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永遠の17歳に憧れていた
【短編小説】mourn
春の薫りのする、すっきりと晴れた昼下がりだった。北国の3月頭だというのに、もう冬の匂いはどこにも見当たらず、コートも要らないような暖かさだった。まるで4月下旬のような気温と風の薫りに温暖化の影響を感じつつも、春の陽気に誘われて皆ふらふらと公園を散歩していた。子どもたちは楽しげに声をあげながら柔らかな土の上を走り回り、老夫婦は仲良く並んで頭上を飛び去る渡り鳥を見送っていた。僕は今年初めての自転車の
もっとみる【随筆】秋刀魚を捌く
高三の秋。生まれて初めて魚を捌いた。
母が体調を崩し、その頃は1年以上私一人で家事をしていた。洗濯は嫌いだったが、料理に関しては元より嫌いではなく、母が健康な時にも時折していた。特別家事を苦だとは思わず、むしろいつか自立する時に備えられるありがたい期間だ、と考える私を、当の母含め周りの大人は少しだけ奇妙なものを見るように眺めていた。
その日は旬の秋刀魚を食べようと思い立った。
スーパーで