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動物病院のカルテ みんな大好き愚行権!

残念ながら僕も好きなんですよね…。
(羽尾高志・31歳 獣医師)

人は様々な行為をして生きています。
食べたり、寝たり、排泄をしたり、仕事をしたり。
まずは、生きていくのに必要な行為があります。
それ以外の時間は、動画を見る、音楽を聞く、スポーツをする、カフェに行く、など、好きなことをするでしょう。
これらは、何かの気づきや成長があったり、健康になったり、ストレス解消に役だってくれます。
はたまた人は、パチンコをしたり、喫煙をしたり、深酒や夜更かしや過食もします。
さらには、もっと体に悪いとわかっていることも。
どこからが良くてどこからが悪いかというと、線引きは出来ません。
それでも、良くないとされることをする権利を『愚行権』と言います。
そして、それは正式に国民の権利として、認められています。

診察室で、過度の肥満猫を診て、
「糖尿病になるから、痩せた方が良いですよ」
と羽尾先生が言ったけど、ご家族に断られたとき。
手術をすれば治せる病気の犬が、麻酔が嫌だ、というだけの理由で治療を出来なかったとき。
羽尾先生は、
『愚行権』
という言葉を思い出しつつ、そっと唇をかみます。
そしてそんな夜は、自身もその権利を行使して、深酒をするのが常です。
「動物を飼うのはな、」
徐に一緒に飲んでいた院長が口を開きました。
「愚行権の行使でもあるんだよ」
「え?」
フフ、と口を曲げるのは、皮肉を言うときの院長の癖です。
「手間も時間もお金もかけて、動物を飼うんだぞ。そんなもんは愚行に決まってるだろ?」
意外に大人なんだよな、この人。
「だから好きなように飼わせてやれよ」
久しぶりに羽尾先生は、院長を見直しました。
だからと言って、何でも良いわけでは無いというのは、お互いにわかりきっているのです。

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