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Andrew Kovacs Studio: week_2

Andrew Kovacs Studioの2週目について。
油断するとすぐ時間が経ってしまうが、何にせよ書き残していくのが大事だと信じて書いていく……。

前回の課題が、公共空間の事例収集と敷地候補3つの選定だったので、それについてのプレゼンとディスカッションを行った。
正直に言うと、宿題であったDe-Architectureは全然読むことができなかった。次回までには読み終えたいと思っていたが、今週も無理そう。

どう訳せばいいか迷うところもあり、本郷の図書館に日本語版もあるようなので、来週はそれを借りて比べながら読みたい。次々回までに読むぞ……。

前回はこちら。

01. Pedestrian Paradise

前回の公共空間の事例と敷地選択についてのディスカッションについて。

そもそも公共空間ってなんだろうというところからスタートした。よくある議論として、日本では広場的な公共空間は少なく、道的な公共空間が多い。英語では広場でもplaza, square, parkなどの言葉があるが、日本での広場と言うと駅前広場のように移動のための空間が多く、様々な活動が許容される空間は道に展開されるのではないかと考えた。
なぜ日本では道的な公共空間の方が優位なのかというと、江戸時代までは火災が都市に致命的なダメージを与えるため、火除地として広小路などができたとか、更新が激しいだとかの理由があるそう。

Andrewが公共空間の例として挙げたのは、ゲーリーのディズニーコンサートホール前の広場である。前回の記事にも少し書いたが、ざっくり言うと、ゲーリーの建築を背景に写真を撮りSNSに写真をアップする様子は、建築が広場の舞台を提供するにとどまらず、人々の行動を誘発し、そのアイコンがデジタル空間まで広がっているということだった。

以上を踏まえて、道的な公共空間で、様々な活動が誘発され、デジタル空間まで場所性が拡張されている空間として、自分は公共空間の事例として渋谷スクランブル交差点を上げた。

公共空間の事例について短く文章を書いてくるようにも言われていたので、一応書いたものを以下に記載する。

日本における公共空間は、自由に振舞うことが許される雰囲気のある空間である、と定義できるのではないか。日本の公共空間は、広場的な空間ではなくむしろ道的な空間に展開されてきた歴史がある。道には、店舗や住宅など、大衆の目、他人の目がありながらも雑然としており、様々な活動が許される雰囲気がある。
これは渋谷のスクランブル交差点である。ひとたび信号が青に変わると、あらゆる方向から人々が往来する。中には写真を撮る人や楽器を演奏する人、時にはサッカーボールを蹴って通過する人もいる。スクランブル交差点では、Q-FRONTを中心に、いくつかの大型ビジョン・広告がそこを囲っている。人々の往来と大型ビジョンにより、スクランブル交差点は象徴的で発信力のある公共空間となっている。
さらにこのスクランブル交差点は、二種類の祝祭性を持っている。一つは歩行者天国、もう一つはメディア空間である。歩行者天国により、車に占拠されていた道路空間が人々に開放され、道的な特性を持った広場的な空間が生まれている。ワールドカップやハロウィン、年越しの際には多くの人が集まり賑わいを見せる。メディア空間において、スクランブル交差点のイメージは、instagramなどのSNSに加え、アニメ、映画、VR空間など、様々な形式で再生産されている。コロナ禍で年越しのカウントダウンイベントが中止になった昨年は、バーチャル渋谷に5万人ほどのひとが集まった。
Q-FRONTも渋谷109もそのファサードが巨大な広告掲示板となっており、スクランブル交差点の通行人を観客とすることができ、空間イメージへの没入を促してくれる。これは人々が都市へ積極的に参加する契機を与えてくれているということである。一方で、普段のスクランブル交差点は、信号機によって多くの時間は車に対して開かれ、歩行者には閉じている。

こちらに英語版もあるので、ぜひツッコミをいただきたい。

以上にも書いたが、渋谷のスクランブル交差点は言うまでもなく、イベント時には歩行者天国となり非常に盛り上がるし、コロナ禍の際はバーチャル渋谷が出現し、5万人ほどの人が集まったそう。

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fig. 1 歩行者天国/バーチャル渋谷

また、昨年に公開された『サイレント・トーキョー』では、渋谷スクランブル交差点を舞台にしたいが撮影許可が下りないとのことで、スクランブル交差点がそっくりそのまま栃木に映画セットとして作られてしまった。

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fig. 2 スクランブル交差点のセットとCG合成

他にも、『バケモノの子』や『君の名は』で舞台として登場するなど、そのアイコン性が様々なメディアに拡張している。

通常時にもスクランブル交差点の周りでラップや演奏、撮影、ダンス、ひどいときにはサッカーボールを蹴ってドリブルして交差点を渡る人もいる。
この空間はメディアを超えて、様々な活動を許容、誘発する強いイメージがあると考えた。

