外出から戻ってくると家の中はスパイスの匂いが跳ねていた。

カレーなどに使う香辛料ではなく
パイなどのシナモンでもない。

なんだろうこれは？
荷物を置いてキッチンカウンターに近づく。
スパイスを凌駕した、なんだかもわっとした匂いも漂ってくる。

ゴーッ
カウンターの上で機械が作動していた。

そういえば
ここ湖畔の家の間借り人でハンターのEが

ムースジャーキーを作る

そう言ってたっけ。

ハンター仲間がムースをゲットしたと言っていたのは数日前。
ムースとはヘラジカのことである（多分・笑）

てっきりハンティングに行ったのかと思ったらまだハンティングシーズンではないとのこと。

なんせムースですから（多分ヘラジカ）巨大で、足一本が軽く私の体くらいはあるという

マジ？

骨付きの足だと150パウンドはあるぜ
kazuより全然大きいだろ？

頭の中でパウンドをkgに換算している間にハンターEは姿を消していた。
彼のハンター仲間が幸運にゲットしたムースを分けてくれるらしい。

しかし、そんなムースの足を一本彼が担いで戻ってきたらどうする？

折しも、カナダの最北東に位置するニューファンドランドに旅している友人から写真が届いた。

友達の家に泊った朝、ふと見たら裏庭にいたの！

まだ子供のムースだろうか。
それでもすでに背後にある納屋に届かんばかりの高さである。

姿を消した翌日、Eは大きなクーラーボックスと一緒に戻って来た。

やれやれ、ムースはすでに解体されカチコチの冷凍肉となっていた。

そして冷凍庫に入りきらなかった肉が生のままなので、傷まないうちにジャーキーを作ると言っていたのだ。

ムースジャーキーの作り方

このスパイスをつけた状態で一晩寝かせる。
そしてこのゴーッ乾燥機の登場であった。

６～８時間、71℃（160F）の熱で乾燥させる。
おかげで湖畔の家はスパイスといまだかつて経験のない微かな獣っぽいにおいで充満💦

朝起きてこっそり乾燥機の引き出しを開けてみると

さらに2時間ほど後に

ジャーキーにしない分はオリーブオイルで炒めてくれた。
牛肉と同じような匂いが立つ。

脂身はほとんどないが、パサついているという感じでもない。
牛肉の匂いに似ているが牛肉の味ではない。
くせがなくて食べやすい。
何度か食べてきたが私の中では高評価。

しかし脚一本が私の体くらいあるというムース（日本の９号サイズがぴったりの私です！）
ハンティングをしてそれを解体しそして口に入れるまでの工程を考えると気が遠くなる。
私にはとてもできない。
女の人は無理でしょと言うことなかれ。女性のムースハンターを知っている。

ところでこのムースとはどうやって遭遇したのか。

なんでもハイウェイをトラックで走っていたら道路わきに転がっていたらしい。
道路を横断しようとしてやられちゃったんだろうな。

んで一体それをどうやって運んだわけ？

その場でバラして、全部は無理で半分にしたってさ。

なんでもこんな幸運のためにハンターたちはナイフ、プラスティックの大きなゴミ袋など
”偶然に獲物に出会ったときのバラすキット”を車に常備しているらしい。

オレは手袋も入れてるんだ、なんせクマの脂はすごいからね

と間借り人のハンターE
ハイウェイでシカが飛び出してきて車のフロントガラスを破り助手席にうまく着地したこともあったらしい。

動物が近くにいる生活
ペットでない動物
生と死が交錯している

生涯ハンターだった夫ジェイ。
そんな彼と何十年も一緒に暮らして来たとしたら
私は動物の命に関してもっと早くから違う考えを持っただろう。

以前にも書いたが、何度だって書く。
ジェイが湖でハンティングしてすぐ取り出したグースの胸肉が生温かかったこと。

口にしてきた牛肉もブタも鶏も、もとはといえばそれを殺している誰かがいる。
知っていたけれど本当にはわかっていなかったのだ。

アニマルウェルフェアで動物の生きる環境をよくする、そして？
苦しませずに殺す。そして美味しく食する。
ハンティングにしてもいかに殺すか。
一発で仕留めるために
ライフルやクロスボーでどこを狙うか。

湖畔の家にも一枚のシカの毛皮が残されている。
クロスボーが貫いた穴がひとつ。

このいかに殺すか
そんな課題項目は私の頭に作成されたことがなかった。

しかし
ジェイがハンターで、そして一発で仕留めることにあくまでもこだわっていたことが実は、ここカナダで可能な安楽死について考えることに繋がって行ったのである。
この地にとどまる理由のひとつとしての安楽死が
私のチエックリストに入っている。

ところで
膨大なエネルギーを消費できかつ、高蛋白質摂取。
ダイエットを考え筋肉つけたい人には
ムースハントがおすすめ😉

注：ヘッダー写真はムースジャーキーの匂いが充満した日の夜明け（笑）