見出し画像

アメリカ進出は直接渡航がベストアンサーではない - 海外就職エンジニアCase Study -

海外を目指すソフトウェアエンジニア(以下エンジニア)にとって最も重要なものは情報である。優れたエンジニアでも、効果的なアプローチや就きたい会社の国の慣習、ビザの事情、情勢等を知っていなければ、海外就職が失敗する確率は極めて高い。

この情報こそが、日本人のエンジニアが海外にまだ少ない要因の一つであると感じている。なので、様々な情報を発信するによって少しでも多くの方々の海外就職への心理障壁を下げたい。その為に、これから実際に海外で働くエンジニア達にお話を伺って、Case Study(事例)として公開していく事にした。

Case Study - Amazonの今井氏の場合

今回インタビューに応じてくださった今井 稜氏 (@ryom1m1)は、2022年にアメリカへの就職、移住という目標を胸にカナダのバンクーバーへ渡航した。

彼は2023年現在、AmazonのバンクーバーオフィスでSystem Development Engineerとして働かれている。首都大学東京の大学院(現在の東京都立大学)ご出身で、理工学系 電気電子工学というコースを受けられていた。

そんな彼が海外を志し始めたのは学生時代。ソーシャル・ネットワークという映画に触発されたのち、手に取った竜 盛博様著、エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢という書籍を読んだ事がきっかけになったそうだ。

情報系出身では無い彼がエンジニアとして海外への就職を志すのは簡単なことでは無い。それでもなお彼がその書籍に触発された理由は、それがとても網羅的にアメリカでのエンジニアとして働く場合に必要な情報をカバーしていたからであり、海外=とても遠いものという心理的障壁を取り除いてくれたのだ。この記事を読んだあなたも同じように感じていただければこの上なく幸いである。

海外で働くための3つのアプローチ

今井氏が手に取ったその書籍では、海外(アメリカ)で就職する為には3つのアプローチがあると語られているそう。

(1). アメリカの大学に編入または入学、そして現地で就職
(2). 外資系の企業に就職の後、アメリカの拠点に内部異動
(3). 日本からアメリカの企業に応募

当時大学院生であった今井氏にとって一番現実的であったのは(2)であった。大学院を卒業後に外資企業へ新卒入社、その後にアメリカの拠点に内部移動を目指す事にした彼は、紆余曲折を経て日本IBM東京ソフトウェア&システム開発研究所へ製品開発エンジニアとして入社することが決まる。

入社の決め手はバックグラウンド(学部)によって就職希望者を選別しないこと、アメリカを中心として世界中に拠点を持つグローバルな開発体制を敷いていることであったそうだ。

日本IBM社にてキャリアスタート

無事日本IBM社に入社した今井氏は、アメリカの開発チームと働く事となった。アメリカのチームの業務に携われる事、日常的に英語を使って働く事となった事はアメリカを目指す彼にとって追い風であった。日々の業務を経て彼の憧れは少しづつ確信へと姿を変えていった。

日本IBMで得られた情報的アドバンテージ

日本IBM社での日々で今井氏は、北米での実践的なコミュニケーションや向こうのエンジニア達のレベル感を知る事が出来た。これは北米を目指す上ではこれ以上ないほどのアドバンテージであり、この頃には彼の海外への心理障壁はゼロと言っても良いほどであった。
そのうえ日本ではあまり知名度の大きくないLinkedInという、海外で就活をする際に必須のSNS等を知れたのも大きい。後述するが、これが彼のカナダ行きへのきっかけとなる。

内部異動の難しさ

しかし全てが順調という訳では無かった。一番肝心の内部異動が中々起きなかったのだ。今井氏は上司に何度も希望の旨を伝えたが、検討に検討を重ねた上に検討を重ねられるに終始してしまい、ついぞ日本IBM社で内部異動が実現する事はなかった。

やはり日本IBM社からしても、すでにその国、ポジションで上手く機能している人材をビザ等のコストやリスクを背負ってアメリカへ寄越すには、チームの人材不足や時差による生産性の低下等、とても強い理由が必要だったのだろう。

カナダという選択

内部移動で異動先を探すうちに、今井氏はカナダやドイツのベルリンがアメリカに比べて比較的容易に異動、移住出来る事を知った。やはり一番の理由は就労ビザの発行難易度が関係しているそう。2023年現在、アメリカに比べてどちらもビザ上でエンジニアを優遇する措置を取っている。

