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日本画聖地巡礼 ー 山種美術館

前日の土曜日は奥多摩で紅葉狩りを行い、心地よい疲労感に包まれた三連休中日。かねてより計画していた山種美術館の展覧会へ足を運びました。
お目当ては、度々noteでも書いている速水御舟氏作「名樹散椿」。

季節感としてはまだ早いのですが、そう思ってできる限り会期の後ろの方にと訪問を先延ばしにしていたのですが、我慢できずに訪れた次第。
ただ、今日は季節外れの夏日となって、先延ばし効果が全くありませんでした。。
11月29日までの会期なので、もう一度寒くなったら訪れるかもしれません。
尚、今回の展覧会はタイトル通り絵の対象となった場所の紹介と共に北から順に展示をされているのですが、私自身は描かれた場所はあまり関心がありません。季節感には心が動くのですけれどね。
さて、お目当てだった作品の他、今回私が惹かれた作品を、いつも通り素人の好み、主観で感想を並べてみます。
※いずれの作品も写真撮影不可

「名樹散椿」 速水御舟氏 作
私が毎年鑑賞したい作品がいくつかあります。
それは、
「松林図屏風」 長谷川等伯氏 作  東京国立博物館所蔵
「小雨ふる吉野」 菊池芳文氏 作  東京国立近代美術館所蔵
「山雲」 東山魁夷氏 作  唐招提寺所蔵
「藤花図屏風」 円山応挙氏 作  根津美術館所蔵
「秋翳」 東山魁夷氏 作  東京国立近代美術館所蔵
「落葉」 菱田春草氏 作  永青文庫所蔵
「名樹散椿」 速水御舟氏 作  山種美術館所蔵

これらの作品の内、多くはその描かれた季節に所蔵品展として展示がされるのですが、そうではない季節に展示されることもある作品があり、悩ましい。そもそも「山雲」のように毎年一般公開されるわけではない作品もありますけれど。

名樹散椿も、冬から初春に展示がされるわけではないので、山種美術館の展示スケジュールは定期的に確認をしています。そんな中での今回の展示でした。

大きな二曲一隻の屏風絵。
右曲の幹から左曲へ向かって大きく枝を張る椿が描かれています。
散椿というタイトルながら、落花はわずかで、蕾混じりで花盛りを迎えた姿。
一面に花が咲いている訳ではなく、椿の艶やかな葉の中、あちらこちらに存在感を持って光を浴びている。
この花もそうなのですが、葉の色に私は心惹かれるのです。
中間色というのでしょうか、ややくすんだような、しかししっかりとした多彩な緑で描かれた葉は、ぼったりとした重みを持つようでありながら、一葉一葉が立体的に画面から浮き上がる。
絵の前にちょうど椅子が置かれていたものですから、また絵の前で30分ほど耽溺していました。
やはり好きだなぁ。

「春静」 東山魁夷氏 作
度々noteでしつこいほど書いている大好きな東山魁夷さん。
「春静」は京都・鷹峯の桜を描いた同氏にしては小ぶりな作品。
冒頭で描かれた場所には無関心と書いていましたが、場所が故郷の京都となると異なります。
北山杉の濃い緑の山肌の中に、染井吉野と思われる桜が淡く描かれる。非常にシンプルな作品です。しかし、東山とはことなる北山、鷹峯の風情がその簡素さの中に十二分に表現されており、脳裏にすぐにその山並みが蘇る心地がいたします。
東山魁夷氏の作品は、「春静」の他にも、「緑潤う」「秋彩」「年暮る」が展示されています。

「松島暮色」 奥田元宗氏 作
静かな海の水面にリフレクションを伴った雪を纏った松林。そこに静かに夕日が沈む。淡く描かれた雪をまとった松の木々が個性に溢れ、周囲の静のの中に動となって浮かび上がる。なぜかその姿に心惹かれました。
私の好みにはいつも論理的な説明はつかないのですが。。

「蒲原落雁」 横山操氏 作
越路十景の中の一作とのこと。
暗い作品です。極寒が想像される雪原に並ぶ変わった枝ぶりの木々。
人工的に枝打ちをされた稲架木(はざき)というそうです。
雪の状態からすると、厳冬期ではなく春に向かおうとする頃なのでしょうか。
ただ、春を迎える喜びは感じず、荒涼とした奥行きがあります。
しかし何故か生命力を感じる作品です。

鑑賞が終わったらいつも通り1階のカフェでお薄と和菓子をいただきます。
こちらの和菓子は、時に子供っぽい具象のものが多く、味はともかくさほどその表現は好みでないものが多いのですが、散椿と名付けられたタイトル写真の表現にはとても惹かれました。

文化の日の翌日。ゆったりと芸術に触れることができた良き一日でした。

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