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財務戦略とは?

財務戦略、ファイナンス戦略という言葉がありますが、具体的に何をするのか?のイメージがつかない方も多いのではないでしょうか。
本日は、企業価値向上のためという軸で私が考えるファイナンス戦略について書いてみました。

企業価値はどうやってきまる?

企業価値向上をゴールとしてファイナンスでやるべきことを検討するため、まずは企業価値の定義を確認しておきたいと思います。

上記は私の付加価値がゼロの図ですが、企業価値は以下の3要素で決まります。

  1. FCF

  2. r(割引率/期待収益率/WACC)

  3. g(成長率)

次に上記3要素に対して、どのようにアプローチしていくかという観点から整理しいきたいと思います。

※なお、企業価値の定義がよくわからない方は、解説がたくさんありますので、別の書籍やネット等でご確認いただけますと幸いです。

企業価値を高めるファイナンスアプローチは?


※ファイナンス戦略の全体像


企業価値を規定する3要素をさらに分解して、ファイナンスとしてどのようなアプローチができるか?(薄赤ハイライト部)を整理したのが上記図になります。
それぞれ以下に補足説明をします。

①FCF

企業価値の源泉となるがフリーキャッシュフローです。こちらは「利益ではなくキャッシュ」「営業キャッシュではなく、必要な成長/維持投資を差し引いたキャッシュ」という点が重要です。

FCFへ直接アプローチできるのが、ファイナンス一丁目一番地の「①投資意思決定」「②キャッシュマネジメント」です。

①投資意思決定は、将来のFCF増加につながる投資なのか?、数あるオプションのなかで最も良い投資か等を判断する業務になります。
(NPVとかIRRとかが出てくる世界で、M&Aもここに入ります)

②キャッシュマネジメントはキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)のマネジメントに等しいです。
こちらは以外に軽視されがちですが、アマゾンのようにCCCがマイナス、つまり売上拡大に応じてキャッシュ増になるモデルだと、外部資金調達がなくとも、投資原資を獲得していることになります。
中長期的には必ず企業価値にプラスになりますので、初期段階から意識し手を打っていく必要があります。(ROIC経営にもつながる)

②r(WACC)

FCFがWACC(債権者と株主に約束している(はずの)利率)で割引かれて、企業価値になるため、WACCは低い方が良く、ここのコントロールをしていくのがファイナンス視点から必要になります。

ここではデットとエクイティを組み合わせた③最適資本構成の実現(含む調達)と、投資家が認識しているトータルリスクを下げる④IRが必要になってきます。

③最適資本構成は事業リスクに鑑み、デットとエクイティの比率をどうするか?(財務レバレッジをどこまで効かすか?)が重要なポイントになります。
これを計算するには重要な事業リスク要因を適切に捉え、財務3表のシナリオ分析を行い事業の振れ幅を把握するとが必要です。(財務モデルリングのスキル等が生きる世界かと)
また株主還元等のペイアウト施策もこちらに入る認識です。

④IRのミッションは究極WACCを下げることだと考えています。
教科書的には株主資本コストはマーケット平均(競合のβ値)で決まるのですが、それとは別で個別リスクが加味され、株主資本コストが高くなっている可能性があります。

その要素が大きく(A)サイズ、(B)流動性、(C)情報非対称性の3つかと思っております。

(A)サイズは事業規模が小さいことによる、ボラティリティ高さ、や人材層が薄く経営が安定しにくい等の理由で加味されるものです。(いわゆるサイズリスクプレミアム)
ここは成長していくことでしか、対処のしようがないと考えております。

(B)流動性は未上場企業であれば、非流動性ディスカウントというものが有名ですが、上場したからっといって流動性が直ぐに担保されるわかではなく、上場後も当該リスクがあります。
こちらを解消するためには、市場に流動させている比率を増やす、戦略的に株主構成を決める(極端な例を言うと、長期保有投資家だけだと日次での売買が期待できず、流動性がなくなる)といったことが必要になります。

(C)情報非対称性で有名なのはIPOディスカウントです。これは、既存の上場企業と比べて情報開示実績が少ないことが理由の一つとされてます。
上場後においては、自社の戦略やリスクが正しく投資家に認識されているか?認識してもらうためにはKPI等どのような情報を出せばよいか等を考えることになります。こちらがまさに世にイメージされるIRという認識です。自社のフェーズに応じた投資家選定、リーチ戦略等も上記の文脈で検討されるものです。

③g(成長率)

最後のgは当該企業の(期待)成長率です。こちらはWACCからマイナスされるため、高い方が良い指標です。
成長率の担保は経営そのものだと思いますので、CEOをはじめ経営陣がフルコミットすべきテーマです。

特にベンチャーのように高成長を期待する企業だと、ミッションやそもそもの市場選定(TAMの大きさ)とマネジメントチームできまる側面もあります。
成熟してくるとPPM等による事業ポートフォリオ管理もファイナンス側のミッションになってくるイメージもあります。

なお、CFOだけの業務というわけでは決してないのですが、ビジョン・戦略のほうはCEOの方に集中して担っていただくため、残りの組織/ガバナンスをCFOが担うケースが多いと思います。

CFOとしてはファイナンスをメインとしつつもブルーの戦略領域にも積極的に関与しておきたいとこですが、なかなか手一杯というのが現状です。
ただ、全ては有機的に繋がっているので、事業/戦略をしっかり理解しないと良いファイナンス戦略は立てれないと思っています!

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