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【読書メモ】俺は、中小企業のおやじ

日経新聞に鈴木修会長のインタビュー記事が出ていました。

今月の株主総会で、会長を退任する予定となっています。
自らを「中小企業のおやじ」と表現する修会長。ユーモアの中に独特の鋭い経営観があります。

著書「俺は、中小企業のおやじ」は、10年以上前に出版された本です。記事を読んで、久しぶりに修会長の語録に触れたくなり、読み返しました。

印象に残ったことをひとつだけあげるとすれば

修会長がその時々の本心を飾らずに語っています。思わず笑ってしまったり、ハッとさせられたり、珠玉の言葉の連続です。その中でも、改めてグッと来たのは以下のくだりです。

スズキはもともと小さな会社ですから、巨大なライバルと対等に戦えるわけはありませんが、「これだけは絶対よそに負けない、という特長のある会社にしたい」と私は常々思っていました。後にリスク承知でインド市場に飛び込んでいったのも、「他の大手が手を伸ばさないインドなら、1番が取れるだろう」と考えたからです。

やはり、「独自の強みで1番になる」と考えることが戦略の基本です。また、教科書に出てくる言葉と違って、修会長の言葉には迫力があります。やはり、経営は実践だと思わされる一冊です。

小さくても1番になるという信念が強みを作る

修会長のアウトプットは、もちろん言葉だけではありません。インドへの進出もそうですし、製品も常に軽自動車のエポックメイキングとなってきました。

関連記事では以下の様な解説がありました。

鈴木会長は今回の会見を含め過去に何度も「軽自動車はエンジンの排気量や車体のサイズが法令で制約されている。その制約をいったん受け入れて、その上で技術者がいいものを作ろうと頑張るから、いい車ができる」と繰り返してきた。制約条件を逆手にとってイノベーションを加速する、という発想は、今後、スズキがカーボンゼロに挑戦する際にも有効な指針になるだろう。

「制約がイノベーションを生む」これもあちらこちらで言われていることです。修会長は、「1番になろう、ここだけは負けない会社にしたい」という思いが原動力になっています。結果として、その制約が他社からの参入障壁にもなっています。他の会社がやろうとしないことにチャレンジすることで強みを作ってきたのです。

素直に学び、やる方法を考え、実行する

本書の巻末の修会長語録にもこんな言葉があります。

「できない理由を聞くヒマはない。どうすればできるかを言ってくれ」

これも多くの経営者が口にするでしょう。修会長は自らもこの姿勢で経営をしてきています。だから説得力があります。安易な妥協をしないのです。

このように書いてくると精神論だけのように思われます。しかし、本書を読むと経営の原理原則をこつこつと重ねていることも分かります。アルトの成功を軸に、着々と設備投資を重ねたり、その投資判断も基準を明確に定め、投資回収を徹底しています。

そして、常に学ぼうとする姿勢がやはりすごい。人の話をよく聞き、ヒントを得て、すぐに実行するエピソードにあふれています。そして、現場・現物をよく見ている。苦労や失敗から素直に学び、教訓を得ては、徹底して実行する。やはりこの積み重ねに勝るものはありません。

「中小企業のおやじ」という言葉に込められているのは、慢心せずに創意工夫をし続ける信念です。100年に一度の変革を迫られている自動車業界。もちろん、自動車業界だけの話ではありません。修会長の言葉から、これからの変革の時代に実践すべき大事なことを学ぶことができました。

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