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いま、北海道があちぃ!!

どうも、ニューヨークで建築デザイナーをしている道産子カジーです。
「北海道があちぃ!」というタイトル。寒冷地だぞ何言ってるんだとツッコミを受けそうですが、いま地元北海道がかつてないほどに熱い注目を浴びていること、ご存知でしょうか?
北海道はどのような将来を描いているのか、また水面下でどんな動きが出てきているのか、洗いざらい見ていきたいと思います!


1. 北海道が目指している方向性

 (i) データセンターパーク構想

北海道では「データセンターパーク」構想として、重要な港湾を持ち、再エネのポテンシャルが豊富で主要な空港や大学を擁するこのエリアを線で結び関連産業の集積を図るとしてきた。次世代半導体の製造に加え、研究や人材育成が一体となった複合拠点の実現を、データセンターパークの取り組みと連携しながら進めたい。(北海道知事 鈴木直道氏)

日本経済新聞2023年5月22日

再エネを活用したデータセンターの集積と併せ、これらを利用するデジタル関連企業やデジタル人材の誘致・集積の推進により、「インフラ」・「企業」・「人」が一体となったデジタル関連産業の一大拠点を創出。
北海道の冷涼な気候と豊富な再生可能エネルギーといった特性を生かし、データセンターを誘致。集積しつつある石狩市がある日本海側と太平洋側のデータセンター群をつなぐ地帯を軸に、道内各地へのデータセンター拠点拡大を目指す。とのこと。

(ii) 北海道バレー構想とは?

北海道半導体センターというような形で海底ケーブルとつながる苫小牧市、中心となる札幌市、再生可能エネルギーを使ったデータセンターができる石狩市などと展開したい。(ラピダス社長 小池淳義氏)

日本経済新聞2023年5月22日

小池社長の発言の背景には、北海道が近年進めてきた(i)のデータセンターパーク構想(データセンターやIT企業の誘致活動)があるようですね。豊富な再エネ、冷涼な気候、リスク分散などの「北海道の強み」を生かした取り組みとなっており、ラピダス建設による半導体産業の流入がおおきな流れを創ってくれそうです。

2. 千歳市 - 半導体関連企業の集積

 (i) Rapidus株式会社

いまメディアでも話題になっているラピダス。半導体企業という認識はしていても、具体的な事業内容はご存知でしょうか?(以下、イメージ)

Rapidus 半導体工場(完成イメージ)‐ 千歳市
引用:https://newswitch.jp/p/39546

ホームページ(https://www.rapidus.inc/business/)を見てみると、以下のように書かれています。

  • 半導体素子、集積回路等の電子部品の研究、開発、設計、製造及び販売

  • 環境に配慮した省エネルギーの半導体及び半導体製造技術の研究、開発

  • 半導体産業を担う人材の育成・開発

同企業は2022年、日本の有名企業8社(キオクシア株式会社、ソニーグループ株式会社、ソフトバンク株式会社、株式会社デンソー、トヨタ自動車株式会社、日本電気株式会社、日本電信通話株式会社、株式会社三菱UFJ銀行)が共同出資し設立され、現在は米国IBMから技術提供をうけ未踏の2ナノ
メートル半導体の量産
を目指しています。

 (ii) 国内外の半導体企業の参入

Rapidusの半導体製造工場設立を受け、世界各国の半導体関連企業の参入が予定されています。

すでに北海道内に拠点設置を決定している企業:

  • imec(アイメック)/ベルギー

  • Lam Research(ラムリサーチ)/アメリカ合衆国

  • ASML(エーエスエムエル)/オランダ

提携(技術協力)企業:

  • IBM(アイ・ビー・エム)/アメリカ合衆国(2019年技術提供依頼)

  • tenstorrent(テンストレント)/カナダ (2023年11月17日発表)

このように、日米欧をつなぐ架け橋となる可能性があるラピダス、そして千歳市・北海道の未来にワクワクします。新千歳空港の国際線数拡大という点でも、今後大きな影響が出てきそうですね。

3. 苫小牧市/石狩市 - データセンターの集積

 (i) ソフトバンク株式会社

この度、ソフトバンク株式会社及び株式会社IDCフロンティアが、経済産業省の補助金を活用し、苫小牧市に同グループの次世代社会インフラ構想の核となる拠点として、再生可能エネルギーを100%利用した300メガワットを超える日本最大級のデータセンターの建設を発表した(一部抜粋)

北海道庁 令和5年11月7日

Rapidusに出資している企業の1つであるソフトバンクが、千歳のお隣苫小牧市にて日本最大級のデータセンターを建設することが発表されています。

Core Brain (完成イメージ)- 苫小牧市
引用:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2023/20231107_01/

2026年度に開業することを目指しており、北海道内の再生可能エネルギーを100%利用する、地産地消型のグリーンデータセンターとして運用を行う予定だそう。
出資企業の1つであるソフトバンクが日本の未来を見据えて、ここ北海道の地に日本最大級のデータセンターを建設することは、大きな意味があると感じます。北海道バレー構想の実現に重要な役割を果たすと同時に、ラピダスをはじめとする他の関連産業との連携にも期待しています。

