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Andrew Kovacs Studio: week_6

6週目。シラバスにはmidterm reviewとあったが、いつも通りゲストの方が来てレクチャー、その後エスキスという流れ。今週もなんだかんだほぼ徹夜になってしまった。模型作るの時間かかる……。

前回はこちら。

01. Allan Wexler

今週はAllan Wexlerという人のレクチャー。建築とアートのバックグラウンドの人で、レクチャーの前には、自分を「クライアントのいない建築家」と言っていた。また、パーティで自分の仕事を説明するのが難しいので、簡単な自己紹介を考えた時には「アーティストの体の建築家」と言っていたそう。Allanの作品は家具スケールのものが多いが、確かにアーティストと建築家、彫刻家と建築家のように、それぞれの作品に対して二つの視点があるようだった。

そして、Allanが学生の頃はベトナム戦争や大量消費の時代で、これ以上建築を作る必要があるのか、建築によって人々に気づきや議論を与えることができないかと考えたとのこと。speculativeという言葉も出てきたように、スペキュラティブデザインにも近いものがいくつかあったりした。

Hypar Roomという作品は、床面が曲面になっているが、家具がその局面に合わせて調整されており、その機能を保っているというものである。Allanはここで、「建築家は問題を解く、芸術家は問題を作る」と言っており、まず曲面を置き、それを解くために家具を設計したということだ。
以前に安原さんが「設計はボケとツッコミみたいなもの」と言っていたのを思い出した。学生の課題、特に卒業設計においては、社会的な課題の発見や設定にも評価が及んでいるように思うが、アート作品でもこのような課題と解決のようなプロセスがあるのは面白い。

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fig. 1 Hypar Room

In the Shadow of the Windは、風力発電機のある時間の陰が実際に浮き出ているような作品である。ここには、この風力発電が一日に発電するエネルギー量に等しい石炭が埋め込まれているらしい。風力発電によって化石燃料が封印されているようで面白いと同時に、人々の活動を誘発することもできている。

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fig. 2,3 In the Shadow of the Wind

また、90年代のマンション建設ラッシュや大きな家に対しての批評がCrate Houseである。これは食寝分離する前の日本の住宅の形式にインスパイアされたもので、必要な時に必要なものを取り出して使い、空間に可変性を持たせる試みである。時に寝室、時にキッチンへと機能が空間へ重ね合わせられ、空間が拡張性や広がりを感じるものとなる。モバイルハウスやキッチンカーのような様子もあり面白い。

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fig. 4 Crate House

Two Too Large Tablesも、二つのパビリオンではあるが、異なる振る舞いや様相の重ね合わせを感じる。椅子の配置が同じで、その椅子が屋根を支えている。屋根の下の椅子とテーブルのある椅子に交互に座ると、屋根とテーブルを行き来している感覚になるようである。

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fig. 5 Two Too Large Table

作品ごとにその時の時世が映し出されていると同時に、空間や意味が二重性を持っているように感じた。建築家と芸術家といった役割的な二重性も感じられ、二人が協働しているように思われる作品が多かった。また、家具スケールの作品がほとんどで、その二重性が身体性を持って感じられるように思った。人々の振る舞いに寄与するパブリックアートとして、そしてメッセージを伝えるメディアとしての建築のあり方が実践されている。

02. minimalist or maximalist?

毎回ゲストの方がいらっしゃるので、常にプレゼンを整理して行うようにと言われていたので、今回は最初から全体を説明するようにした。まず今回のプレゼンの内容を簡単に書きながら、反省や補足をしていこうと思う。

銀座には、有名建築家のデザインした美しいファサードの建築が多く存在する。それはVery Big Artと呼べるかもしれないし、public artと呼べるかもしれない。
しかし実際には、それらはブランドのイメージを表象する広告としての役割を担っており、またその巨大さから人々の介入の余地がないのではないか。自分はこれらの美しいファサードをprivate artとみなした。

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fig. 6 銀座の有名建築

前回にもっとanalyticalな視点が欲しいみたいなことを言われたので、いつものようにとりあえず地図を書き、マッピングしてみた。しかしこれに関しては、銀座の連続立面とかを作って、もっとファサードのきらびやかな景観が示せた方が良かったと思う。時間がなく作れなかった、範囲が広く面倒だった。そして意外と世界的に有名な建築家の建築は中央通りに集まっているわけではなく、どこをどう切り取って見せればいいか分からなかった。
何にせよ、銀座の特性をもっと直感的に分かるダイアグラムで説明したい。

一方で銀座では週末に歩行者天国が開かれ、普段は車に占拠されている車道が歩行者へと開かれる。休日の歩行者天国の空間は、パブリックスペースとしての可能性がある一方で、渋谷や秋葉原の歩行者天国に比べて、人々のアクティビティが乏しいように感じる。

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fig. 7 歩行者天国の範囲

そこで、車と歩行者の関係を考えながら、この大通りにpublic artとしてのファサードをデザインすることにした。
銀座の歩道の幅を見ると、大通りに沿った歩道は幅が広く、小さな道ほど歩道の幅が狭い、もしくは歩道がない。大通りでは歩行者と車が完全に分離されており、道路が車に占拠されている。

