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#3東の村

今日も僕は縄文時代にいた。
勝也さんの家に居候にさせてもらったのだ。

「今日は東の村へ行く」
「東の村?」

「まぁ、なんだ……。
俺たちの子作りってやつさ……。

子供が出来たら、村に移住できるんだ。
子供を守るために群れるってわけだ。
女たちもいっぱいいるぞ。

……だけど女に手は出せねぇ!
そこにはそこのルールがある。
だから今日はその移住申請のために
東の村に行く。分かったか? 少年」

僕の呼び方が少年に変わる。

「たまには名前で読んでくださいよ。
ウズキって名前教えたじゃないですか……」

「ダメだ。
お前はまだ半人前だからな。お前はお前だ……。
猟ができるようになったら。名前で認めてやる……」

「そうですか……」

しかしまあ……、
縄文時代に移住申請などという文化的なものがあるなんて……。
僕は驚きを隠せなかった。

「まぁこれから一人で生活して女でも探せ。
そしたら一人前になれる」

「あら、料理のできる男は貴重よぅ。
きっとモテると思うわぁ……」

美樹さんが言う。
美樹さんの格好は目のやり場に困る。
服装が……とてもきわどい。

僕はもしかして原始時代の人ならば
信じてくれるかもしれないと思って、
未来から来たことを正直に話すことにした。

彼らはまだそこまでの科学を知らない。
だから……勝也さんと美樹さんは信じてくれた。

「女神ってやつは……すげぇ力の持ち主だなぁ」

勝也さんは女神の方に興味があるようだ。

「……でもあなた遠い未来から来たんでしょう?
なんでそんなに力がないの?」

「僕たちの世界は
文明の力がありますから……」

「ふーん。
使えない男ばかりなのねぇ。
未来の男ってみなヒヨワなのは残念だわぁ。
夢がないわよぅ。ねぇ勝也さん?」

美樹さんは
おっとりとした喋り方をする人だ。

「おう!美樹、俺がいるじゃねぇか。
俺だけを愛せよ。なぁ美樹……」

「分かってるわよ。勝也さん❤」

二人は少しイチャイチャし始める。

「……ということだ。子作り中は
家から出ていってもらうぞ」

「そうですね……。
できることならそうしたいですが……。
僕はこの時代に来て、まだ何も知らないです」

「じゃあ何なら東の村についていくか?
あそこの村長なら面倒見てくれるかもしれねぇ」

素直にありがたい提案だった。
「ああ、なるほど。では僕も付いていきます」

そういうこともあって、
僕たちは東の村に行くことになった。

僕たちはまた歩く。
歩いて丸一日掛かる場所だった。

朝から歩き続けた僕の足は
もうヘトヘトだ。

「夕方には着くぞ。
夜はこの辺りは危険だからな……」

勝也さんは僕を脅かすような声を出した。
(冗談じゃない。獣の餌になってたまるか!)

僕は疲れている足を
引き摺りながら早歩きをする。

そして日が暮れる少し前くらいに
東の村に着いた。

この村はすごく繁栄しているように見える。
いたるところに竪穴式住居があり、
多くの女性や子どもたちで賑わっていた。

「まるでゲームの中の世界だな……」

僕たちは村長の家に向かう。
移住の申請をするためだ。

そして宿屋の代わりに
一晩泊めてもらう場所でもある。

「わかりました。
十月十日とつきとおかまでに家を建てておきますわ。
二人で “仲良く” 元気な子を授かってくだせい……」

村長が居住許可を出す。

「家って自分たちで建てないんですか?」
僕は素朴な疑問をぶつけてみた。

「バカを言え! 大工が建てるに決まってんだろ。
大体、俺たちは木が切れねぇんだ……」

刃物が全て石の時代。
木を切るのは最も骨の折れる作業だったのだ。

とにかく、今日はもう日が暮れてしまった。
ここは明かりのない時代だから、
太陽がないと本当に全てが真っ暗だった。

「まぁまぁ……、訳ありの少年よ、
うちに厄介になっていって下され……。
タダとは言えませんがのぅ……」

村長がほっほっほと笑う。
「あ、ありがとうございます」
(タダではない? お金じゃないよな……)

「俺たちは明日帰るけど
お前は付いてくるなよ!子作りの邪魔だからな」

「はい、そうします」

僕だって
子作りの邪魔をするほど野暮じゃない。

タダとは言えないという
村長の言葉が少し気になったけども、
僕はしばらくこの村で泊めさせてもらうことにした。

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