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おじ 3度目の入院

『「ありがとう」のおじの声と機械音 重なる救急救命室』


一人暮らしのおじのお世話が始まって5年になる。

おじとおばには子供がいない。

おばは 7年前にアルツハイマー型認知症になり
高齢のおじは なす術がなく
おじ宅の近所の方から電話があり
私がお世話をすることになった。
病院・施設などを駆け回ってやっと落ち着いた…

その途端、おじのお酒が止まらなくなった。
糖尿病が悪化し、緊急入院したのは4年前。
「もう飲まない!」
という言葉は半年、また飲み出し 昨年再び入院。
(簡単には辞められないみたい)

退院後は 我が家の近所の高齢者サービス付き住居に入り、お酒も飲まずに元気に暮らしていた。

おじは 大きな事務所を持っていたので、昨年の入院時に会社を解散させ
私と従業員で必死に後片付けをした。


半年かけて片付けが終わった先月、
最後に全ての電力を切る作業をするために出かける準備をしていた時
おじの施設から電話が来た。

「意識がなく救急車でA病院に運ばれたから、すぐに行ってください。」

電力会社との約束があるので
まずは元事務所へ行き 事情を説明し、病院へ向かった。


検査のため 長い時間待たされて
やっと会えたのは午後3時。
酸素マスクを付け 顔が浮腫んだおじがいた。

「おじちゃん…」
声をかけると 目を開けて話し始めた。
「おれはやりたいことを全てやってきた。
 思いっきり生きてきた…」

何度も聞いてきたおじの来し方。
救急救命室でまた初めから聞くとは思ってもいなかった。
でも、もしかしたらこの話を聞くのは最後かもしれない。

おじが話すたびに機械音がブーブー鳴る。
そんなことはお構い無しに 語り続けるおじ。

検査が終わり 移動するまで自分の人生を語り続け
「ありがとう!」
と、病棟へ入っていった。

最後まで自分の生き方を貫いたおじ
周りは振り回させて とても大変…

おじの体力と 事務所の電力切断が同じ時間だったことが【おじらしい】


入院してから2ヶ月が経つが、回復の兆しはない。
あとは天に任せるしかない…

【無事カエル】ことを願って


※先週、入院してから初めて面会が出来ました。
起き上がれないほどに弱っているのに、また人生を語っていました。おじらしいです。


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。







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