サブカルで学ぶ社会学⑨ 『輻輳説(相互作用説)』 ~『機動戦士ガンダムSEED』より、コーディネイターと遺伝子が成長に与える影響~

はじめに(注意書き)

はじめましての方ははじめまして。そうではない方はいつもお世話になっております、吹井賢です。

さて、『サブカルで学ぶ社会学』第九回です。
家族の大半が院卒であり(なんとマジ)、「自分は勉強ができたから戦地に行かずに済んだ」と語る祖父を持つ吹井賢(なんとこれもマジ)が、社会学やその周辺科学、つまり、政治学・哲学・精神医学・文化人類学・生理学・組織科学・比較社会学・発達科学・等々に出てくる概念を、サブカルチャーを絡めつつ、分かりやすいが論文で引用すると怒られる程度にはふわっとした感じに、解説していこう、という記事です。

最初にお断りをば。

※あくまでも娯楽として楽しんでください。
※興味を持った概念については、この記事を読むだけではなく、信用に足る文献を読み、講義を受けることをお勧めします。
※そして僕に分かりやすく教えてください。

それでは始めます。


『21世紀のファーストガンダム』――その名も、『機動戦士ガンダムSEED』

皆さん!
『機動戦士ガンダムSEED』シリーズの最新作、待望の映画化(マジで何年待たせたんだよ)である『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されましたね!

とりあえず、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』オフィシャルサポーターソング/玉置成実『Reborn』Lyric Videoでも見ておきます?


実際の映画の評価については、まだ見てない方もいると思うので詳しくは伏せますが、
では、この『機動戦士ガンダムSEED』シリーズで革新的だった設定はなんでしょう?

そうですね(今や昔)!
遺伝子改良された人類・『コーディネイター』の存在です!

僕達のような普通の人類、『ナチュラル』と違い、生まれる前に疾病に強く、また、高い能力を発揮できるように遺伝子調整された人類、それが『コーディネイター』です。

『機動戦士ガンダムSEED』は2002年の作品ですが、一方、現実では1990年より、『ヒトゲノム計画』というプロジェクトが進行してきました。
これはヒトのゲノム(遺伝子情報)の全塩基配列を解析するというもので、2003年には、99.99%の正確さで分析が完了したと言われています。
また、遺伝子組み換え食品は、もうごく普通に市場に流通するようになりましたね。

そんな時代の流れの中で、「もし遺伝子改良された人類が生まれたら、どんな時代になるか?」というテーマを持って作られたSEEDは、先進的な作品だったと思います。

『デザイナーベビー』(※遺伝子操作を行われた人間のこと)は、SF分野では古典的なテーマなのですが、SEEDシリーズで一気に身近になった気がしますね。


遺伝子か、環境か ~成長に関する三つの仮説~

さて、実際に生物の遺伝子をどうこうできるようになったのはここ数十年のことですが、「人間の能力は生まれ持った資質(遺伝子)で決まるのか? それとも、教育のような環境で決まるのか?」という問題は、発達科学や保育学の分野では、古くから議論されてきました。

当然この項目はあるだろうと手元の『社会学小辞典』を捲ってみたところ、なんと載ってなかったので、今回もインターネットからの引用になります。

ざっくり纏めるとこんな感じです。

①ゲゼルによる『成熟優位説』
②ワトソンによる『学習説』
③シュテルンによる『輻輳説』

『介護ラボ』より、「【成長・発達に関する3つの説】ゲゼル、ワトソン、シュテルン、ジェンセン…について」
https://kanalog-kaigo.com/2021/05/26/vol-347/#st-toc-h-4

『成熟優位説』は、人間の発達には遺伝的要因で決まる、という学説です。
対し、『学習説』は、文字通り、人間の発達は学習により決定付けられる、という学説。
要するに、遺伝的要因が大きいか、環境的要因が大きいかの論争ですね。

じゃあ、実際のところはどうなの?と問われますと、詳しいことは分かりませんが、一応、僕が学んだ限りでは、『輻輳説』(「ふくそうせつ」と読みます)が主流になっているそうです。
「人間は生まれ持った資質と環境・学習のどちらもから影響を受け成長するよ」というものです。

……講義でこの話を聞いた時、「急に当たり前のこと言い出したな」と思ったのは内緒……。

『輻輳説』は、『相互作用説』の中の考え方の一つであり、『相互作用説』の中には『環境閾値説』とか色々あるのですが、この辺りはもう、ガチに保育や幼児教育をやる人じゃなければ覚える必要がないと思うので、割愛致します。


遺伝子は可能性でしかないと理解し、運命に支配されず、自分自身を生きる――「あなたが優しいのは、あなただから」

同じく、遺伝子を扱った作品で『メタルギアソリッド』シリーズがあります。
その初代には、「運命に縛られてはいけない。遺伝子に支配されてはいけない。重要なのはあなたが選ぶこと。そして、生きること」という名言があります。

確かに遺伝子や環境は、僕達の人生に大きな影響を及ぼします。
でも、大切なのは、僕達が僕達であること。
運命に支配されずに生きること。

そう、できることならば、愛する誰かと。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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