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日本における移民の居場所

コンビニの店員が外国人であることは、東京では珍しくない。
肌感覚として、東京は2000年くらいから増えてきたと思う。
2015年くらいから、地方都市でもこの傾向が増え始めた。福岡のローソンにはインド人が働いていたし、札幌には台湾人がいた。僕は2023年11月から群馬の高崎に拠点を移したのだが、中国系やベトナム系の店員さんをよく見かける。
以前、東京拠点の近所のコンビニ店員さんと話をしたことがある。行きつけの居酒屋で偶然見かけたからだった。彼はカザフスタン出身で、渋谷の大学に留学中だそうだ。

「コンビニバイトきつくない?」
「まあ、きついけど、楽しいです」
「もっと他に仕事あるのに。留学生だから優秀でしょう」
「いやいや。コンビニは勉強になります。語学とか、文化とか」
「ほほう。そうかー。頑張ってね」

その5年位後、奇しくも僕はニューヨークで留学生となり、彼の言っていることが身に沁みて理解できた。そして、当時の僕の薄っぺらい質問は黒歴史となった。

留学生はビザの関係上、労働時間が限られる。アメリカでは週20時間までで、しかも1年目は原則労働をしてはいけない。特例として大学内施設(生協とか)での労働は許される。日本だと週28時間までOKで、夏休みなら40時間働ける。
しかし、どこでも働けるわけではない。なにしろ語学が下手くそなわけで、頻繁に会話が必要なバイトは雇ってもらえないし、尻込みする。結果として、自国民のスタッフが多い飲食店とか小売店とかで働くことになる。会話力がついてくると、レストランとかバーで働く。
とはいえ、バイトしてる苦学生はそれほどいない。ていうか勉強が大変すぎて、そんな暇は殆どない。正確に言うと、語学レベルがあれなので、課題の理解にネイティブの倍以上時間を費やすし、予習しないと授業がわからない。発言しないと評価が下がるので想定質問も作ってクラスに挑むのだ。僕は45歳にして貧乏学生やってたが、リモートで日本の仕事を手伝って糊口をしのげたのでアメリカでバイトはしていない。でも、やっとけばよかったと思う。

ともあれ、日本に来ている留学生のバイトはこれと似たような感じであろう。お金はない。語学力も乏しい。勉強はネイティブより大変。少しでも稼ぎたいが勉強時間は確保しなければ。会話力も上げなければ。ていうか、雇ってくれるところがそんなにない。
結果、コンビニがベストとなる。午前中や深夜シフトも組めるので授業と被らないし、会話はある程度テンプレ化されている。コンビニ的には人手が足りないのでウェルカムである。勤労留学生の経済状況は切実な問題で、かつ正規国民にはわからない制約がいっぱい課されている。
仕事なんか選べないし、自己の能力は自国の半分以下になるくらい大変である。

そういう苦悩が理解できると、なにかしてあげたいなと思う。

「タフだと思うけど、楽しんで。きっとこの経験は財産になるから。」

そして、彼らが言語や日本的振る舞いへの同調を気にせず、リラックスできるバーやカフェなんかを提供してあげたいな、とも思う。

ニューヨークの日本酒バーはそんなところだった。日本人が運営してるけど、地元の移民がいっぱいいた。色んな言語が飛び交っていた。そういう場所が日本に増えていけばいいな。

エイリアン(他国民)って、居場所が少ないんだよね。それを飲み込める場所が出来るのが、日本の飲食業界の次のフェーズだと思う。

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