見出し画像

赤ちゃんだった息子をのぞきこんだ気持ちと、19歳の息子を見守る気持ち

 テレビで赤ちゃんが映っているだけでだらしない笑みが漏れ、涙腺も刺激される。条件反射みたいなもんだ。
 息子にもこんなちっちゃな頃があった。こんな動きをして、こんな表情していたなあ。
 
 
 19年前の12月に、息子が生まれた。

 私は幼い子供が特に好きなわけではなかったし、どのように接したら良いかもわからなかった。息子ができるまで、赤ちゃんを抱っこした経験もない。
 結婚してからの5年半は子供がなかなか授からない苦しみもあったけど、夫と二人の生活も楽しくて、それが変わってく不安も強かった。

 そろそろかなって予感のあった夜は「これからチビさんが生まれても、変わらずによろしくね」と涙が止まらなかった。
 ホルモンのせいもあったんだろうか。
 あの頃は、悲しくもないのに泣いてばかりいた。私が。

 産んだら、緊張がほぐれて泣いて。
 顔を見たら、可愛くて泣いて。
 入院中のベッドで、心細くなって泣いて。
 夫が息子を抱っこしながら、ずっと話しかけている姿に笑い泣いた。夫が同じ顔の小さいヴァージョンに話しかけている。
 可愛い。入院中から我が子が一番可愛い。
 聞いてはいたけど、確かにそう思っちゃう。

 「お世話になりました。ありがとうございました」

 大好きになったその看護師さんも「かわせみさん、もう退院かあ。寂しいって思っちゃう~」って言うからまた泣いた。

 一週間ぶりの外の空気は、キッと体に厳しく冷たくて雪が降っていた。

 夫が運転する車の中で初めてのベビーシートに横になって、強く目をつぶっている赤ちゃん息子をのぞきこむ。

 大丈夫かな。

 これからずっと。大丈夫かな。この子も。私も。

 また涙が出てきたのを、バックミラーで夫に気づかれる。
 「泣いちゃうの?」と聞かれちゃって「心細い。大丈夫かなぁ」と正直に気持ちを言ってみる。

 「大丈夫だよ。大丈夫にしなくちゃ」。

 そうだな。
 この可愛い赤ちゃんと、家庭を作っていくんだ。

 夫と二人、5年過ごしてきたけど、これからは三人。

   *

 そう思ったあの日から、今月で19年も経ったんだ。
 今年からまた二人の生活が中心になった。

 息子はそんなに丈夫なわけでもないし、身の回りにはたくさんの出来事がふりかかるけれど、何とか大丈夫だった。

 あの時の車の中で、顔をのぞき込んだ時と同じような気持ちで、今もパソコンに映る息子をのぞきこんでしまう。心配な気持ちは結局そう変わらないままだ。
 もちろん今は平気な顔で。むしろだらしなく笑っている私の顔が息子に並んで映っているのが目に入るけれど。

 これからも、この子が心穏やかに過ごせますように。

 息子の学年だけは19歳で成人を迎えるんだよな。来年成人ですって。信じられない。赤ちゃんだったのに。

 

#エッセイ #子供 #息子 #19歳 #赤ちゃん #泣く #心配 #誕生月 #成人

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。