[短編小説] 千畝川のおせんさん
あれは、随分昔、私が少年の頃の事です。
郷里の村に千畝川と呼ばれる小川が流れておりました。とても涼やかで澄んだ水がさらさらと淀みなく流れ、何だかとてもやさしい印象を受ける川でした。
私はその千畝川沿いに歩くのが、なぜかとても好きだったのです。幼い頃はそれほど長くは歩けませんでしたが、長じるにつれて次第に沢山歩けるようになってきましたので、川を遡るように上流へ上流へと歩いたものです。上流に行けば何があるのか、この川はどこから湧いているのか、興味が尽きませんでした。
その