          生命のリドルと思考のリドル

          皆さんは、自分の思考を止めてみようとしたことはあるでしょうか? 禅寺で行われる座禅は、目をつむって思考を止めることで、雑念をなくす修練をしていると聞いたことがあります。実際に、私も思考を止められるのかと試したことはありますが、非常に難しいことに気がつきます。 生物は、一度生命維持のための機能が止まってしまうと、再び動き出すことが出来ません。また、脳の思考は意図的に止めることは困難です。このため、生命と思考には動き続ける性質があることになります。特に、生命は止まってしまうと死

          生命のリドルと思考のリドル

          マイクロエージェント:進化と知的創造の計算機科学

          生命はどのような仕組みで機能しており、無生物の環境からどのように誕生したのでしょうか。完全に解き明かされていませんが、そこには生物を構成する化学物質による化学反応や、化学物質や生物の進化の積み重ねがあり、それを解き明かしていくことが、生命を理解する鍵になるはずです。 私はシステムエンジニアとして、この基礎となる化学反応と進化の仕組みを適切に模倣するシミュレーションシステムを実現するための基本設計について考えています。化学反応を直接的にシミュレーションすると膨大な知識とプログ

          マイクロエージェント:進化と知的創造の計算機科学

          生命・知性・社会性の共通原理:アイデンティティのネットワーク

          生物、知能、社会など、自律的に変化しつつ秩序を形成していく仕組みには、システムとして共通の性質があるように思えます。 これらのシステムの共通性について考えていく中で、私は当初フィードバックループの性質に着目していました。フィードバックループにより、より適応性の高い変化が残り、適応性の低い変化は消失することで、複雑な変化の中で秩序が形成されると考えられるためです。 これに加えて、アイデンティティという性質も、こうしたシステムにとって重要であると考えるようになりました。アイデ

          生命・知性・社会性の共通原理:アイデンティティのネットワーク

          生命の起源:交換型の自己維持システムの視点

          地球上に生物がどのように誕生したのかは、科学が探求している大きな謎の一つです。私たち人間も生物ですが、その他の動物、植物、バクテリアや細菌も、全て生物です。 生物は親になる生物から生まれる事と、生物の多様な種は元になる生物種から進化して来たことは良く知られています。しかし、最初の生物、そして最初の生物種は、その元になる生物や生物種がいなかったはずです。では、無生物の環境に、最初の生物や生物種がどのようにして登場したのか、それが生命の起源の謎です。 私は個人研究として、生命

          生命の起源:交換型の自己維持システムの視点

          人生の構造:自由な中間点と価値基盤

          人生にはゴールはありません。 もしゴールだと思っていることがあったとして、そのゴールまでたどり着いたら、残りの人生はどうなるのか、ということを考えると、そのゴールも人生の中の1つの通過点に過ぎないことが分かります。 では最終的な死がゴールなのでしょうか。それは時間の流れという意味での終着点ではありますが、私たちが目指して進んでいく先という意味でのゴールとは異なります。私たちは死を目指して生きているわけではないからです。 このように考えると、人生にはゴールはないということ

          人生の構造:自由な中間点と価値基盤

          加速する変化の果てに:社会的ケスラーシンドローム

          変化が強調される時代に私たちは生きています。変化しなければ生き残れないという言葉が、特にビジネスの世界を中心に日常的に語られています。同時に、科学技術の進歩は私たちの生活にも絶え間なく変化をもたらし、多くの人が変化することを自明の事のように受け止めています。 もちろん、私たちは科学技術のイノベーションや、社会変革の積み重ねから多大な恩恵を受けており、現代社会はこれらが無ければ成立し得ません。一方で、変化そのものではなく、変化の速度に着目すると、それが加速していくことに私たち

          加速する変化の果てに:社会的ケスラーシンドローム

          ソフトウェア構造の基本概念

          ソフトウェアの開発に興味を持って学習してみたいと考える人にとって、ソフトウェア構造の基礎概念を把握しておくことは重要です。 ソフトウェア開発は分野やスコープが多様で、分野やスコープによって異なる技術や前提知識に基づいた解説がなされることが多くあります。この記事では、そうした分野やスコープに依存しない本質的なソフトウェアの基本概念について説明してみたいと思います。 ■ソフトウェア構造の基礎概念の概要 ソフトウェアの基本要素は、データと処理手続きです。そして、データを入れる

          ソフトウェア構造の基本概念

          進化する複雑なシステムの概論

          生物や知能は、複雑なシステムを持ち、時間と共に進化していきます。 そこには物理的な身体や脳といった形の進化がありますが、その目に見える進化の裏側には、情報と処理という概念が存在しており、それらの自己増殖や淘汰が進化の鍵を握っていると私は考えています。 この記事では、こうした複雑なシステムを、情報と処理という抽象的なものの進化という視点で捉えつつ、それを実現する物理的な情報の記録媒体や処理の実装装置との関係を含めて考えていきます。 この考えを進めていくと、これらの集合がア

          進化する複雑なシステムの概論

          利己的な情報と処理の集合体モデル

          社会は複数の個人の集合です。その中で、複数の個人がお互いに様々な形で影響を及ぼし合っています。 この社会におけるやり取りと社会の構造や性質を分析するために、私はこれまでに二面モデルとCAOモデルという二種類の社会モデルを考えてきました。 この二種類のモデルは分析の目的や観点が異なりますが、共通的な性質や構図もあります。この共通的な部分を整理して取り出すことで、社会のような複雑なシステムに共通する分析モデルと、その性質の理解を深めたいと考えています。 ■社会の二面モデル

          利己的な情報と処理の集合体モデル