日本IBM社を離れる決断をされたのもこの辺りだそうで、LinkedInのプロフィールをしっかり埋め応募を始めた。そんな時にリクルーターからLinkedIn経由で彼に声をかけたのがAmazonのバンクーバー拠点である。

6ラウンドにも及ぶ長い面接の末、彼はJob Offer(内定)を勝ち取った。この瞬間に今井氏は、海外でのエンジニア生活が決まると共に、アメリカへの大きなステップを踏み出した。

なぜカナダがベストチョイスだったのか

カナダでの永住権取得をしてからアメリカへ進出という手法は、海外移住という点でも自分は100点の選択だと言いたい。エンジニアなら永住権の取得が他国と比べ安易なカナダで永住権を取得し北米で生活基盤をしっかり立てた後、アメリカへの進出を試みる事が出来る。もしアメリカの企業でレイオフが起こったとしても、カナダからと日本からでは他アメリカ企業で就職できる可能性が段違いであるからだ。

軽く解説するが、2023年末現在、カナダは高度技能人材を受け入れる為のExpress Entryをはじめとする優遇政策を取っている。ビザや移民政策は国の都合によって変わりやすく、あまりにここで詳しく書きすぎるとこのポストの寿命を縮めてしまう結果になるので詳しくは避けるが、エンジニアの肌感としては2023年末現在、3年以上の経験がある方はバンクーバーで現地企業に就職さえできれば、1年働いた後でカナダの永住権の取得資格を得られるだろう。

カナダでの優遇職種である、STEM (Science, Technology, Engineering, and Math)。画像は"Software"でフィルターをかけていて、デザイナーも含まれる

しかし、ここで書いた事はあくまで自分の肌感にすぎない。ビザの話は国の政策ですぐ変わる上、海外で過ごす際の生活基盤に関わる話なので絶対にそこいらのインフルエンサーや友人等の話を100%間に受けない事。海外で生活するならこれだけは覚えていてほしい;

海外でビザの話を聞く際は絶対にプロに聞く事。そして1次情報を参照する事。

今井氏のこれから

現在カナダでの永住権の応募資格を満たし、申請を始めた彼は、遅くても2024年の後半にはカナダで永住権を取得する事が出来るだろう。しかし、これは彼にとってはまだまだ始まりに過ぎない。

Amazonというバンクーバーのご近所、シアトルで超巨大な拠点を持つ会社で働く彼は、日本にいた時には達成できなかった内部異動という方法でアメリカに移住する予定である。もしスムーズに行けば、3年ほどアメリカでAmazonで働けばグリーンカードが見えるらしい。

アメリカへの異動を達成された暁には、彼の行動原理となったエンジニアとして世界の最前線で働く選択肢の著者、竜様へ感謝を伝えたいそう。もし実現すれば、ここまで話を聞いた自分も嬉しい話である。

まとめ

今井氏はスタートから外資企業で働かれていたので、"こんなの上位層の話じゃないか"と感じられた読者の方もいらっしゃるかもしれない。しかし、自分は様々な方が参考にできる話だったと思う。要約させていただくと、このCase Studyから学べる事は下記になる

  • アメリカへ挑戦する際、一度カナダで就職する事でそこの永住権を取得することも視野に入れる

  • カナダでの永住権を保持する事で、レイオフ = 日本帰国ほぼ確定の状況を避けられる

  • 外資に行く事の最大のアドバンテージは、海外ベースの労働環境での経験と、何よりも情報である

    • 自分としてはこの情報ギャップは自分が情報発信する事で少しでも少なくしていきたい

  • 学生時代や若い頃から海外就職や移住を目標にする事は無謀ではなく、寧ろ行動の方針が決まるので良い事

上記に加え、アメリカに行く為の、カナダに来てからの今井氏の道程は、2023年現在エンジニアとして3年以上の経験かつ大卒の学歴があれば再現可能である事を自分は強く推しておきたい。

自分は彼に何故海外就職を目指すのかを聞いた事がある。彼の回答は純粋かつ単純に、"海外行きたいじゃないですか"だった。もはやこれについて多くを語る必要はなく、これは海外就職を目指すに値する理由なんだと気付かさせてくれた。

そんな今井氏の更なる躍進に期待しながら、今回のCase Studyを終わらせていただく。今後の彼の活躍を間近で見たい方は、是非彼のXやLinkedInをフォローしてほしい。

X: https://twitter.com/ryom1m1
LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/ryo-imai-a62673131

今回のインタビューの様子

実際のインタビューは動画にしてあるので、興味のある方は是非こちらもチェックしていただきたい: https://www.youtube.com/watch?v=FePGAUiRgJI


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?