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【TV】三体(Netflix版)

https://youtu.be/88y3uYsWSeM?si=dnBqXSZS67mv1cb8

期待のこのシリーズのために、しばらく休止していたNetflixのサブスクリプションに入り直しました。

原作小説はもちろん、公式二次創作(!)『三体X』も、無理やり前日譚ってことにしてる『三体0』も読みました。
最近のSFだと『プロジェクト・ヘイル・メアリー』にならんで「SFの黄金時代」に戻してくれるようなワクワクを与えてくれる傑作です。
「SFの黄金時代」っていつかというと、「12歳」。
「SFの黄金時代は12歳」といわれるのです。
科学や宇宙の壮大な世界を知って抱いた憧れの気持ち、物語に感じた興奮など、SFの中心をなす感性「センス・オブ・ワンダー」がもっとも機能したのが少年時代というわけです。
ミステリの世界だと「『アクロイド殺し』をもう一度「初めて」読みたい」と言われるそうですが、いろんなものを読んですれっからしになればなるほど、そんなプリミティブな感情をフレッシュに追体験できる作品を求めるものです。
『三体』シリーズは、最新科学の知見を取り入れながらも、やたらと気宇壮大でおおげさな設定、強引でケレン味の強い見せ場、その中で生きる人々の魅力や「時空を超えた愛」(笑 でもこれはSFならではでしょう)と、SFの面白さが詰まっていて素晴らしいです。

しかしそんな面白いSFほど、映像化が難しいものです。
SFがどれだけ映像に向かないかという話はいつかどこかでしようと思いますが、少なくとも作中に出てくる異星文明の不思議な描写は、「これ映像で見たら気持ち悪いだろうなあ……」としか思えなくて、映像になるのかなと思ってました。

それをNetflixで映像化することになったのが、D・B・ワイスとデイヴィッド・ベニオフという『ゲーム・オブ・スローンズ』のお二人。
『ゲーム・オブ・スローンズ』は前日譚の『ハウス・オブ・ドラゴン』含め鑑賞済み。
2010年代を代表する連続ドラマであるというだけでなく、現在の配信ドラマの隆盛をもたらしたと思える、極めてエキサイティングでハイクオリティなドラマでした。
原作であるジョージ・R・R・マーティン『氷と炎の歌』は読んでないのですが、欧米のファンタジー小説がヌルくないことはよくわかっていましたので、それを「ためらいなく、遠慮なく、容赦なく」映像化したチャレンジには驚きました。
エグい描写をそのまま映像化するだけでなく、演技や美術などとにかくクオリティが高く、難解で何の話してるのかよくわからないのにとにかく面白い、脚本や演出の優秀さも大変なものがありました。
現状多く作られている配信ドラマにとって、基準となっている作品でしょう。

そんなドラマのスタッフが『三体』を映像化するとなったら必見でしかありません。
かなり改変もされていますが、原作の2冊目の前半ぐらいまでが8話にまとめられていて、満足度が高いです。
特に、原作の冒頭で私がヤケに興奮した文化大革命のシーンもちゃんとやってます。
トム・ロブ・スミスの『チャイルド44』のスターリン時代の閉塞感にもなぜかやたらと興奮したんですが(映画は未見)、どうも言論が統制されている世界の描写が私は好きみたいです。
そんな世界が望ましいとは、当然思わないんですが、そんな時代は歴史上たくさんあったし今もそんな地域はたくさんあります。

そして、言葉に発することと心で思うことには違いがあり、後者は本来絶対的な自由であるというテーマはドラマの終盤で示される「面壁者」プロジェクトに繋がっていきます。
これがまた強烈に面白い。
原作読んだときもこの発想の面白さに腰を抜かしたものですが、ドラマで見てもちょっと笑っちゃう面白さがありました。

映像にしたらちょっとアレじゃないかと思う場面も、割とそのまま。
うわー気持ち悪い…… けど原作に書いてあったからなあ…… と思ってしまうのは、さすが『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエイターによる作品だなって感じます。

またキャラクターの魅力をうまく表現するキャスティング、彼らの演技も素晴らしいですね。
みんな大好き「大史(ダーシー)」は、みんな大好きベネディクト・ウォンが、やってくれてるし。
ジョン・ブラッドリーやリーアム・カニンガムなど『ゲースロ』役者が出てくるのも嬉しいところ。
原作だと、今回ドラマになったあたりはすべて中国の中での出来事であるところ、現代パートはロンドンに移されています。
これは少し残念なところもありますが、ヒロインは中国系のようだし、結果的にキャラクターの人種多様性が確保されてもいるのでドラマ化としては妥当かなとは思います。

あと、ちょっと心配なのは、原作読んでないと描写の意味がわからないんじゃないかと思う箇所も少なからずあったような……
こまかい説明は省いて物語をどんどん進めるところは、そこは原作同様のある種の強引さがあって、あの小説の感覚をドラマにするとこうなるっていうことだと思いますが、原作未読でドラマ観てる人がどう感じたのか、いろんな感想聞いてみたいですね。

非常に盛り上がる終わらせ方で、続きを早く見せてくれと世界中のファンが悶えてるんじゃないでしょうか。
シーズンが進むごとに等比級数的に金がかかりそうなので、みんなで観て続きを作らせよう!
「完結してから見るわ」とか言わないように。
ラストが知りたければ原作読むように。ネ!

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