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住宅営業にFPを勧める理由〜建築相談の実例〜④

今回紹介する実例は、相続での取得や購入を検討している土地が、いわゆる「再建築不可」であった場合に少しでも参考になればと思い、実際のやり取りも交えながら書いていきます。

少し前の話しではあるが、、
依頼主は60代女性、お一人で住まわれるために土地を購入し注文住宅を建築する予定だったが、とある問題を抱えてしまったため「売却の相談」を受けました。
建築コンサル契約という受け方でお手伝いをさせていただいたケースです。

あれっ、売却相談では?と思われますよね。
結論は、無事に注文住宅を建築できました♪

〜背景・相談内容〜
⚫︎不動産仲介会社から「再建築不可」の土地を現金で購入
⚫︎一人で住む予定、仕事スペースを作りたい
⚫︎車を持たないため、交通アクセス及び仕事上のことを考えて立地を優先
⚫︎不動産仲介会社の担当者から、土地を購入する際に建築のことも相談に乗るからと言われていたが、土地引渡し後から具体的な提案をしてくれなくなった
⚫︎知人に相談したら「騙されたのでは?」と。早々に不動産仲介会社の担当者へ話したところ「売却するなら手伝います」と言われ不信感が募り、どうしてよいか分からなくなった

さて、ここまで読んでいただいた方は、不動産仲介会社担当者の対応に、腹が立ってしまうのではないでしょうか。
私も正直言って、そこそこ名の知れた不動産仲介会社だったので、当初は違う理由のトラブルでもあったのではないかと疑ってしまったくらいです。

この実例は解決済みなので、どのような流れで解決していったのかまとめてみたいと思う。

〜物件状況〜
⚫︎現況更地
⚫︎測量も土地売り出し前に完了
→境界は問題なく確認できる
⚫︎間口約1.8m、敷地延長の土地
⚫︎隣地等の越境物などは無い
⚫︎通路に接した隣地は、敷地にもゆとりのあるお宅で奥まった土地特有の暗いイメージは無い

土地の奥側に面したところは畑で開放感があり、ロケーションも良い。しかも相場より割安。初見の感想としては、建築が問題ないと言われたら購入したくなってしまうのも分かる気がしました。

〜依頼主の意向・共有事項〜
⚫︎まずは、ご本人の意向を再確認。
当初は売却相談でしたが、建築が出来ることに可能性があるなら進めたいのか、または嫌な思いをされてきたことは充分伝わってきたので、多少損してでも手放したい気持ちなのか
(心理的な部分)

⚫︎回答→可能性があるならお任せしたい
ここで、仮説を立て懸念点や注意点を説明する
・間口約1.8mではあるが、幸いにして隣地敷地に余裕がある。そのため「通路使用承諾書」等を持って、2mに達するまでの敷地を確保する必要性について
→こちら側が頭を下げる立場であることから、今後の近所付き合いの大切さを共有

・私自身、注文住宅の営業もしていたことで、「再建築不可の土地の取り扱い」を幾度か経験している事を伝えた。その上で、依頼主の想像以上に時間や労力を要することを説明し理解していただく
→関係各所での交渉ごと等を代理するため、委任状の必要性についても共有
※依頼主の職業が士業だったためか、署名押印が必要な書類関係などに対しては理解力もあり、とても助かった。

・希望の建築予算も厳しいのだが、それ以上に予定建築面積が小さいため、請け負ってもらえる建築会社は少ないだろうということ
→選択肢が狭まる可能性について共有
※建築面積が小さいと利益率が低く、請け負わないケースや割高な単価設定をされる事を想定

くどいように感じてしまう方もいるでしょう。しかし、今回のケースでは建築会社の懸念事項や隣地への説明・協力のお願い、行政とのやり取りなど、、、想定出来る範囲については先に説明・共有をし、意思疎通をしっかりした上でないと代理人として動けないのです。

〜段取り〜
・管轄の建築指導課へ行き、建築審査会(43条但書申請)のスケジュール確認及び現地の状況説明から条件等の確認作業

・予想していた通り、隣地の敷地の一部に対して、2mに達する部分の使用承諾書がいただけるのかがポイントとなる

・ここからが本番です。自身が隣地の立場ならどう判断されますか?
「結論」
無事に必要な承諾書をいただける事になった。

連絡先も分からずでしたから、何度も訪問をしやっとの思いで隣地所有者とお会いできた。
しかし、高齢の女性お一人住まいで当然ながら警戒心もあり、難しい話しはわからない…と。
この状態で、承諾書に署名・押印をお願いするのは難しい。

そこで、お母様とは事情説明とお願い程度に終わらせて、県外に住む息子さんと連絡を取ってもらい私から電話で説明することで、直接お会いすることになった。

息子さんからは、、
隣地が更地のままだと防犯上母が心配であることと、私が自宅訪問のたびに名刺や手紙を入れていたので、何かの営業かと思い気にしていたようです。
直接お会いし、事情をしっかりと説明することで納得していただけた。それからは、息子さんが窓口になっていただけたので、順調に進んでいくことに^_^

注)各自治体によって条件や判断が分かれるので、管轄の自治体に相談してみてください。
建築物に対しての制限や仕様なども併せて確認しておくと良いでしょう。


〜まとめ〜
協力してくれる建築会社も見つかり、設計の段階でもコミュニケーションがよく取れたので、無事に建築が出来ました♪

今回のケースは、不動産仲介会社の悪いところが出ましたね。知識・経験のなさ、利益優先、説得・押し切り営業スタイルといったところでしょうか。
依頼主からは、担当者が良い人に見えたと言われ重要事項説明書にも問題なく、説明&記載もしていますよねーといった姿勢から、漫画・ドラマ「正直不動産」を思い出してしまった、、

高齢社会において、説明・交渉ごとをする相手も高齢者が増えていくことでしょう。
若い世代と違って、情報も少なく安易に人を信用してしまいがちです。

高齢者を狙った犯罪も後をたたない。
今回の依頼主も警戒心から、最初は甥っ子が同席されていました。

利益を優先するばかり主導権を握ろうではなく、早い段階でご子息や親族を交えることを提案したり、慎重に話しを進めていくことも大事なことでしょう。

話しは逸れますが「再建築不可」に関しては、宅建よりもFPの方が深掘りされていたような印象が強いのは気のせいでしょうか、、

引き続き、住宅業界の現場視点で書いていきたいと思います♪

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