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読書感想文『ベストマン』

(以下ネタバレあり)
『ベストマン』は、バリ島で暮らす二人の青年(同性カップル)、カイとウガルの恋愛小説だ。ウガルが自ら「二人で一人のような気がする」と思っているように、二人は見事にお互いを補い合っていると思った。

言動がストレートで直情的なカイと万事慎重で思慮深いウガル。
告白するのも新しいことを提案するのもカイだから、カイがいなければ何事も先に進まない。だが、時にはウガルがカイを制する必要がある。

この小説で印象に残ったのは、そんな二人が故人との約束を忠実に守ったことだ。カイとウガルは、その遺言を守ることで自分達がどれほど深く傷ついても故人の遺志を尊重した。ここでもカイが土壇場で約束を破ろうとしてウガルが制するかたちになった。

ところでウガルは元カレ(?)のブルチェとは兄弟のような関係になり、ブルチェは人気俳優のアレックと付き合っている。
ブルチェはバリの人気レストランのオーナーで社交家、長身で面倒見が良く頼りがいがある。彼は時にウガルに手を差し伸べながら、カイとウガルを温かく見守り続けた。
ブルチェ、さぞかし女の人にモテるだろうな、でもモテても困るだけだから大変だな…と私が心配になったのも、ブルチェが実在するかのように思えたからだろう。

BL小説に戸惑いながらも、生き生きとした登場人物を感じながら『ベストマン』を読んだ。ここに記さなかった個性豊かな他の登場人物も今も心に残り続けている。


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