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伝えようとして丸くなってしまうストーリーを

 ストーリーは丸くなってはならない。なぜなら丸いストーリーは面白くないからだ。しかも、それ伝わらない。ストーリーは、何かを伝えるべきものとしてこの世に生まれている。それにもかかわらず、丸いストーリーはその宿命を全うできない。

 そもそも丸いとは何か?それは尖っていないということだ。複雑でなく、込み入ってなく、わかりやすく、それはすんなり飲み込みやすい形をしている。だから、丸いということそのものは悪いことではない。むしろいいことかもしれない。この世にはたくさんの人々がいて、色々な価値観があって、そのできるだけ多くの人に受け入れてもらうには丸さは必要だからだ。

 ストーリーの本懐が、伝えることならば、むしろ丸いことは正しいように思える。それが丸いことに、なんら間違いはないはずだ。

 でも残念なことに、丸いストーリーはむしろ伝わらないのである。面白さが少ないばかりか、それは本来すべき機能を果たせなくなってしまう。尖りのない丸さとは、飲み込みやすいかわりに印象の強さを捨てている。それは通り一遍の、よくある形をしてしまう。どこかで見た表現、筋、展開、成り行き、そんなものたちを抱えている。
 そんなストーリーは、確かにたくさんの人に受け入れてもらえる可能性が高い。でも同時にそれは、たくさんあるストーリーの内の1つになってしまうことを忘れてはいけない。

 だから受け入れやすい形をしていることは、忘れられやすいということなのだ。それが他と違ったとしても、人々は受け入れた部分しか覚えていない。印象に残らないことが、引っかからないことだからである。
 でもそれでは、ストーリーとして、何かを伝えることとしての意義がない。少なくとも欠けている。それでも伝わる部分はあるのだからと、丸くされるストーリーは多い。

 もし、そのストーリーに伝えたいことがあるのなら。想いが強いのなら。むしろ伝わりやすさを最大限に考えることはやめて、伝わりにくそうでも、尖る方がいい。ユニークな部分が押し出されたストーリーは飲み込める人が多くはないかもしれないが、同時に強烈な印象を残す。そしてそれは伝わりやすいということだ。ストーリーの目的。伝えることを達成できる。

 丸さは伝わりやすさ。しかし印象のなさ。ストーリーは自らのために、その形をきちんと考えられていなければならない。

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