 (ii) 石狩市のデータセンター集積

石狩市内では、環境に優しい省エネルギーな郊外型データセンターの集積が
進んでいるようです。いくつかプロジェクト例を挙げてみますと、

  • 石狩データセンター(さくらインターネット株式会社)‐ 2011年

  • ゼロエミッション・データセンター(京セラコミュニケーションシステム株式会社) - 2024年完成予定

  • 石狩再エネデータセンター(株式会社ブロードバンドタワー)- 2026年完成予定

石狩市では、ゼロカーボンに向けた施策「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」を策定しており、2050年カーボンニュートラルに向けて環境省が公募した「脱炭素先行地域」にも選定されております。さらに、ISRDおよび本事業は、令和3年度補正予算「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」に係る基金設置法人による間接補助事業者として採択されており、北海道石狩市におけるデータセンターの設置等について国からの支援が予定されております。

https://www.bbtower.co.jp/ir/pr/2023/0510_001714/

これらのデーターセンターの共通点として「再生可能エネルギーの活用」が挙げられ、その背景には上記のような政策・支援があるようですね。半導体工場やデータセンターにおいて、CO2の排出量を抑える脱炭素化は急務であり、クリーンな工業地帯として北海道バレーを築き上げていくことは世界的に見ても価値あるプロジェクトになりうると強く感じています。

4. 北広島市- 球場を中心とした新たな集積

さらにお隣、北広島市でも面白い街づくりを推進しています。それが「ボールパーク構想」。日本ハムファイターズの新球場誘致に伴い、球場を北広島市の核としながら、街の特徴・賑わいを創っていくようですね。

北広島市には、居住、観光、ビジネスにおける交通利便性と豊かな自然の中での暮らしが共存するポテンシャルがある一方で、急速な少子高齢化、人口減少による活力低下や、地区の分散と都市機能の不足、流出が現状課題として生じています。
未整備公園をきっかけとした官民連携プロジェクトとしてボールパークを整備することで、北広島市のアイデンティティを高め、未来の担い手となる居住者や企業立地を促進しながら、持続的な都市経営と社会課題の解決を図る地方都市の再生モデルを実現することを、北広島市のボールパーク構想と位置づけ、推進を図っていきます。

北広島市(https://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/ballpark/detail/00130860.html)

私自身も先日帰省した際、初めてボールパークに訪れ「日ハム vs 広島カープ」の試合を観戦してきました。たまにアメリカの球場に行くのですが、良い意味でアメリカナイズされた迫力のある空間と、日本らしいきめ細やかな配慮やホスピタリティ・食事処の豊富さに驚愕しました!また帰国するときは必ず遊びに行きたいです。

もう一つ面白いニュースとしては、「北海道医療大学のFビレッジ内新キャンパスの移設」ですね。2028年度の開設になるようですが、より強固な官民学での連携が予想される為、北広島市がより活気あふれる街として生まれかわる日も近いな、と感じています。
(参照:https://www.hoku-iryo-u.ac.jp/topics/information/1055424/

5. 札幌市 - 駅周辺の再開発ラッシュ

我らが北海道の中心、札幌市でも街が大きな変貌を遂げるような再開発ラッシュが起こっています。札幌再開発マップをみてみると、札幌駅周辺だけで34件もの開発が進められており、新幹線札幌駅の完成に先駆けた再開発が至る所で推進しているようです。

札幌駅周辺 再開発予定地(一部)
引用:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62014400Y0A720C2L41000/

ただ、工事費高騰や新幹線の工事期間延長に伴い、いくつかのプロジェクトにおいては頓挫してしまったり、開発の話自体ないくなってしまったりと、かなり厳しい状況が続いているようですね…。

同時に、札幌駅周辺では姉妹都市であるポートランドの先例を生かしたまちづくりが進められているよう。路上に店舗を出して街に活気を生んでいるポートランドに倣って、札幌でも狸小路商店街内の路上でトレーラーハウスやキッチンカーを使った飲食・物販をしているようですが、気候も文化もポートランドとは全く異なる環境下で、街の賑わいをどう外に滲みだしていくかは、これからの課題になりそうですね。

正直、札幌の開発については上記で取り上げた他の街と違い、これといった特徴がないように思いますが、逆に言えばすでに整備された都市計画や潤沢な観光資源があるとも言えますよね。より一層札幌が注目を浴びることで、北海道全体が盛り上がっていくことは間違いないので、これからの発展に大いに期待したいです。

6. さいごに、HOKKAIDOの未来を考える

長々と書いてきてしまいましたが、
いま、北海道があちい」と感じていただけたのではないでしょうか?

街づくりには、お金も時間も労力もかかります。
どうしても目先のことにばかり目を向けてしまいがちですが、長い視点で物事を考えていく・街やその場に住む人たちの生き生きとした未来を考えていくことが、いま大きな転換点を迎えている北海道を世界中の人たちから魅力ある場所として再認識してもらうためには必要不可欠である、と私は信じています。

最近は、小さいころからお世話になっていた千歳空港横にあるアウトレットモール・レラの閉店、というニュースがありました。残念ですが、千歳の市街地とラピダスを結ぶ中間点に位置するこの土地を今後どう活用していくのか、大きなカギになってきそうです。三菱商事と千歳市の提携もあり、そのあたりの土地の利活用や街づくりに関しては、水面下で話が進められているのではないかと思います。続報を楽しみに待ちましょう。

北海道の未来のために、私自身もできる限り精一杯行動していきますので、今後ともよろしくお願いいたします!


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