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fig. 8 歩道マッピング

この図もとりあえず歩道を塗ってみたものだが、車道と歩道の関係をまだ整理できていない。もう少し小さいスケールで見たい。

この大通りは5車線あるので、中央の1車線を敷地として、銀座における歩行者のネットワークを強化しつつ、パブリックな空間を作ることを試みた。

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fig. 9 敷地

長い方は約1060m、短い方は約510mである。提案としてこれくらいのスケールでの提案は良い気がする。外堀通りも割と大きい通りだが、街全体にクロスする感じがかっこいいし分かりやすいと思ったのでそこは外した。

これがマスタープランの一部である。これらの車道の幅は26mと18m、車道は約3mで、それぞれ中央のレーンにpublic artとしてのファサードを設計する。

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fig. 10 平面ドローイング

AndrewのLOS ANGELES ALLEYSを参照しながら(ほぼそのままだが)、前回の模型を使ってこの絵を作ってみたが、割と簡単にかっこよくなったと思う。非常に細いストラクチャーだが、都市スケールでの介入の可能性が示せた。一方で、これがもう少し詳細に見えるとか、密度が見えたほうが強い絵になる気もする。都市スケールでの回遊性も示せたらいいが、一旦はもう少し小さなスケールでも絵を作ってみたい。

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fig. 11 LOS ANGELES ALLEYS

銀座のファサードは巨大すぎて人々が近寄りがたいと感じたので、自分の設計は2mから5mほど、1階か2階程度の高さに抑えた。

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fig. 12 1:200模型立面

そして今週は1:50の模型を3つ作った。その一つは前回の1:200模型の一部を1:50で検討した。これらは8m程度だが、やはりもう少し高さを抑えたほうが圧迫感もなく、人々が親しみを持てると感じた。

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fig. 13 1:200模型立面2

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fig. 14 1:50模型立面1,2

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fig. 15 1:50模型写真1

以下残り二つの模型を紹介して終了。

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fig. 16 1:50模型写真2,3

前回の模型を1:50で作ったら少し背が高く感じたので、2400程度にして、より低くした。これくらいのスケールで道や周辺の建物とどのような関係になるのか考えたいが、周辺は50mくらいの建物もあるので1:50だと難しい。

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fig. 17 1:50模型立面3,4,5,6

模型写真を立面っぽく撮り、寸法を入れてみた。zoomでエスキスになり、模型を直接見せることができない状況ではあるが、1:50で模型を作り、このような表現を駆使していけばスケール感を伝わりやすくなるだけでなく、独特の空気感を表現できると感じた。Andrewにも好評で、模型写真と建築図面的な表現のハイブリッドが良いと言われた。

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fig. 18 1:50模型写真4,5

前回と同様に想定されるアクティビティを表現したが、今回はアクティビティをリストアップしたものは見せなかった。リストと一対一で模型は難しかったが、模型写真ではできそう。やはり活動の多様さや自由さは、量で見せていくのがいいのだろうか。

講評ではまずAndrewに、敷地を見て交差点に何かオブジェがあって、歩行者天国同士をつないでいくのがいいのではないかとコメントされた。交差点に何か作るとなると車をどう整理するのかと思ってやめていた。歩道を空中に浮かせることもしたくないので、細い、薄い構造物などなら可能性があるだろうか。

また、都市スケールと建築スケールの両方でドローイングがあるといいと言われた。どちらもあるにはあるが、同じ形式で違うスケールのものがそれぞれある方が分かりやすいかもしれない。Allanには断面もあると良いと言われた。

そして立面を見てAllanは、すでに複雑な都市に対して、より複雑性を付加するのか、その複雑性についてどう考えるのかと指摘をされた。このファサードを通じて既存のファサードを見た時に、既存の都市の複雑性、豊かさに対する理解を助けるために、シンプルにデザインする方向もあるのではないかということだった。Andrew曰く"minimalist or maximalist?"ということである。

マテリアルの問題もあるように思ったが、やはり今回は1:50で考えていたので、ランドスケープの観点が足りなかったように思う。都市スケールと建築スケールの往復を重ねていきたい。
または都市のコンテクストをどう読み、どのように応答するのか、あるいはしないのかということだと思う。どのようなルールでこのファサードをデザインしていくのがいいのだろうか。

そして最後にAllanが、パブリックアートにはローテクなものとハイテクなもの、安上がりなものと値段が高いものがあると言っていた。若いアーティストはpermanentなものを作らせてもらえることは少なく、安上がりで一時的なものが多いという。シンプルな作り方でできるものも考えたらどうかと言う。来週が締め切りだと思って作ってみるのもいいんじゃないかと言われた(さすがに冗談だが)。例えば足場を使う、プロジェクションなど。


以上が前回レビュー。気づいたらまた更新が遅くなってしまった。平野さんがzoomの録画を共有してくれるので、復習がやりやすくなった分、色々拾えて気になってしまう。次回はもう少し簡潔に、そして早めにまとめを上げたい……。

次回はこちら。


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