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第29話:マーケティング・ブランド戦略の歴史

前回のおさらい

前回までは、ずーっと学問としてのマーケティング論を学ぶには最適な知識をお伝えしていったのですが、それでは実務に落とし込めないということで、マーケティング・ミックスとSTPの知識をお伝えしました。マーケティング・ミックスにも、STPにも諸問題があるのでそれを避けるために、マーケティングの周辺に存在している学問を触れておく必要があるというお話をしていました。

マーケティングの中のブランドってどういうイメージ?

皆さんの中はブランドのイメージはどう思われていますでしょうか?少し考えてみてください。

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例えば、ルイ・ヴィトンのLVのロゴやモノグラム、シャネルのCCのロゴを思い浮かべた人も少なくはないと思います。

ブランド戦略とヴィトンを一緒にしてはいけない

マーケティング戦略上で大切な概念の中の1つである「ブランド」。
消費者サイドからみた「ブランド」と、企業サイドからみた「ブランド」では大きく異なります。この認識が違うままブランド戦略を行ってしまうとせっかくのブランド戦略が台無しになってしまいます。

みなさまはご理解いただいていると思いますが、オシャレなネーミングにオシャレなフォントを付けてちょっとしたロゴマークをあしらったらブランドの完成ではないのです!!ブランディングカンパニーと名乗っている会社がロゴとタグラインだけしか考えてくれないようなところも少なくはないと思いますが、それは正しいブランディングではないということがわかるはずです。ブランドってそもそもどういうものなのか、例のごとく学問的視点や歴史から紐解いていきたいと思います。

ブランドの歴史、ブランドの由来

「ブランド」という言葉の由来は「バーンド」から来ています。Brand→Burned(焼印を押す)と言う言葉から派生したのです。
中世、放牧してある自分の牛を他人の牛と鳥間違えないように、牛の臀部や脇腹に所有権を表す「焼印」(商標の原型)を押していました。これが後のブランドになります。

牛だけでなく、刀剣や陶器が誰の手で作られているのかを示すために作者の名前を刻印しました。中世以前でも絵画や彫刻などの芸術作品に作者のサインを入れることが普通に行われていました。
この今も昔も当たり前のように作品に入れるサインがブランドの起源と深く関わっているのです。

そんなブランドでしたが、18世紀になると話が変わってきます。
18世紀のはじめにイギリスから欧州大陸に輸出されたウィスキーには、頻繁にニセモノが混ざっていました。対抗処置としてスコットランドのウィスキー輸出業者らは、ウィスキーの樽に焼印を入れて偽造を防ごうとしました。無断複製から所有者を保護する工夫が「焼印」の始まりでした。

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制作者(メーカー)の出所を表示して、商品の品質を保証するためにトレードマーク「商標」が誕生しました。19世紀に入ってからブランド開発者の権利を守るためにフランスやイギリスで「商標法」や「特許法」などの法律が制定されました。ちなみに、日本で整備されたのは1900年です。

ブランドは商標だけにとどまらず、法的に所有権を主張する「出所表示機能」や買い手に安心感を与える「品質保証機能」を持っています。さらに消費者に対して商品やサービスについてコミュニケーションをするための手段としての役割を果たすことを担っています。「広告宣伝機能」と言われ、以上3つがブランドの基本的な役割になります。

<ブランドがもつ3つの機能>
・出所表示機能
・品質保証機能
・広告宣伝機能

学問的には、現代のブランドを象徴する2つの商品があります。それは、コカ・コーラとプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のアイボリーです。石鹸のアイボリーは日本ではあまり有名ではないと思いますが、心理学のときにモチベーションリサーチを体系だてたディヒターが販売のためにデプスインタビューを実施して、キャッチコピーを作ったとされています。

学問的なブランド

資本主義のもとにおいて、人々は労働力を販売し賃金を得たうえで、商品を購入することでしか生活手段を得ることができません。しかし、時代が進むにつれ暮らしが豊かになり商品が多様になってきました。それは、商品自体の役割(使用価値)ではなく、イメージ(象徴価値)を購入するに至りました。

資本主義的生産様式が支配している社会の富は「膨大な商品の集積」として現れ、個々の商品は富の基本形態となるとマルクスは分析しました。
もし、マルクスが現代に生きていれば社会の富は「膨大なブランドの集積」として現れると書いたかもしれません。現代人はブランドを消費しているかもしれません。

まとめ

みなさんは、商品(の機能や効用)を買うのではなく、ブランドで商品を買おうとしたりしてませんか?
・スマートフォンではなく「iPhone」
・携帯音楽プレイヤーではなく「iPod」「ウォークマン」
などなど

こうした、モノをブランド名で消費することが最終的にブランディングのゴールになるのではないでしょうか?
次回は、ブランドの基礎知識をお伝えしていきます。

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