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リワークプログラムとは

私は、活躍支援型メンタルヘルス対策として、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援を進める中で、メンタルヘルス不調で休業した方が職場復帰し活躍し続けるため、リワークプログラムは決して外せないプログラムだと考えている。うつ病等のメンタルヘルス不調で休業すると、精神医療の専門まずは仕事から離れ、のんびり過ごしてもらう。体調がよくなってくれば、徐々に日常生活のリズムを意識、仕事ができる生活に戻していき、仕事に向けた準備を進める。しかし、日常生活と就業生活では、心理的にも、身体的にもその負担は大きく違う。就業生活においても、安定して働くために、段階を踏んで準備を進める必要がある。うつ病等のメンタルヘルス不調は、初期の症状が軽くても再発・再休業しやすいと言われており、単に就業生活の負担に耐えられるリズムを確立するだけでなく、継続して就業するための準備を専門のスタッフ共に進めるのがリワークプログラムである。
リワークプログラムは、実施主体等の違いによりいくつの種類があるが、それは別の記事で紹介する。


どんなことをするのか

リワークプログラムでは、複数名のメンタルヘルス不調で休業している方が一緒にプログラムに参加することが多く、互いにコミュニケーションをとることを求められることも多い。
プログラムを提供する施設等の違いはあるが、多くの場合、一般の労働者の就業時間に準じて、平日の日中にプログラムを行っていることが多く、最終的には就業している時と同じように、週5日終日、プログラムに参加することが求められる。多くの施設では、軽い運動をするプログラム、認知行動療法などの心理療法やアサーションなどのコミュニケーションスキルなどを学び実践するプログラムに加え、ビジネススキルを磨くプログラムなどが提供されることもある。また、自分が不調に至った背景や、自分自身の人生を振り返るプログラムもある。それぞれのプログラムでは、専門的にトレーニングをうけたスタッフの支援を受けながら、他の利用者と一緒に実践することもあり、その中で、違う視点から意見をもらったり、自分自身の課題に気づくことも多い。具体的な内容は、それぞれの施設で異なるので、直接問い合わせていただきたい。

利用期間・費用について

リワークプログラムに関する疑問として、よく挙がるのが、利用期間、そして費用である。
利用期間については、障害者職業センターでは8~14週間(センターによって異なる)、日本うつ病リワーク協会に会員施設での調査では平均 186.7 日(SD149.0)という報告があり、私が休業者の方に説明する時は、「最低3か月、平均6か月くらい」とお伝えしている。体調が改善して、今すぐにでも職場復帰をしたいと思っている方にとっては、長くて待ちきれないとおっしゃる方も多いが、私は「復帰しても再発すれば、同じくらいかそれ以上の期間を要することにになる。5年後、10年後の視点で考えてみてほしい」とお伝えしている。
費用については、障害者職業センターでは無料、医療リワークは、健康保険および自立支援制度をうければ、1日700~1000円程度だが、年収によって月額で上限(年収833万円以下なら1万円/月)が決められている。障害福祉サービスの場合は、年収により0~37200円/月となっている。企業等が独自で設定する職場リワークは設置する企業によって異なる。この違いは、実施主体の財源による違いからくるものと考えられるが、実際の休業者にすすめる際には、プログラムの特徴や立地等で決まることが多く、私の経験では、選択する決め手になることはあまりない。

リワークプログラムの現場は活き活きしている

リワークプログラムの話を聞いて、多くの方は、「暗いところ」「作業所のようなところ」など、マイナスのイメージを抱く。しかし、実際に現地に行って見学したり、参加したりすると、それが大きく覆される。リワークプログラムに参加している人たちは、メンタルヘルス不調で休業しているとはいえ、日常生活がほぼ問題なく送れる状態に回復しているし、頻繁にコミュニケーションをとることが求められ、コミュニケーションがとりやすい雰囲気が醸成されているので、通常の職場よりにぎやかで、活き活きしていると感じることさえある。実際、私が初めてリワークプログラムを見学させていただいた時に「普通の人ばかり。この人たちは何で職場に戻れないんだろう」と感じたのをよく覚えている。
リワークプログラムの利用を検討している方は、ぜひその目で見ていただくことをお勧めする。また、人事や産業保健の立場で支援されている方にも、ぜひ見学をお勧めしたい。施設によっては、プログラムそのものの見学は制限していることもあるが、どんな場所で、どんなスタッフ、どんな思いで運営されているかを確認するだけでも、印象は大きく変わるはずである。

メンタルヘルス不調は、ネガティブな出来事とは限らない

冒頭にも述べたが、リワークプログラムの利用は、メンタルヘルス不調者が職場復帰後に、本来の力を発揮して活躍するために、大きな意味を持つものである。私が関わった方々も、利用開始前は、しぶしぶとか、仕方なくという感じだったが、利用してみると、「利用してよかった」と言われる方ばかりだ。メンタルヘルス不調を患うということは、その人の仕事やキャリアだけでなく、その人の人生そのものにおいても大きな意味を持つ出来事だと考える。しかし、その意味は必ずしもネガティブなものではない。向きあい方によっては、その人生においてポジティブなものになりうるものであり、その価値を見出すきっかけになるのが、リワークプログラムの利用だと私は考える。だからこそ、メンタルヘルス不調になった方には、是が非でもリワークプログラムを利用いただきいと考える。



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<著者について>
野﨑卓朗(Nozaki Takuro)
 
日本産業衛生学会 専門医・指導医
 労働衛生コンサルタント(保健衛生)
 産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 非常勤助教
 日本産業ストレス学会理事
 日本産業精神保健学会編集委員
 厚生労働省委託事業「働く人のメンタルヘルスポータルサイト『こころの 
 耳』」作業部会委員長
 
 「メンタルヘルス不調になった従業員が当たり前に活躍する会社を作る」


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