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Andrew Kovacs Studio: week_8

8週目。今週はSOFTlabというデザインスタジオを主宰し、YaleやPrattでも教鞭を取っているMichael Szivosと言う人のレクチャーの後エスキス。正直、最近少し迷走しているというか、何をどうすればいいのか分からなくなってきている。収集したものから建築を作る、パブリックアートとプライベートアート、銀座、ファサード、歩行者天国、交通など、テーマが多く整理しきれていないような気がする。ひとまず先週のレビューで言われたことをやって持っていったが……。

前回はこちら。

01. SOFTlab

SOFTlabの作品はディテールが非常に重要で、作りたい形状があった時にそれを合理的に扱うことで、限られた予算でも作れるものを作る。

一つ目に紹介された作品はCHROMAtexという作品。このインスタレーションはインクジェットプリンターで色を印刷した紙をファイルに閉じて、それをつなぎ合わせて形状を作っているという。よく見るとその外側にはクリップが大量についていて、非常に分かりやすい作りになっている。この複雑な形状、色のマッピングはすべてgrasshopperで制御されており、すべてにナンバリングがされている。それによって、低予算でも複雑で奥行きと柔らかさのあるインスタレーションが実現している。
ちなみに形状操作カラーマッピングなどのプロセスがサイトに載せてありそれも興味深い。grasshopperのスクリプトもそのまま載せてあり、ダウンロードもできる。kangarooなども利用されているようだが、なんとこの作品は2010年のもの。rhinoやgrasshopperが今ほど一般的ではなかったことも考えると非常に新しいプロセスだっただろう。

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fig. 1,2 CHROMAtex

二つ目はVentricleという作品。アルミをレーザーカットして構造を作り、そこにフィルムを張って作られたインスタレーションである。形状操作にはまたもやgrasshopperやkangarooが使われているようだが、一つ目のCHROMAtexの技術が踏襲されている。このプロジェクトは予算の都合がついたため、アルミを用いてCHROMAtexよりも強度がある構造を作れたそう。
ゲストレクチャーの先生方はどの方もこれらの作品にはあまり予算がつかないという話をしている気がする。一番の制約はいつも予算である。

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fig. 3 Ventricle

3つ目はSpectral Groveという作品で、再開発エリアの公園の一角に設置されたインスタレーションである。公園の入り口としてのゲートではなく、どの方向からも入口に見え、屋根の下がキャノピーのように居場所となることが意図されている。それぞれの柱の色が屋根部分でランダムに入り交ざるようになっているが、grasshopperのプラグインであるgalapagosを用いて接合部の部品が小さくなりすぎないように、交差部分の角度が鋭角すぎないように最適化されている。また、大量のブラケットのカットやそれぞれの面の色もgrasshopperにより管理されている。

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fig. 4 Spectral Grove

4つ目はNovaというインスタレーションで、周辺の歴史的なコンテクストを覗く万華鏡をアーチ状につなぎ合わせたものである。内側はアルミがダイクロイックフィルムにより覆われてこのような色になっている。ダイクロイックと言えば青木淳のLOUIS VUITTON GINZA NAMIKIと同じである。このパブリックアートがinstagramで多く投稿された様子を見て、SOFTlabもインスタのアカウントを作ったらしい。人々の体験はもはや物理的なものだけではなくなっている。

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fig. 5 Nova

5つ目はMirror Mirrorという作品だが、Alexandriaという街の芸術課(?)からの依頼だそう。その際に、Novaを見せて街のコンテクストを大切にすることが伝わり、選ばれたらしい。しかしMichaelはただコンテクスチュアリズムになるのではなく、街になじむと同時に、街について再考させたり、捉えなおしてもらったりする方法としてのアートとなるようにしている。
この作品は内外面が鏡面になっており、内側はLEDで彩られ、外側は街の様相を反射して映し出す。この丸い形と光は、Jones Point Lighthouseという街にある古い灯台がモチーフとなっている。音が流れてそれに合わせて光が点灯する仕掛けもあるらしい。
Michaelはここで子どもがはしゃいでいるのを見てとても嬉しかったそう。子どもはそのアート作品がどういう意味か分かっていなくても楽しめる、そのような場を作れたというのはパブリックアートとして成功しているのかもしれない。そしてバイオリンを持ってきていた女の子の写真がすごくきれい。

James Winesも子どもの目線に立って考えることも大事だと言っていた。パブリックアートを制作している人には共通する意識なのだろうか。

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fig. 6,7 Mirror Mirror

02. Megastructure

前回のレビューを受け、まずは収集したものをカタログ化しようと、以前のオブジェクトの写真を並べた。今改めてみると、ファサードとして使えるものはやはり少なく、ランドスケープだったり、ストリートファニチャーだったりといった使い方になるものが多い。

