見出し画像

#1ここって邪馬台国より前だよね?

僕の名前は浮月茂うづきしげる
昨日まで普通の高校生のはずだった。

得意な科目は物理。
理系科目は全般的に得意だ。
でも歴史などの文系科目は苦手だった。

今日も数学の課題を終わらせたあと、
いつもどおり寝た。

すると夢の中で女神が現れた。
絵画の世界のような女神だった。

後光がすごく眩しくて……
目が開けられないくらいだった。

「あなたにもう一つの人生を与えましょう……。
あなたは学校生活ともう一つの人生を両立できますか?」

「もう一つ? それは二重生活ってことでしょうか?」
夢なのにもかかわらず僕は状況が飲み込めない。

「そう……。あなたはいずれ歴史に残る “大賢人” となるでしょう……。
私はあなたをいざないに来たのです。
どうか引き受けてくれないでしょうか?」

僕は女神の魅力的な微笑みに魅了されていた。

「僕が大賢人? 面白い!
なれるものなら僕がなってやるよ!」

夢の中の僕はやけに気が大きかった。
でもこの言葉で僕の生活のすべてが変わる……。

「まずは全てを受け入れるのです……。
まずはそれからです……。全ては試練……。修行なのです……」

光がすべてを包み込んでいく。
耳がキーンとする……。

気がつくと僕は何もない平原にいた。

「うぅ寒い、え、マジ??僕、全裸じゃん!」
急いで手で股間を隠す。

周りだけじゃなく自分も何もなかった。
すごく風が冷たい……。

「あの女神は……一体、なんだったんだろう……?」

「おい、そこのお前!」

すると髭を長く伸ばした男に怒鳴られた。
獣の皮でできた服だった。

でも服と言ってもバスタオルみたいに
下半身を隠しているだけだ。

「おい!お前、服はどうしたんだ。
こんなところで何をしている」

「え、気がついたら……ここにいたんです。
すみませんが、服を貸してもらえませんか?」
僕はなんとか頼む。

「しょうがないな。うちに来い!」
「すいません……」

僕は手で股間を隠しながら、
髭の男についていく。

それに今は冬だ。北風が強く吹いていた。
……それにしてもこの辺りは何もない。

現実感がなさすぎて、
なにかのゲームの平原そのもののように思えた。
僕はクシャミをしながら髭の男についていく。

…………。

「はぁ、ここが家でしょうか?」
俺は正気を疑った。

「何だ、俺の家が不満か?」
男が凄む。

「いえ、とても立派な家だと思います」
た、竪穴式住居だった……。

しかもそう言えば、
男が持っているモノは石物ばかりだ。
ここは……僕は直感する。

「あの、今はいつ頃ですか?」
「何だ?もうすぐ昼になる頃合いだろ」
「えっと……そういうことじゃなくて……」
「???」

もし僕の想像が正しければ……。
ここは邪馬台国以前の時代だ。

僕は歴史が苦手なので西暦はよく分からない……。
でも、どうやったらそれの確認ができるだろうか……?

男の格好はよく漫画にあるような
原始時代モノそのものだ。

ああ、そうだ!

「あの、青銅のモノってありますか?」
「青銅? 何だ……それは?
俺をからかうのもいいかげんにしろ!」

僕の最悪の想像はあたった……。
確か、青銅がないのは弥生時代以前のはずだ……

ここは……
少なくとも縄文時代くらいではなかろうか?

中学生程度の知識しかない僕でも
なんとなく実感できた。

「すみません。服を貸してもらえますか?」
「ほらよ!」

獣の毛皮と紐を貸してくれた。
どうやらここでの服は毛皮とベルトのようだ。

「こ、これどうやって、着るんです??」
「はぁ? バカか?お前!」
「まさか……その年でおべべを着せてくれなんて言うんじゃないだろうなァ」
「ええ、そのまさかです……」

僕は状況が読み込めてくる。
一応、僕だって現代人なのでこんな服は着たことがない。

…………。

僕は覚悟を決めて髭の男に服を着せてもらう。
なんかスカートみたいで股間がスースーした。

!!!

僕の夢はここで終わった……。
いつもの僕の部屋だ。汗がびっしょりだった。

「はぁ……。変な夢だったな……」

僕は時計を見る。
時間はすでに7時半を回っている。

まずい……。
急いで学校へ行かないと遅刻する時間だ。

僕はパジャマを脱いで制服を着る。
そのときに制服のベルトを見て我ながら苦笑した。

「なんだったんだよ、あの夢は……」

夢のはずなのに……
僕は女神に誘われたことをはっきりと覚えていた。
おっと、そんなことより学校が優先だ。

僕は朝食を食べる習慣はない。
だから着替えたあと顔を洗ってすぐに登校した。

母親はいつも朝飯くらい食べなさいと口を酸っぱくするが、
僕は朝からそんな食欲はないのが日常だ。
だから僕はいつもどおりに登校した。

…………。

予鈴がなる5分前に着席をする。

僕は進学クラスに属している。
将来、大学の工学部に行くつもりで進路を決めた。

高校2年の冬。
早いヤツはもう受験勉強を始めている頃だ。

そんなことを意識しながら
今日もいつもどおりに授業を受ける。

僕は物理と数学に関しては学年トップクラスだった。
先生からの信頼も厚かった。

高校生活は忙しい。
だから授業が終わるまで夢のことは忘れていた。

そして僕は典型的な帰宅部なのだ。
理由は運動が苦手だったから。
しかも文化部はどうも女子臭いという偏見をもっている。

茶道部とかは
おやつ食って……お茶飲んで……
なんとも呑気な部活だから、

一度は入ってみたいと思った事はある。
しかしそういう部活に限って男子部員はいないものだ。

クラスの男には “俺の女自慢” や “脱童貞自慢” を
するやつが必ずいるが……、俺は興味がなかった。

なにせ僕は勉強で忙しい。
女にも興味がないわけではないが……。

顔面偏差値が平均以下な僕には女は似合わない。
……と勝手に自分で決めて諦めていた。

今日も学校に授業が終わって、即行で帰宅する。
今日は塾がある日だ。

僕は勉強に励む
ごく普通の高校生のはずだ。

そうして今日が終わる。
僕は宿題を終えていつもどおり眠りについた……。

でも……
気づいたらまた夢の続きが始まっていた。

僕はどうも現代と縄文時代ぐらいの間で
二重生活をすることになってしまったらしい……。
そしてこれから想像を絶する苦難が待ち受けていた。

私がより長く生き延びるためにサポート下さい。