MBAでの学び⑤「会計上の利益は幻」
現代のビジネス環境において、会計上の利益は企業の真の価値を反映しているとは限りません。
特に、無形資産や非財務資本といった要素が経済的価値に大きな影響を与えます。
従来の財務諸表だけでは企業の真のパフォーマンスや将来性を見極めるのは難しくなっています。
この記事では、会計上の利益が「幻」となる理由と、これにどう対応すべきかを解説します。
利益重視の融資判断
銀行は基本的にリスク管理に注力します。そのため、短期的な利益を優先しがちです。
この利益重視の思考は、特に融資判断の際に顕著です。
融資担当者は企業の過去の業績や財務状況を重視し、利益率が高い方が融資の承認が容易になる傾向があります。
つまり、表面的な数字が安定している方が、リスクが低いと判断されます。
短期的利益と長期的リスク
利益を重視する銀行の融資判断は、短期的な視点に基づいています。
企業が一時的に高い利益を上げている場合、銀行はその企業に融資を行いやすくなります。
しかし、これが必ずしも企業の長期的な健全性を示しているわけではありません。
例えば、市場の波(変動)によって高い利益をもたらしているなら、その波が退潮すれば、あっという間に返済能力を失うかもしれません。
しかし、将来予測が苦手な銀行という組織は、そのようなリスクに対しては極めて鈍感です。
そのため、分かりやすい短期的な利益によって融資判断する傾向があり、結果的に回収不能となる債権が生まれやすい環境です。
無形資産と非財務資本
利益重視の融資判断では、無形資産や非財務資本がしばしば見落とされます。
一部の銀行員は、財務報告上の数字のみに焦点を当て、その背後にある実質的なビジネスの健全性や成長潜在力を見逃します。
無形資産に対する理解不足から、それが企業価値に与える影響を過小評価する傾向があります。
これらの要素は財務諸表にはなかなか現れず、銀行による評価では抜け漏れが発生します。
無形資産とは
無形資産は、特許、商標、ブランドの価値など、物理的な形では表れないが企業価値に大きく寄与する資産です。
例えば、テクノロジー企業やソフトウェア企業では、研究開発費用が無形資産として資本化されます。
研究開発費用は、企業価値や将来の収益予測に直結している費用です。
しかし、従来の会計基準では研究開発に投じた資金は、費用として認識されてしまいます。
金銭的な評価が困難なため、価値が正確に表現できないからです。
そのため、会計上に現れる利益だけでは、その価値を把握しきれません。
財務情報の限界
会計上の利益は、主に過去の費用に基づく財務情報から算出されます。また、資産の減価償却など、一定の会計原則が適用されます。
しかし、このような情報は企業の成長ポテンシャルまでは反映していないため、投資家やステークホルダーには誤解を招く可能性があります。
実際には、企業の運用資本や無形資産が生み出す実際のキャッシュフローや市場での競争力は、単なる数字の上での利益よりも重要です。
現在の会計基準では、数値化が困難な情報はどこにも現れないため、財務情報には限界があると言わざるを得ません。
重要なのは財務情報に表示されない非財務情報、非財務資本です。
非財務資本の重要性
非財務資本とは、企業の社会的責任、環境への配慮、人的資源など、直接的に財務状態に計上されないものを指します。
これらは企業の持続可能性や長期的な成長に不可欠であり、特に現代のビジネスモデルでは重要視されています。
企業が社会的責任を果たし、環境保護にも努め、優秀な人材の確保や維持の取り組みは、長期的には企業の評判や地位を向上させます。
結論
融資判断において利益を重視するのは、短期的な成功をもたらすかもしれませんが、それが長期的な視点から最適な判断であるとは限りません。
無形資産や非財務資本を適切に評価し、持続可能なビジネスかを判断する方が、銀行に成長をもたらすのではないでしょうか。
銀行が財務情報に依存することなく、企業が持つ潜在力への理解は、スタートアップやベンチャー企業にとって必要不可欠な視点です。
伝統的な融資判断を超え、企業の可能性を引き出し、成功へと導く銀行員を目指してもらいたいと思います。
この記事を通じて、銀行が利益を重視する融資判断の限界を理解し、それに対する批判的な考察と創造的な解決策の模索が、皆さんのキャリアにおいて重要なスキルとなるのを願っています。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
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