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fig. 8,9 収集したオブジェクト

他にも銀座の要素をカタログ化しようということだったが、銀座に行くタイミングが無かったので、googleストリートビューからファサードやエントランスの形などを収集し並べた。ファサードのパースを修正して並べてみると、ファサードのパターンだけを見ても、銀座らしさのようなものが感じられる。

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fig. 10 銀座のファサード

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fig. 11 銀座のエントランス

本当は窓、階段、オブジェ、舗装、植栽など、様々な要素でカタログを作るつもりだったが、時間がなく、ストリートビューからだけだと限界があり断念。その他の要素としてまとめた。窓や階段は特にそれぞれが特徴的なので、デザインの参照としやすいように思う。

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fig. 12 その他の要素、窓、階段、オブジェなど

これらのカタログを参照しつつ、1:50の模型を作った。ひとまず地下と2階を作ったり、青木淳のLouis Vuittonの窓の楕円やあるビルの入り口のアーチなどを抽出したりした。確かに垂直方向の移動があった方が、移動体験や居場所としての空間にバラエティが出る気がする。

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fig. 13 1:50模型写真

その模型を元に前回同様、平面立面断面のドローイングを制作。平面で動線を描こうとしても、階段やはしごがあるとパターンが増える。特に立面と断面が単調でなくリズムができそうで、これがもっと長くなってきた時に効きそう。
しかし前述のカタログが全然できていないので、まだそれぞれのエレメントのバラエティが少なく感じる。階段とか前回と同じ作り方をしてしまったし、使っているマテリアル自体はほとんど変わっていない。少しカラフルになったくらいだろう。

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fig. 14 平面ドローイング

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fig. 15 立面ドローイング

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fig. 16 断面ドローイング

そして周辺のプログラムのリサーチが何もできなかった、というよりどのようにリサーチと表現をすればいいのか分からなかった。1:50と1:1000の往復が上手くできていない。

講評では、都市の複雑性や絢爛なファサードに対して、見つけてきたオブジェクトという、アクセスしやすい安いマテリアルでどのように疑問を投げかけるのかと指摘された。1,2回前からこのような指摘を受けている気がするが、1:50模型のスケールから都市を見ることができていないからだろう。以前に作った1:200模型の立面図を中心に話されることが多い。また1:200で模型を作るか、1:50模型の背景に銀座のファサードを入れるなど、銀座のファサードへの応答を分かりやすく示さなければ……。

また、ただ平面的なオブジェクトを配置するだけではそれはファサードに見えないと言われた。それを通して既存のファサードをリフレームする、見直すようなものであった方がいいとの事。その可能性があるが、まだそれが見えないという……。

そしてこれは理解しきれていないのでそのまま言われたことを書く……。

right now just everything all the time, so maybe your project is a way of like filtering that or I think it's there, I mean it could be in the project. It's just a matter of how you tweak it going forward or how you position it right

常に全てのものがある、というのは、以前にAllanに言われた、minimalist or maximalistということと関連するのだろうか。都市の複雑性があり、それを理解できるものにフィルタリングする装置ということだろうか。

その日は質問するタイミングがなく講評が終了してしまったので、後日Andrewに質問した。すると、大体その解釈は合っていたようだ。そして、それはmegastructureに関連していると言われた。プログラムやゾーニング、歩行者天国などにより現れるメガストラクチャーが、それだけでは何もないが、ファサードやアクティビティなどのオプションが挿入される可能性がある。

"everything all the time or nothing all the time"や、"minimalist or maximalist"という言葉の真意が分からなくなってきたまま、メガストラクチャーとの関連も分からない。既存の都市やファサードは"everything all the time"で、複雑で、メガストラクチャーによりその複雑性がより複雑になったり、単純なものになったりするということだろうか。この装置の挿入による都市の質の変化に言及すればいいのだろうか……。

加えて、アクティビティが組み合わされていない模型の状態でカタログ化されているといいと言われた。今までの模型だとパーツの組み合わせで全体が構成されていたが、先にばらばらの状態でカタログとして見せることで、メガストラクチャーにそれらを挿入するように見える、ということかもしれない。その方が、先に都市への介入としての巨大構造とそこに対するオプションという風に説明がつながるのかも。


今週はかなりよく分からなかった。聞き取りにくい部分があったのもあるが、話が抽象的なこともあり普通に理解できていない感じがする。とりあえずできるものをある程度作ってまた相談したい……。

次回はこちら。


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