愛とは、他者のおかげで自分を愛せるようになること。

『あなたが好きなあなたになる』

いきなりですが、僕が所属しているコルクラボのスローガンがコチラ。

「あなたが好きなあなたになる。あなたが好きなあなたになるかぁ。う~ん、自分のことが好きだとか、嫌いだとか、考えたことなかった…。」

初めてスローガンを聞いた時は、こんなことを思ってしまったのですが、改めて自分について考えてみると、どちらかというと好きより嫌いの感情のほうが強いと思いました。

そもそも、自分を愛するのは、誰かを愛することよりも難しいのではないでしょうか。

なぜかというと、他人は自分の知っている一面しか見えませんが、自分自身については全部が見えてしまうわけです。過去の失敗や過ちや、自分のふがいなさみたいなものが全部わかっちゃうんですよね。

今まで僕がついた嘘と、今まで僕が言った本当。どっちが多いかが怪しくなって探すのやめた。
自分の中の嫌いなところ、自分の中の好きなところ。どっちが多いかもう分かってて、悲しくなった。

RADWIMPS「有心論」という曲の冒頭の歌詞ですが、まさにコレ。

でも、せっかく生きているなら、自分のことを好きでありたいですよね。

自分で自分を応援することができれば、自分の行動や発言に自信が持てたり、明るい気持ちで日々を過ごせるのではないかと思います。また、仮に周りから批判をされたとしても、その想いがあれば、自分を支えることができると思うんです。

1人の人間は複数の分人のネットワーク

では『あなたが好きなあなたになる』ためには、どうすればいいのだろうかと思っていた僕に、ヒントをくれたのが小説家平野啓一郎さんの分人主義という考え方でした。

端的に言うと、対人関係ごとに様々な顔を持つ自分がいて、それはキャラや仮面をかぶっているというわけではなく、偽りない「本当の自分」だと捉えます。その分けられた個人のことを"分人"と呼び、1人の人間は、複数の分人のネットワークから構成されているという考え方です。

確かに、職場での自分、親といる時の自分、大学時代の友人といる時、それぞれで自分の振る舞いは全く違っていると思いますし、それはわざと使い分けているわけではなくて、相手とのこれまでの関係の中で自然とそうなっているのだと思うんですね。

なので、『あなたが好きなあなたになる』というのは、あなたが好きなあなたの分人を探すことから始めると良いのかもしれないと思いました。

自分の全てをまるっと愛するのは難しいけど、「この人(達)といる時の自分は好きだ」とか、「これをやっている時の自分は好きだ」とか、分人単位であれば、好きな自分を見つけられそうな気がしたんですよね。

そして、そうした自分の好きな分人の数を少しずつ増やしていったり、そうした分人でいられる時間の比率を高めることで、全体としての自分自身への感情もポジティブになっていけそうです。

好きな分人を見つけて、その分人を大切にすることが、自分を好きになる起点をつくることになるのではないかと思いました。

あなたのおかげで自分のことを好きになれた

分人主義の考え方は、平野さんの著書『私とは何か――「個人」から「分人」へ』を読むことで理解が深まりますが、分人主義に関心がある方に観てもらいたいのが、こちらのTEDでの平野さんのスピーチです。

僕が特にグッときたのが、この部分です。

「愛とは誰かのことを好きになることだ」。この定義自体はもちろん間違っていませんが、今僕が付け加えたいのは、愛とはむしろ「他者のおかげで自分を愛することができるようになることだ」と、そういうふうに考えてみたいと思います。

そして、最後のここ。

自分を愛するというのは、なにも鏡を見て「ああ、俺が大好きだ」ということではなくて、誰かのおかげで自分を愛する、他者を経由して自分のことを好きになれるということなのではないでしょうか。おそらくそこが、自分を愛するという入り口なんだと思います。そしてだからこそ、やっぱり我々は他者を愛するのです。かけがえのない存在として。以上です。

愛というと、自分を犠牲にして誰かに尽くすことみたいなイメージが強いですよね。でも、自分自身を愛するための媒介として他者がいて、だからこそ、その好きな自分でいさせてくれる他者という存在を大切にするという考え方は、とってもステキだと思ったんですよね。誰も犠牲にしていなくて。

また、スピーチの中で語られている例えですが、「あなたのことを愛してます」と言われるより、「あなたのおかげで自分のことを好きになれた」と言われるほうが、確かに嬉しいよなぁとも思いました。

自分を一つの塊としてみるのではなく、分人という単位で捉えなおしてみる。

僕は、この分人主義という考え方と出会って、正直かなり心が軽くなった気がします。

そして、「あなたのおかげで自分のことを好きになれた」と言ってくれる人がいたり、そういう人が少しでも増えたら、自分の人生はとても良い人生だったと言えるのかもしれないと思いました。

そんな人生を目指して、生きてこうと思えるようになった今日この頃です。

記事をお読みいただきありがとうございます!いただいたサポートは、記事を書くための書籍購入代などに使わせていただきます。