特に、歩行者天国が実施されるような広い道路においてこの公共性がありうると考え、敷地候補として渋谷、秋葉原、銀座を取り上げた。

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fig. 3 かつての秋葉原/バーチャル秋葉原

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fig. 4 銀座のブランド店のファサード

秋葉原、銀座では渋谷と異なる点が当然多くあるが、どちらも歩行者天国の際には道路空間が人々に開放され、良い公共空間となっていると思う。
これらの歩行者天国にVERY BIG ARTを挿入することで、さらに人々と公共空間、パブリックアートと公共空間の関係性が新しく築けるのではないかと考えている。

ディスカッションでは、特に渋谷ではアクティビティの誘発が多く、なぜその誘発が起きているのかを抽出すること、想定される活動をリストアップしてそれを誘発するような仕掛けをパブリックアートで提示できると良いという話になった。

渋谷スクランブル交差点はなぜ様々な人が好き勝手な活動をするのか。渋谷の雰囲気と言ってしまえばそれまでだが、例えばハチ公の前で人々が待ち合わせをするのは、ハチ公の像があり、ハチ公という名前、そしてご主人を待っているというストーリーがアイコニックで分かりやすく、手ごろであるからだと思う。像と名前、ストーリーであれだけの人が待ち合わせをするのであれば、パブリックアートでも活動の誘発を仕掛けることができるような気がするし、渋谷のインスタントな雰囲気に合うのではないか。
歩行者天国はパブリックアートでさらに自由に、上手に使いこなされるような気がする。

02. Freestyle Model

後半はAndrewの今までのプロジェクトの簡単な紹介と次回までの課題説明。

前回にも書いたように、Andrewはひたすらに物を収集し、そこから建築を作ろうとする。その手法を課題説明中には"collective way"とか、"freestyle model"と表現していた。コラージュによってできた模型は、コンセプト模型であると同時に、実際にそのまま建てられる可能性もあるとのこと。どちらにせよ、このような手法の方がプロジェクトの雰囲気や感じが伝わる可能性もあるということが大事であるようだ。

これはA+Uの2017年5月号のインタビュー記事にも少し書かれていたが、表現から建築を考えるということだと思う。テイスト、美学、好みなどと様々な言い方があるように思うが、それを正しく表現することに重きが置かれている。建築家がその思想的、社会的、政治的メッセージを発信するような役割を持つことができる手段の進化なのではないか。

自分が卒業制作でAndrewの手法を真似しようとしたのは、メッセージを強く発信したかったからである。当時は表現や密度がまだ甘かったように思うが、この点はある程度できていたのではないか。このスタジオで、かつての卒制の答え合わせも併せて考えたいところ。

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fig. 5 自分の卒業制作 "Whose City Is It?"

加えてAndrewは、単純に模型が好きなような気がした。情報を伝えるメディアとしては、模型はやはり優秀だと思う。例えばライノのモデルを誰かに渡したとしても、カメラ長の設定やアングル、ましてやレンダラーによって同じモデルは変幻自在だ。もちろん自分のイメージ通りの絵を作ったとして、それは違う角度から見たい時に相当な手間をかけて作り直す必要がある。
コラージュによる模型は収集したオブジェクトたちの雰囲気がある。モデリング自体にこの雰囲気を持たせ、様々な角度から見るのはなかなか難しい。
Andrewは模型を上手に撮影し、平面や立面、ドローイングを生み出す。一つの模型から他の絵が生み出されると、その雰囲気の再生産も容易い。模型写真はできるだけ太陽光で撮るのが良いということを言っていた。

次週までの課題は、敷地模型とコンセプト模型。敷地模型は簡単なものでも"atmosphere"が分かるモデルにするようにとのこと。また秋葉原のファサードを印刷して貼ることになりそう。
歩行者天国でパブリックアートだと、ストリートファニチャーとかそういう雰囲気になりがちな気がする。VERY BIG ARTなので、スケールに気をつけたり、機能を決めすぎないとか、雰囲気や自分なりの美しさ、かっこよさを考えて模型を作りたい。


また、今回のエスキスの個人的な感想や反省。

文章を書いていったのでコンセプトは割と伝わったのだが、英語力が足りず、会話のラリーがスムーズでないのが悲しい、議論しづらいと感じた。まだまだ英語力が足りない。あと、文章を書いたのにそれを読まずにその場で考えて話してしまった。言いたいことの表現はあらかじめ頭に入れておくとか、プレゼン練習を英語でもう少ししてから臨みたい。

なんてことを書いているのが日曜日。スタジオ発表は火曜日。
最後の方が少し雑になってしまった。来週はもう少し余裕があるはず……。
模型を作ります。

次回はこちら。


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